そう、波動で。
高校二年になると、選択科目のある、タイプのカリキュラムの高校だった、私の通っていた高校はそうだった。
僕は理系を選んだ、選択科目は化学と物理、日本史を選んだ。
高校化学の勉強で、モルや、アボガドロ定数、定比例の法則、質量保存の法則、濃度、希薄溶液、ルシャトリエの原理、熱化学、個体の結晶、分子間力、熱化学、化学平衡、電池、電気分解、気体、無機化学、有機化学、天然高分子化合物、合成高分子化合物。
その他諸々の専門用語を知ったが、果たしてこれ等の事が一体何の役に立つとでもいうのだろうか。
実験こそ化学の醍醐味だ。
理論は、必要ない。
理論は実験の中で確立されていくものだ。
ビーカーを実際に使った事があるか?。
重さを測った事があるか?。
化学反応式を実際に使って、測定値と比較した事はあるか?。
きっと、そんな人は居ないだろう。
いるはずは無いのである。
どうしてか。危険物だからだ。
危険なのだ。
それ以外になにがある???。
高校時代は、化学で点が取れなくて悩んだものだ。
原子論、分子論は果たして化学の範疇なのだろうか。
周期表が出来るのはどうしてなのか。
その結合の仕方でこうも多彩な原子が出来るのは如何してか、化合物が出来るのは如何してなのか。
其れを構造で、ミクロな世界で見ていく。膨大な情報を、ミクロに見ていく極小の世界で見ていく、其れが化学なのだ。
化学や物理を勉強するにあたって、僕は、科学に嵌った。
数学に嵌った。
難しい専門書を図書館でたくさん読んだ。
と言っても田舎の図書館だから、限度があって、この時都会に生まれたかったなあと初めて思った。
此れ迄田舎の不便さに気付く事も無かったが、こういった時、都会だったらと何度も思うようになった、電車は一時間に一回しか来ないし、バスも、余りない。スポーツジムや、そういった練習場も少ない、兎に角、何か不便なのだ。
車が運転出来ればなーと思った。その前に車を買う御金が要るのだが、そうも思った。
僕の名前は金色 式紙 金色財閥の遠い縁があるらしく、ひい、ひい、ひい御ばあちゃアが金色家の式神使いだったとかで、この田舎街の山奥の、払い箱神社に僕は住んでいる。
将来、神主になるつもりは無いが、この神社はどうなってしまうのだろうかと思った。
後継ぎがいないのだ。
僕が、大学は、生物学のある大学にいって、生物学者になるのだ。といった時から、父も祖父も、良くは思っていなかった。
神主になってほしいんだろうとおもう。
この神社は、何でも悪霊払い専門の神社らしく、ずっと先代の、金色 神輿 が、悪霊払いの屋城を立てて以来、三百年以上続いているという。
僕には、霊感がない。
金色家のものは強い霊感を持っていて、他人から、その心残りや、想いが、霊として見えると言うが、僕はそういった事が無かった。
僕の父の、金色 厳時は、実際に、この神社に、憑りつかれた人間が来た時その人間の職業や、経歴、飼っていた犬、死んだ御婆さんの存在を言い当てて、その人間が罪の意識に苛まれている事を言い当て、贖罪、詰まり其れを、このお払い箱神社で、告白させる事で、確か、人が助かるのを助けていた。
其れを見た時、確かに、霊感は或ると思った時だった。
そんな、ある高校最後の日。センター試験の前日、私は確かに霊感を得た。其れは、祖父が死ぬというのを、何処かから聞いたのだ。
其れは突然に、そう急に、そういった霊が僕に訴えかけてきたのだ。
零とは、心残り、伝えたいことが、何かしらの形を持って現れる現象だという。
虫の知らせのような現象だった。
僕は、死んだ祖父を見て、思った。
お祓いは、或るのだと、思った。
父はお祓いをしていた。確かに、その時、彼の霊が動いていた。
生前の、死ぬ直前の言葉を、呼び出していた、遺書の様に、その言葉は、生存者の心に響いた。
気味が悪かった。
奇妙な、感受性の高さが、こうして目に見えない人間の心を映すのである、其れは意図せず映るのだ。
此れが、霊。
人間の想いの作り出す、科学的な現象。
科学では未だ分からない奇妙な共感力。
孰れ、科学が其れを解き明かした時、この共感覚、思考の伝達は、波動で理論化されるだろう。
そう、波動で。
その後、彼は、医学部に入って、その研究を始めた。
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