第20話このボタンは?

 ここは西岐サイキ城内にある、呂望リョボウ呂尚ロショウの部屋。


 今日の呂望リョボウは桃源郷で行われている会議で不在だった。


 机の上に何やら見たことがない物が無造作においてある。


 呂尚ロショウは、不思議そうに持ち上げ、好奇心に任せてあちこち出っ張っている箇所―ボタンを押していった。


 そして最後のボタンを押すと、納得したのかそのまま机に戻す。


 否、どうやらこの遊びに飽きてしまったようだ。


 それから数時間後、呂望リョボウが血相を変えて部屋に入って来るなり、あの時触れていた謎の機械を何の躊躇いもなく持ち上げ、じっくりと眺め始める。


 数分後

「誰だ、非通知ボタンを押したのは!」

と、困惑した口調で文句をぶつけた。


「非通知ボタンって何?」


 呂尚ロショウは今まで聞いたこともないそのボタンの名前を、眉をひそめながら直す呂望リョボウに何気なく訊ねる。


「このボタンを押しておくと、自身にとって出たくない相手だと分かり、尚且つ勝手に拒否出来るという、画期的なボタンだ」


「そうなんだ……」


“誰が押したんだろうね?”と、うまく誤魔化す呂尚ロショウ


「その犯人を知りたいところだが、今となっては分からないであろう……」


“置きっ放しにしたわしも悪い”と、半ば反省している呂望リョボウの姿を少々可哀想に思った呂尚ロショウ

「なら、誰かが押そうとしてたら、僕がそのように説明して注意を促してあげるね」

と、優しく声をかけて慰めた。


「うむ、宜しく頼む」


 呂望リョボウは深い溜め息を吐いてそう言い残し、悩んだまま再び部屋から姿を消す。


“もう戻って来ないな”


 数分後、そう確信した呂尚ロショウは机に近づき、例の機械を手に取ってにんまりと笑った。


 そして、真面真面と見つめながら

「万が一僕にこれを持たせようものなら、呂望リョボウさんのだけ非通知にしてやる!」

と、決意新たに宣言する。


「大好きな畑仕事の邪魔をさせない為にも」


呂尚ロショウそう呟き、固く誓うのだった。


令和4(2022)年2月10日12:15~15:21作成


Mのお題

令和4(2022)年2月10日

「非通知ボタン」

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