第6話 実力を発揮できずに苦悩する王子「呪いや陰謀を乗越え、大富豪になった俺は天才……ッ」
結論から言おう。
俺は実力を発揮できなかった。
〜ババ抜き〜
「上がったー!」
「わー、ウォルフにババが残ったー!」
「何故だッ!? 何故手元に魔女の絵が……ッ、これは魔女の呪いだッ」
「ウォルフ君、顔に出過ぎです。そんなに見つめてたら、誰もそのカードを引きませんよ」
〜7並べ〜
「わーい、抜けた!」
「ウォルフが一人残ったー!」
「ウォルフ君の負けー」
「何故だッ!? 何故みな、最後までハートの11と12を置かなかったのだ……ッ、これは陰謀だッ」
「ウォルフ君、ですから顔に出過ぎです」
〜人狼ゲーム〜
「司会やりまーすここはウォルフ君が村長のウォルフ村です!」
「何ッ、俺が村長だと!? うむうむ、見どころのある女子だ、褒めてつかわそう」
「ある日、ウォルフ君の可愛い奥さんが人狼に噛み殺されてしまいました」
「何ぃッ!? 絶対に許すな、全兵を持って奴らを殲滅しろ! 犠牲は厭わん!」
「ウォルフ君、ゲームが始まりません」
〜大富豪〜
「10回戦で、大富豪の回数が多い順に勝ちにしましょうか」
「ウォルフ君すごーい、大富豪だ!」
「私大貧民なんだぁ……ウォルフ君、いいカードが欲しいなぁ♡」
「ハッハッハ、女子供はなんでも俺を頼るといい!」
「ウォルフ君すごーい♡」
「頼りになるウォルフー、僕ここでカード切りたいから、強いカード出さないで欲しい〜」
「ハッハッハ、いいともいいともー!」
「……何故だッ!? 最初の一回以来、勝てない……ッ」
「ウォルフ君が調子に乗っていいカードをばら撒くからです」
こうして、今日限定でどうにも調子の悪かった俺は、全てのゲームで敗ぼ……ゲホゲホッ、勝利を収めることがなかったのだ。
「ウォルフ君よわーい」
「ウォルフ落ち込んでる〜」
「ウォルフ君、一回も勝ってなーい」
「一回もとはなんだ! 大富豪で勝利したぞ、俺は……ッ、大富豪に……ッ!」
「ウォルフ君、大富豪からすぐに大貧民になってたー!」
「ウォルフは没落貴族〜」
「グハッ!?」
俺は衝撃のあまり、孤児院の遊戯ルームで両手足をついてしまう。視界が歪み、なんだか床の模様がよく見えない。
「うっ……ふぐぅッ……」
「ウォルフ泣いてる〜!?」
「ウォルフ君元気! 元気を出すー!」
「わあー、お馬さんだー!」
子ども達は、床に手をついた俺を見ると、容赦なく俺の背中によじ登って遊び始め、俺は潰されてしまった。
「ウォルフ君」
ふと顔を上げると、すみれ色のクリクリの瞳が俺を見つめていた。視界が揺れていて、彼女がどんな表情をしているのか、いまいちよく見ることができない。
「そろそろ帰りましょうか」
そう言うと、彼女は子ども達に俺の背から退くよう指示して、帰り支度を始めた。
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第一王子は勝負に負けて純粋に悲しいようです。
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