第4話浅葱色の空の下で
「な、何だ……この空は?」
周城の一室にある、簡素な作りの寝床で仮眠をとっていた
ゆっくりと体を起こし、何気なく空へと瞳を移して数十秒固まった彼は、開口一番に驚きの声を上げた。
砂鉄色の瞳を更に大きく見開き、窓の先にある空に釘付けになった
彼が驚きを隠せないその空の色は、浅葱色の中に薄らと虹が架かっている空だ。
一瞬、その色は気味が悪くなるが、しかしこの空は師匠に言わせると、吉兆雲だという。
何でもこの空の上で、仏界のトップともいうべき釈迦如来が、気晴らしに散歩をしている時に現れる雲だそうだ。
滅多に見ることが出来ない雲故、目撃した者には良い事が必ず1つ起こるとされている。
「いやぁ、昼寝から目が覚めたと思ったら、とんでもない
“わしは運が良いのう”と、嬉しそうに呟いた
しかし、その雲の色が段々と薄くなるにつれて、楽しかったという感情も薄れてきたことに気付いた
そう、1500年に1度行われる祭りの事であった。
この祭りは、神様・仙人達が1人ないし2人の弟子をとる為に開かれる催しで、“神に封じる”ところから、いつしか“封神の義”と呼ばれるようになる。
これが後の物語“封神演義”の名の由来になるとは、この時の彼には分かっていなかった。
さて、布団から這い出た
目の前に広げられている紙―この紙は仙界で作られたもので、祭りの会議の度に貰ってくるのだ―には、“第○回、封神の義”と書かれており、その下には祭りの進行などが細かく記されていた。
(これを覚えなくてはならぬのか……)
この仕事は、師匠である雲水真人から受け継いだもので、開催された
しかし、寿命が無いに等しい
彼はそう考えて、雲水真人から簡単ではあるが手解きを受け、祭りが成功するようにする為に、日夜勉強に励んでいるのだった。
「そう言えば……」
その話を持ってきた人物は、釈迦如来の脇侍に内定されていた、文殊菩薩であった。
「彼程の人物に相応しい弟子はいるのだろうか?」
「いた!
あやつなら、きっとどんな修業でも熟してくれようぞ!!」
彼が言った“あやつ”とは、牧野の戦いで自分を守るために、自らの命を投げ出した青年のことである。
彼が目の前で倒れた
その刹那、青年は行かせまいとして、意識が遠ざかる中で、左足を咄嗟に掴んだのである。
bそこでようやく自分が怒りで冷静さを失っていることに気付かされ、結果的に大勢の人々が死なずに済んだ。
この功績を讃え、
そして、もう1つの目論見……
それは、今度はこの青年と心ゆくまで話がしたいという感情を満たす為に。
(公私混同だな)
自分の考えに小さく笑った
「いつもの夕方の空だな」
彼はこれから夜へと変わる空に感慨深く呟くと同時に、もう1つ大切な事を思い出す。
昼寝を敢行するにあたり、
その時間から算出すると、かれこれ4時間は経っていた。
その時間までよく寝ていたと感心するところだが、今は帰ってくる気配がない
しかし、だからといって誰かに捜索を頼むわけにも行かず……
「帰ってきたら、訊いてみるか」
「ただいま」
“
「おぬし、何処をほっつき歩いておった?
あまりにも遅くて、捜索隊でも出そうかと考えておったのだぞ?」
※このお話は「彼に吐いた本音と嘘」のひとつ手前になります。
いつか本編に入れたいと考えています。
令和3(2021)年3月31日22:50~4月7日23:57作成
Mのお題
令和3(2021)年3月31日
「朝起きたら空が見たことない色だった」
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