第2話 謎は解かなきゃ

‐2‐


 一週間もして、いよいよ本格的に彼が行方不明ってわかって、私は慌てた。

 だって、年越が一緒にできないじゃん! 一緒に初詣にも行けない。イベントがひとつ減るっ!

 つきあうことになったのは、昨年のクリスマス。ゼミの飲み会で、私の誕生日がイブだって言ったら、来年は一緒に祝わせてくれって彼、言ったの。うれしかったのに……。

 基本一人でゲームするのが好きな彼だったから、私は私で自分の時間を楽しんだ。でもそれは、彼がそこに存在してたから。影も見えないと、そんな余裕も出ないわけ! イブのドタキャンを責めることも、問いただすこともできずに師走も暮れになっちゃった。

 これ、ふつーに通報案件じゃ?

 彼の部屋のものは動かしてない。なにかの方法で私に何か知らせないといけなかったなら、そこに秘密があるはずだった。

 由美に連絡したのは、大学のゼミでは彼との仲はクローズドだったから。相談できる人がいなかったんだ。

 由美は、優等生も通り越したくそ真面目な変人だけど、まがりなりにも親友で、困ったときはめちゃくちゃ頑張って助けてくれる、優しい奴だった。

 だけど、久しぶりに顔を合わせて、私、思っちゃった。

『また変な方向に振り切っちゃってる』って。

 だって、由美、駅からガスマスクかぶって、ラベンダー色のニトリル手袋をして現れたんだもの。

 その姿でぴょこぴょこはねながら手を振ってくるから、嘘でしょって。なあにその格好は! って一瞬脳内がフリーズして。

 気がついたときはそのまま彼の部屋に引きずってきていた。恥ずかしいとか、怖いとか言ってらんない。何も考えられなかった。そんな私の姿もよっぽどっていうか、異常事態だったけれどね。

 で、探索は始まったの。

 お家賃を溜めて出ていったわけではないのは、大家さんにたしかめた。

 で、変なところがないか見ていった。

 あったのよ……西側の壁に、目? の形をしたお札みたいなのが貼ってある。エジプトのウジャトの護符だ。その正面の机の上に丸い鏡が下げられていた。

 彼の趣味にしてはへん。だいたい、彼は、オカルトは信じない派で、喧嘩になりかけたことあったもん。

 でも、由美はまっすぐCDラックを示した。

「これは妙だわ」

 え? って思った。確かに三段あるカラーボックスの上二段には、上からアニメ、映画のサントラ類。下にはクラッシック、ポップスなどが分かれておいてあった。一番下は薬箱が入っていた。正露丸とか、トローチとかが入ってる。

 だけどそれが何?

「大学生だもん。音楽なんて、なんだって聴くでしょ」

「問題はそこじゃあないわ」

「じゃ、なに?」

「ポップスがアニメのサントラの中に混じってる。ここの一角だけ怪しい」

 言われてみればそうだった。

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