第26話願いが叶う入浴剤
「この入浴剤を入れると、叶えたい夢が現実になるのだ」
そう言って自信満々に手渡されたのは、二種類の入浴剤だった。
そもそも入浴剤自体見たことがない
ましてや興味すら持てないのが、今の正直な感想である。
そんな不安な気持ちを胸に秘めながら、改めて入浴剤のパッケージへと瞳を向ける
スーッと瞳を細め、不思議そうに銀色の袋を眺め続けて数十秒。
目に映った文字を、今まで習った記憶を頼りに読んでみた
その袋には、“桃の香り”と“ライムの香り”という文字が並んでいる。
それを見た瞬間、
「願いが直ぐに現実になるかは別問題として」
そう呟いた
「大切に使わせてもらうよ」
と、満面の笑みを浮かべて、お礼を言う。
しかし、何故かその笑顔に“何かある”と睨んだ
彼はじっと
「……
と、釘を刺す。
「な、何で分かったの?」
「おぬしの考えることなど、ちょっと頭を捻れば直ぐに分かる」
胸を張り、また得意気な表情を見せる
まるで、心を掴まれているかのようなこの出来事に、一瞬警戒した
「
「……その者の願いとは何だ?」
「僕達が生きる世界から、戦が無くなることだよ!」
“
いや、そうではなく……
“
「それは、わしがおぬしの為に医学に精通しておる神農様に頼んで、特別に調合してもらった入浴剤故、風露には効かぬ」
と、何処か申し訳ない口調で説明する。
その説明を聞いた
「そうだったんだ」
と、感心した声をあげた。
しかし、内心ではとても複雑な思いを
神農は成長を止める薬を調合し、
そんな
(そうしたら、逆に僕は
沸々と沸き上がる不満を、別の視点から考え直したことで、何とか抑えられた
その傍らで様子を伺っていた
「どうした、具合でも悪くなったか?」
と、思わず心配して話しかける。
“大丈夫”と答えた
「だから、次の封神の義の会議の時に神農様に頼み、彼女専用の入浴剤を調合してもらうとしよう」
と、まるで自分自身に言い聞かせるかのように、
「有難う!」
しかし、彼の姿が何処となく悲しさ・寂しさが
申し訳なく思った
やがて、目当てのものを見つけたことにホッとした表情を見せる
少年を思わせる、優しく小さな手が掴んでいたのは、
彼はその小袋を不思議そうに見ている
「それまで、この入浴剤を使うといい」
と、照れた
「それを溶かした風呂に入ると、直ぐに疲れがとれるだけでなく、1週間は疲れ知らずになる効果も期待できるという優れものだ」
「へぇ……
「うむ、それにあやつにはこちらの香りが似合っていると思うぞ?」
「香り?」
聞き返し、
そこには“桜の香り”と書いてあった。
お仕舞い。
令和4(2022)年10月10日12:55~17:39作成
令和5(2023)年1月15日~1月21日改稿
Mのお題
令和4(2022)年10月10日
「わくわく入浴剤」
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