ハッピーエンドはクライマックスの後に
れなれな(水木レナ)
第1話 彼氏、失踪事件
‐1‐
由美と、私がコンビを組むようになったのは、いつ頃だったっけか?
あれは私が大学時代……いや、出逢いはもっと前からあった。
この問いかけに対する答えが、私にとってはつい最近のことのように思える。トラブルにあったなんてことは、いまとなってはもう、大したことではない。
由美は一見、真面目がとりえな優等生だった。孤立しているわけではないけれど、どこか寂し気な感じのする娘で、会話力もそこそこで、コイバナもしない。それがなぜ、私の人生に深く関わってきたか。
今回は、その話の一端に触れようと思う。
大学二年の時のことだ。
私は恋愛で悩んでいた。彼氏とうまくいってなかったのだ。
彼は身だしなみも髪型もきちんとしたハンサムで、そのくせ女慣れしてない、そこが良かった。彼は一歳年下で、私と同期だ。
無理やり連れて行った占いの館で、相性が30%の「見込みなし!」と出たので喧嘩になった。
結構、どうでもいいことだったと思う。
だけど、初めてつき合った彼氏との間が、ギスギスした嫌なものに変わっていくのは、それもこれも相性30%のせいだと思って、私はすっごく不満だった。
誕生日のクリスマスイブに、彼は待ち合わせのカフェに現れなかった。それだけじゃない、その前日には普通に電話で話したのに、彼は謎の言葉を残して行方不明になってしまった。
その謎の言葉とは……「もし来たかったら、オレの部屋の合鍵を使っていいよ」という、なんとも直截なお誘いで。実際に彼の家に行ってみたら、彼はそこにはいなくて、なんの変哲もない茶封筒の中に鍵がひとつ。窓枠になんでもないように挟まっていたんだ。
今思えば、それは……テリトリーに厳しいオスの本能が、私を聖域に受け入れてくれたという証拠だった。
だけど私は。ああ、耳年増ってこわい。
クリスマスイブに、彼女に合鍵を渡すっていうのは、手っ取り早くそういう関係になりたいんだって、そう思っちゃった。お部屋デートでいい感じになっちゃえって、そういう気持ちなんだって想像してたの。
安易な方法をとる人なんだって。
ふたりの関係は、ほとんどが、私の努力によって成り立っていたと思う。
始終むっつりとした彼に、カウンセラーやキャバ嬢なみの会話力を発揮して(実際そういう本を多読した。おかげで鍛えられたわ。ふっ)コミュニケーションをとろうとしたけれど、つき合う前は楽しく冗談を言ってくれた彼は、釣った魚に餌をやらない主義だったようで、いつもそっけなかった。
どういうこと? って最初は思った。
合鍵使えっていうのは部屋に来いっていうことだよね。
それが、どうして行方不明。
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ハッピーエンドはクライマックスの後に れなれな(水木レナ) @rena-rena
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