358日目 日常の裏で戦う者達 色んな人達 後編

 くあ……。こんにちは、レンズマンです。

 昨日のイベント日記の続きです。


 あらすじ。Dx3rdダブルクロス即売会「UGN第758支部」にサークル参加するレンズマン。ところが、前日に焼肉を食べ過ぎたせいで朝からお腹が大変なことになってしまった。朝食を抜いたせいで体力0のレンズマンは逃げ出したい衝動をなんとか堪え、売り子のるーさんと共に始まりの時を迎えたのであった。


 わあっと人々が波のように押し寄せる。いつのまにそんなに並んでいたのか、彼らは目当ての場所へ、或いは目についたサークルのスペースへと駆け付けた。以前ゲームマーケットに参加した時は、弱小物書きサークルグルテンフリーの配置は奥の奥であったため、人がやってくるのはイベント開始から数分が経ってからでした。今回のスペースは入り口直ぐの場所だったので、この迫力に圧倒されました。うおおっ、凄い人来る! すごい量の人が……こっちを無視していく!? スタートダッシュでこっちに押し寄せる迫力と、遠くに流れていく人の波の虚しさを同時に味わえました。は? 泣いてないが?

 それでもこっちに来てくれる人もたくさんいました。声だけ聞き覚えのあるフォロワーが初めましてと挨拶してくれたのはなんだか変な気分です。おお、見覚えがないのに知っている。この口調と声、ちゃんと実在してたんだ……!! 差し入れなんかもたくさんもらってしまったので、当分は間食には困らないでしょう。人の善意を糧にデブは加速していく。明日痩せられないのが運命なら、今日心を決める。そっとしておいてくれ……。

 新規のお客様もたくさん見えました。SNSの告知を見て買いに来てくれたり、るーさんのお知り合いの方だったりと、このサークルに目を付けてくれた理由はいろいろです。キャンペーンシナリオ集「クロスレイド」は売上順調で、前回のゲームマーケットでの売れ残りが残り一冊になるまで売れてくれました。やったー! 小説本も増刷した半数くらいは売れてくれて、これも予想以上です。読んでくれるかなぁ。感想もらえるかな! ワクワクしてます。シナリオ本も勿論ですが、小説本が売れた時は思わずピースしたり親指立てたりしてしまいました。

 売り上げに関して多大な貢献をしてくれたのは売り子のるーさんです。サークル設営の際にその能力をいかんなく発揮してくれたるーさんは、人混みの中でもよく通る声でお客さんにシナリオのアピールポイントを紹介してくれました。実際にテストプレイに参加したことでその良さを自分で理解しているので、何も言わなくても勝手に紹介してくれます。というか、コミュ障を発揮してまごついているだけのレンズマンが多分一番要らない存在でした。いやしかし、このるーさんを遠方から引っ張ってきたレンズマン、これが人徳というものでしょうか。だとすれば、るーさんの貢献も僕の手柄なのでは? ……全然無いですね。すみません。とにかく、るーさんには一日中お世話になりっぱなしでした。この場を借りてお礼申し上げます。

 それにしてもいろんな人が居ました。最初から最後までサンプル本のページをぺらぺらとめくった挙句買わない人(別にマナー違反ではない)、恐らく買いものが終わったのにずっと会場内を歩いている人、初対面で話を聞いただけで小説本とシナリオ集を両方買うと即決する人。一度見て、他のサークルを回って、それでもうんうんと迷ってからまた買いに来てくれた方のことはとても印象に残っています。お金の使い方やイベントの楽しみ方にいろんなスタンスがあって、それを見ているのも楽しかったです。やっぱり人間のいる空間っていいですね。お金と体力の都合で休日はとにかく家で過ごしがちですが、イベントはやっぱり楽しいです。

 驚いたのは韓国からいらっしゃったお客さんでした。「韓国から来た」と自ら名乗った二人組の女性。「話すのはちょっとできるけど、読み書きの方ができます」とのこと。五話キャンペーンシナリオ集のクロスレイドを買ってくれました。い、いいのかな。韓国の方にこんなシナリオを売ってしまって。ちょっと変な部分があるけど伝わるだろうか。急に恥ずかしくなり、同時に肝が冷える思いもします。しかし、好きなもののために国境を越えてやってきたり、言語を学ぶなんてすさまじいエネルギーです。鞄についていた公式NPCきりたにさんのマスコットは恐らく自作でしょう。彼女たちの深い愛や努力に見合った楽しみが提供できたらいいなと思いました。

 また、なんと我々弱小物書きサークル以外にも小説を販売しているサークルがいました。お互い本を買い合ってエールを送り合います。こちらは一冊1500円、向こうは三冊で1000円。安!? ブックオフかと思った。なんでも、なかなか売れないのでこの値段に設定したそうです。厳しいんだよな、わかる。けれど、これからも書いてほしいな……。一人じゃないってわかると励みになるし……。絶対読んで感想を送ろうと、心に誓いました。

 イベントは大盛況で、その甲斐もあって品物が完売したサークルたちが想定よりも早い段階で撤収をはじめ、我々も少し早めに撤収準備を開始しました。ですが、ここにきて大人しくしていたお腹の動きが不穏に。るーさんにお金を見てもらいながらトイレに駆け込みました。……間に合った。スッキリして優雅に戻ってくると、既に会場の片付けが始まっていて、机を並べ直している部屋の真ん中に僕のスーツケースが置き去りにされていました。慌ててキャリーケースを端に寄せて、お邪魔を誤魔化すために急いで会場整理に参加します。皆さん会場片付けが手慣れていて、手際が素晴らしかったです。僕以外。

 楽しいイベントでした。惜しむらくは僕の体調が悪かったこと。イベント主催者様は相当苦労されたようで、それでも来年またやりたいと意気込んでいました。すごい。開催するならぜひ参加したいが、それならまた本を作らないといけないでしょう。何を書こうかな。いや、書けるのか? シナリオか、小説か。時間と労力を考えて取り組みたいです。

 イベントの後は遅めの昼食へ、名古屋コーチンを使用した親子丼を食べました。狙ったわけではありませんが、親子丼のたれや卵が絡んだご飯は雑炊に近い食感で、胃に優しい感じがしました。味も絶品で、とろとろの卵がめっちゃ美味しかったです。そこでるーさんと別れて帰宅。リビングのソファーで気絶するように昼寝をしていました。そりゃあ、あれだけはしゃげば疲れるよね。


 激動の一日を終えて、翌日の今。今日は何にもする気が起きません。帰省している妹に外出を誘われましたが、それも断りました。これはシスコンのレンズマンにはとても珍しいことです。

 さて、日記を書いてちょっと疲れたので横になります。来年、またみんな集まるのかな。楽しみが出来てしまったな……。

 では、今日はこの辺で。お疲れさまでした。

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