私は、悲しい。其れでも私のお兄ちゃんか。

 私は、悲しい。其れでも私のお兄ちゃんか。


 ああ。何て酷い奴になって終ったのだろう。


 「御父さんと、御母さんと三人で仲良くしているといいさ。」


 僕は、ヤダ。


 あいつ等と、行動するのは厭だ。


 其れは、単純な嫌悪であった。


 明快な嫌悪。


 厭険悪である。こうした物が、私を酷く悩ませるのだ。


 寂しいかと聞かれて寂しいはずもない。


 全く寂しくもない。


 可愛い妹が、死んで終って寂しい。


 如何して、妹は死んで終ったのだろうか。


 私が、目を離している隙に、あの女は、確実に私を、殺そうとした。


 確実に、殺そうとしたのである。


 家に誰も居ないと聞いて確かに、あの男喜んでいた。そして死ねばいいのにと言った。


 怖い奴だ。


 世話になった母親に死ねと言えるその性格の悪さは何なんだ。


 あれは、悪魔のような子だ。


 悪魔だ。


 あれは悪魔、化け物。


 あのような、おかしい子だったのか。


 「そんな、きちんとした服を着てどうしたんだい。」


 「さあ。如何したんだろうねえ。」


 「僕も良く分からないよ。」


 一体何の用だったんだろう。不可解だ。


 あの、男が訳もなく、家族団欒に参加するなんて事はまずないのだから。


 「私は、彼女を怒らせて終了した。」


 「気分を害させて終了した。」


 あの、二人の女組は、遺体になり発見された。


 二人の女性の遺体。


 一人の男の遺体。 


 三人の家族の遺体だった。


 母、父、娘の遺体だった。三人仲良く死んでいた。交通事故だったと表向きはそう成っている。


 僕が殺してやったんだ。憎い、あの家族の連中を僕が殺してやったんだ。


 「悲嘆に暮れる、母の姿が目に浮かぶわ。おほほ。」


 と、娘の遺体は喋った。


 「あのクズの父親がようやく死んでくれたようだ。」


 と、殺人犯は言った。


 「ごめんな。僕は行かないよ。」


 「そう。行かないのね。」


 「ああ。行かないよ。」


 「理由は、行きたく無いからだ。」


 「そう。寂しくないの?。私が居なくなって。」


 「寂しいさ。」


 「見送りに来ては呉れないの???。」


 「いかないよ。彼奴もいるし、僕は彼奴と一緒に何処かにいく何て御免だね。」


 「三人で仲良く行って、還って来い。」


 「もう帰って来ないよ、私。」


 「ああ、そっか・・・。」


 「厭だなああああ。」


 「アレと、どっか行くの厭だなああああ。帰り路何て苦痛でしかないよ。」


 そうだ。帰り道は、あのクズと、母と還って来ないといけない。厭だ。如何してくれるのか、彼奴がどうしているのか。


 「そんなに嫌いなの?。」


 「嫌いだよ。殺してやりたいくらいさ。」


 「怖い事言わないでよ。」


 「其れくらいに無理なんだ、僕は彼奴が無理なんだ。」


 「厄介な性格ね。」


 「厄介なものさ。とても厄介だよ。全くにね。」


 此れも、僕の御金の無いのがいけないんだ。


 金があれば僕は、あんな奴の事知らないのに。金があれば、僕が、妹の事も、何だって、出来る限りの事はして、出来るのに。そう、買ってといったものを買って遣れるのに。


 僕が、こんなだからいけないんだ。


 「どうして、こういう事になるのか。」


 全く不可解だ。


 可笑しくて、変で仕様ない。


 僕は、何処へいったかって何一つしてやれないんだ。


 何も持ってないんだ。


 此れが、実情なんだ。


 御金の無い。力の無い人間の実情。餞に何か、贈る事は出来なかったものか。


 出来やしない。


 困窮してるんだ。


 僕は、困窮している。


 「今更、あの男のクズ性を、どうこう言っても始まらない。」


 あれは完全なるクズだ。


 実の父親だろうが、何で在ろうクズなんだ。


 「頭痛で死にそうだ。」


 「如何して、僕はこんな事をしているんだ。」


 金のある所に人は寄ってくる、此れだけは間違いがない。


 僕は産業廃棄物だ。其処に存在するだけで、物を消費し続ける。何かを摂取しないと居られない存在で、何かを奪わないと存在して居られない存在。つまり廃棄物を出し続ける悪の性質を持ったもの。


 其れが私だ。


 「僕の事を考えてくれている人が居るとすると其の人はきっと、悪い人だ。」


 僕自身が悪い極悪人なんだ、僕は善人の皮を被った、本当のクズが嫌いだ。其れが僕の父親だ。


 「僕には、あのクズの父親の血が流れている。」


 何度、この事を呪ったか分からない。違う父親だったらと願ったかわからない。僕は父親代わりに成ってくれる別の人間がいた。父親というか、世話を焼いてくれる叔父ちゃんの様な存在に僕はどれだけ救われたか分からない。


 ストレスで自傷行為が止まなかった時、家族何てクソの役にも立たなかった。彼奴らは、僕の事を全然わかっていない。分かってくれていない。恨み続けた。代わりに僕を、あやしてくれたのは、学校の教師だけだった。つらい時に励ましてくれたのは、学校の友人、教師。家族ではなかった。


 家族は、何も知らないのである。


 僕は、此の家族が嫌いだ。だから、こんなに恨んでいる。こんな事になった。


 ずっと縁を切りたいと考えていた位だ。


 お金が無いから、こうして、いるだけで、関係は、御金で繋がっているだけだ。


 こんな、家に生まれてくるんじゃなかった。


 間違って生れてきたんだ。此れも全部、あの男のせいだ。


 あの、クズが、碌でも無しのクズがいるからダメなんだ。


 あいつを、父親とは思っていない。駄目な人間。悪い見本、失敗例としか考えて居ない。


 いていないようなものだ。


 僕は、完全に無視をする。


 知らない。


 誰だかも知らない。


 忘れたい。


 あいつの事は、知らない。


 誰だか知らない。


 汚いおっさん。


 が、いる。


 知らないおっさんだ。


 一体誰なんだろう。


 気持ちが悪いな。不愉快だな。


 早く死ねばいいのに。このおっさん。


 おっさんの親が、おっさんを助けに来る。


 おっさんが、親に助けられている。おっさんが・・・。


 ダサい。かっこ悪い。


 厭なおっさんだ。


 見たくない。年上で、高々三十年やちょっと長く生きたかって、人間的にクズでゴミな人間なのだから、中学生も同然だ。悪い処をあら捜ししている訳ではない、真実を述べているだけだ。僕は至って真面目に、奴の悪性を、述べているのだ。


 酷い奴だというのだ。


 「あの人なりに頑張っとんや。」


 此れが、彼奴を甘やかす、母親のセリフで或る。この母親は甘すぎる。誰に対しても甘い事しか言えない、言わない人間だ。此奴も問題で或る。此奴の甘さがこの様なダメ男を創り出すのだ。


 何が、あの人なりだ。本とは、良くないと思っている癖に。


 そうだ。良くないのである。あれがいいはずが無い。金持ちでも無く。いい職に就いている訳でも無いのに、あんな奴がいいはずがない。


 世の中のサラリーマンなんて、そんなものだと言うかも知れない。


 だけれども、僕は、そうは思わない。


 屑のなかではましな方。こう思っているに違いない。ましではない。クズはクズである。あのひとはクズなんだ。僕は知っている。あの人がクズだという事を。あの人の母親も駄目だ。全くあの人のクズ性が分かっていないらしい。


 女受けのしそうな性格ではあるが、彼奴はクズだ。


 如何して、此の家の人間は、彼奴のクズさに気付かないのであろうか。


 あんなに、駄目な奴なのに。


 世の中の、様々な別の人間を比べてもクズで或る。


 人間性がクズなのだ。


 あいつよりはましと思っているのではないだろうか。この考え方は良くない。


 この考え方で、逃げようとする。向上心が無い。上を目指さない。現状維持のクズ野郎。死ねばいいのに。このクズ。


 「そりゃ。死ね思われて当然やわ。」


 と、その人間の、幼馴染はいった。


 「あんたって、そういう所があるよなああ。何というか、こういう時に来ないんだってなああ。」


 と、彼は言った。


 そうだ、あの男はこういう時に限って来るのだ。ちゃっかりと付いてくるのである。


 「厭な奴だ。」


 如何して、彼奴は、あんなに糞なのか???。


 「そうだ。彼奴はクズなんだ。」


 糞のサラリーマン何だ。


 サラリーマンが全員クズな訳ではないが、あの男はクズだ。


 「かっこ悪い父さんだなああ。」


 と言われていた。


 此れが、本音なのだろう。長い付き合いで、なかなか言えなかったが、本音は、此れだ。父さんはかっこ悪い。


 妹はいった。


 「そう思っているんだったら、本人に直接いってみればいいんじゃないの?。」


 といった。


 そういったのである。


 父さんの何処が嫌いなのか。其れは存在そのものである。あれが血の繋がった親で或る事がもう嫌なのだ。


 「言いたくもないんだ。口もききたくないんだ。虫唾が走る。」


 「そんなに、嫌いなの???。」


 「良く同じ家に住んでいられるわね。」


 「全くだ。」


 離婚でもしようかな。と母は言った。


 両親は、僕が進学して、間もなく離婚した。別居した。


 父親のせいなので或る。


 この人が、この様な野蛮な性格だからこうなるのだ。


 「大地震でも起こって、原発が爆発しないかなー。」


 と彼はいった。


 死ねばいいのに。こんな家の連中。


 この一家は滅びればいい。


 この家は、滅びればいい。


 祖父が死んで、祖母が死んで、父が死んで、母が死んで、子供たちが死んで・・・。


 そう、完全になくなればいい。

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