第6話ある晴れた日の会議の午後
「うわぁぁぁぁぁぁ」
部屋には、双子と思わしき人物が2人いて、1人は土で出来た床の上に散らばる何やら見た事のない文字が沢山書かれている白い紙を睨んで立っていた。
もう1人は、同じように立ってはいたが、呆れた眼差しを床へと注いでいる。
「こ、こんな難しいこと、ちまちまやっていられるか!」
「……
興奮気味の呂望(リョボウ)に、冷静沈着な言葉をかける
これではどちらが年上なのか悩むところであるが、実際は言わずもがなである。
何故、彼等がここにいるのか。
それは、如何にして
集まった人達は、土を平らにして作った床に円を描くかのように腰を下ろし、太陽が天高く昇るまで、話し合いを重ね続けた。
その結果、
では、どうすればいいのかと考えた挙げ句、
話し合いはここで一旦終わりを迎え、それぞれの持ち場へ戻ってから数分後、
“ああ、もう……”と、呆れた眼差しを散らばった紙に向けた
「当たりたい気持ちは分かる。
でも、紙に当たっちゃいけないと思うんだ」
と、口を一文字に結んでいる
「何だ、
今日はやけに落ち着いていておるではないか?」
「そんなことないよ」
「会議中、珍しく発言しておった故、軍師代理の自覚が出てきたのかと思っておったのだが?」
「たまたま……
たまたま、良い案が浮かんだから、思い切って発言してみたまでだよ」
謙遜しながらも、
そんな彼の態度に、
“ふぅ”と、溜め息を吐き
「叫んで悪かった」
と、珍しく頭を下げて詫びる
「訊きたくないけど、何があったの?」
と、取り敢えず―面倒臭いと思いながら―訝し気に訊ねた。
「実は、仙人界で行う“封神の儀”の本番が、あと5年を待たずして始まってしまうのだ」
「それは、大変だね……」
決して“君がさぼっていたから”なんて言わないところが、
“封神の儀”というのは、仙人界で行われる1500年に1度の壮大なイベントで、下界で言うなら大手企業の入社式といったところだ。
そこから道士―仙人の卵―達が各仙人の
その祭りの総指揮の担うのが、他ならぬ
そして、
“それは僕にはできないなぁ”と、彼に瞳で訴えても気付かないことぐらい知っていた
「何とかならないもんかな?」
と、一緒に考えるふりをした。
そこには“きっと何かとんでもない提案してくるに違いない”という、警戒も入っている。
「そこでだ、
(きた!)
「おぬしがわしの代わりに北へ向かってもらいたい」
「嫌だよ、そんなの!」
速攻で断る
“何故?”と瞳で訴える彼に怯むものの
「僕、軍師の仕事なんてやったことない!」
と、取り敢えず無駄な抵抗をしてみる。
だが、
「良いではないか!
いい経験になるし、分からなければ喋らなければいいのだ」
「それじゃあ、仕事にならないよね?」
その時である。
「太公望殿」
「如何なされましたか!?」
という、切羽詰まった聞きなれない声が、薄暗い廊下の奥の方から聞こえてきた。
その声を聞いた
戸口で覗いて身を固くした兵士達を見た彼は、“これは使える!”と、咄嗟に判断したのだろう。
「わしの目の前にいるこの者は、曲者である!」
と、大声で叫んだ。
「
“な、何を申しておる?”と、当然事態を把握出来ない
が、しかしそこは彼の隣りで一緒に仕事をしている
喋ろうとする
「この者はわしに化けて、
よって、今すぐ独房に閉じ込めるがよい!」
と、声を高らかにあげて命令した。
“独房に閉じ込めておけば、暫くは趣味である畑に精を出せる"
そう考えた
だが、兵士達には同じような顔つきが2つあること自体、不思議でならず……
彼等の思考は“どちらが本物なのか?”を暴く方へと、駒を進めようとしていた。
「何をやっておる、早く連れて行かぬか!」
「お、おぬしがわしの真似をしても、そんな猿芝居では誰も言うことなど聞かぬわ!!」
“突然何を言い出すのかと思いきや”と、不貞腐れて呟く
「それはどうでしょう、偽太公望殿?」
いつの間に戸口に立っていたのであろう。
20代前半の男性が自信満々にそういい放つ。
「
「
その人物は、
彼こそ、後に武王の息子である
「太公望殿、その者が常日頃から付き纏っているという輩ですか?」
「えーっと、はい!」
「お、おぬし、今なんと」
「それでは、身に危険が生じる前に捕らえましょう!」
「これ、
偽者は目の前にいる
うわぁぁぁぁ、な、何をする?」
“離せ、離すのだ!!”と、最後まで抵抗するも、兵士達にがっちりと両腕を掴まれ、無理矢理独房へと連行されてしまう
叫び声をあげて連れていかれる彼の姿に心を痛め、“
その声もやがて暗い廊下に吸い込まれるように掻き消え、いつもの静寂が戻ってきた頃。
「姫旦様、助かりました」
「いいえ、私も彼には少し反省してもらわないとと思っておりましたので」
「反省?」
“反省って、他にやっていたのかな?”と思いながら、目を丸くして聞き返す
「
と、真面目な
「暫く独房に入って、頭を冷やしてもらおうと考えた次第です」
と、にっこり笑って言葉を付け足す。
その笑顔がいつになく怖かったようで、側で理由を聞いていた
「さて、時間も空きましたし。
“最近あまり外には出ていらっしゃらないでしょう?”と、気を遣ってくれる
その嬉しさに喜んだ
「はい!」
と、返事をする。
しかし、
令和3(2021)年5月26日~6月13日18:28作成
Mのお題
令和3(2021)年5月26日
「"うわぁぁぁぁぁ"から始まる物語」
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