KAC2023手直し版
第8話 本屋
郊外の古い商店街。
すでにシャッター街となっていて、商店街には昔のような賑わいなどない。
そこに潰れた本屋がある。店の入口には店主が当時書いたであろう張り紙がしてあり、ここはもう十五年も前に潰れていたようだ。
そして夜中。
その店内に男が二人。
「おい、本当にここにあんのかよ?」
「ええ、私が刑務所で一緒だったアドノンがそう言ってましたから」
「本当か? こんな潰れた本屋にイタリアのマフィアの隠し財産ってよお」
「信じられないなら私一人で探しますから、クロダさんは帰っていただいてかまいせんよ」
「まあそう言うなよ、俺だって金は欲しいさ。だけどこの中から探すってこりゃどうしたらいいんだ? そのアバなんとかってやつはなんて言ってたんだ?」
「アドノンが言うにはこの中にあるはずのない本が一冊置いてあると」
「なんだあ? あるはずのない本? なんだそりゃ?!」
「私にもわかりませんよ。とりあえず片っ端から開いてみるしかないんじゃないですかね?」
「まあそうなるよなあ」
二人はつぶれた本屋に並べられた本を片っ端から開いていったがあるはずのない本などわかるはずもなく、時間だけが過ぎていく。
「おい、アカギ。こりゃあないぞ」
「ここまで探してないってどういう事なんでしょうねえ」
「ガセネタ掴まされたんだよ、お前」
「アドノンは絶対に嘘なんか言いません」
「なんでそんな事が分かるんだよ、ただ刑務所で一緒だっただけだろ?」
「あ! そうか、わかりました」
「なんだ? わかったの?」
「あるはずのない本って言うことは、クロダさん。ここにあってはいけない本って事じゃないですか?」
「お、うん、で? そりゃあどういう本なんだよ!」
「この本屋、確か十五年前に潰れたって書いてありましたよね? なのにあれ、あそこにある本、今週発売の週刊誌ですよ」
「って事はあれか!」
「おそらく先に来た彼が」
「持って行ったのかよ!」
(完)
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