第3話 電話報告
深夜の2時半だ。
もしこれが明日も仕事のある平日だったら無視して、翌朝に苦情の電話をしていた。
けど明日は休日。そして今、深夜アニメを見終わった頃だった。
『ごきげんよう。藤野さん』
「いくらなんでも夜分遅過ぎでは? 深夜の2時半ですよ」
『仕方ないじゃない。今し方、お仕事を終わらせたのだから。それに明日はお休みでしょ?』
お仕事上、相手の声音でどんな状況かつ状態かを分かるようになっている。
だから──、
「お食事が終わったのでしょう?」
電話越しに相手が小さく笑ったのが聞こえた。
『ごめんなさい。今日は力を使ったせいで、すぐにお食事もしないといけなかったの』
「……」
『本当よ。今回は以前より強力な神経ガスなんだから』
「神経ガスですか」
『ええ。サリンほどではないけど、遠隔で人間を神経ガスを撒き散らかすゾンビにさせるんだもん。怖いわね』
相手はおふざけで言っているが、それは重大なことだ。もし地下鉄でそんなことが起これば、かつてのサリン事件より恐ろしいことが起こる。
「まったく、どうしてそんなことに」
『そりゃあ、あなた達がゴミ箱を減らしたために作ったのでしょう?』
ここ最近、不審物の放棄を減らすためにゴミ箱を減らした。それが裏目に出たということか。
「日本は自爆テロが起きるような国ではないのだけど」
『自爆ではないでしょ? 本人は何も知らないのだろうし』
「それは子供に爆弾持たせるイカレ野郎にも言えますか?」
『私はそんな奴は無言で殺すわね』
あなたもでイカレ野郎でしたねという言葉は喉奥で止める。
彼女達は異形やイカレ野郎、化け物と呼ばれることを嫌う。
ここで機嫌を損ねたら面倒だ。
「雨宮沙織さんは役に立ってますか?」
『ええ。とっても美味しいわ』
味について聞いたわけではないのだが。
「上質な血を探すのには苦労しましたよ」
女性捜査員の中ではいなかった。それで警視庁の事務から会計の担当者の中で必死で探して見つけだしたのだ。
本当は月野原女学園に教職員か事務で彼女を潜入させようとしたが、童顔ということもあり生徒として潜入させた。
私個人は童顔とはいえ、キツいと考えたが月野鈴音が生徒役として強く望んだ。
『本人も私に吸血されて喜んでるわ』
「そうですか」
どうでもいい。
『今はイキ過ぎて気絶しちゃったわね』
「殺してませんよね?」
『大丈夫よ。殺したら2度と吸えなくなっちゃうじゃない』
「貴女を喜ばすためだけに彼女を送ったわけではありませんからね」
『分かってるわよ。彼女はちゃんと捜査してるわよ』
「それは雨宮さんからの報告で分かってますから」
『雑魚ゾンビについて身元調べといてね』
「言われなくても」
そして通話は切られた。
私は溜め息を吐いて、スマホをテーブルに置く。
目を閉じて事件について精査する。
ゾンビに吸血鬼。
「オカルトだわ」
お姉様はヴァンパイア 赤城ハル @akagi-haru
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます