第21話冷たい雨
「やっと、消えた……」
焼け野原と化した決戦の地ー牧野を見渡し、深く溜め息を吐いた、年の頃10代後半の青年が、立ち尽くしたまま誰に言うとなく、思いの丈を呟く。
前々から計画をされていたのに、いざ兵士の経験すらもない自分が、“革命”とも言えるの最前線を任され、こうして指揮を執ったという
未だに信じられずにいた。
しかし、時が経つにつれ、敵の兵士達を仲間と共に打ち砕いた実感が、そして辺りを朦々と包んでいた、猛烈な炎を消し止めたという安堵感が、優しく彼の心を包みこんで……
「この僕にも、ここまで頑張れる力があるんだ……」
青年は、生まれて初めて大役を務めたことに対し、ようやく誇りを持てるようになった。
彼の名は
言わずと知れた“
何故なら、彼は
人間にはない力を持つ
その為、ことあるごとに桃源郷に呼び出される事もしばしばだ。
これでは埒が明かないと、彼自ら町へ出向き、姿も考え方もそっくりな
その
「お見事でございます、
人間とはいえ、よく雨雲を呼び操って大火を消されましたな」
“もう体力も残っていないのでは?”と、少々嫌味を効かせて労う
その言葉を合図に安心したのか、
“大丈夫ですか?”と
「この先にには
気付いたら、雨雲を呼んでいたみたいで」
地面に両手を付き、肩で息をしながら答える呂尚の姿を見て、
「雨までは降らせなかったよ」
という、残念がる言葉を耳にして、思わず口を噤んだ。
いや、そうではない。
彼は
「
「?」
“何?”と瞳で訴える彼に
「雨を降らせたのは、
天が冷たい雨により、大火を消すと同時に、人々が恐怖に満ちるよりも早く、安らぎで包み守ろうと降らせてくれたのでしょう」
と、真実を伝える。
「まさか……僕にそんな力は」
「
あの光景はまさしく
「……そうなんだ」
「ええ、ですから
“きっと大喜びしますよ”と、褒め讃える
「ハハッ、やめておくよ」
「そうですか……」
“何だ、つまらない”と言いたそうな彼に、
やがて、
「さて、周城に帰ったら次の準備をしないと」
と、ポツリ呟いた。
「次の準備……はて?」
「いや、こっちの話」
考え込む
令和3(2023)年3月28日作成
Mのお題
令和3(2021)年3月28日
「連作短編-雨」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます