第7話
「どうして私が鬼だと思うの?」
「理由はいくつかある。常人では彼らのように体調を崩すレベルの多量の
「――――」
「確かに俺は刀を握っていたし、女の子二人を小脇に抱えてもいたから、最速で走れていたとはとても言えないんだけどさ、それもで坂上さんは脚が早すぎるんだよ。
走って呼吸が乱れて深く呼吸をすればするほど、
「……」
「じゃぁ、その漏れている霊力については陰陽師の修行をしている。と考えて修行を受けていれば、答えられるような質問をしても君はしらないという」
「それは……」
説明をしようとする彼女の言葉を遮って俺は推論を述べる……
「これらの事を総合すると、好意的に考えれば君は天然の能力者あるいは、陸上の都大会の上位選手になる訳だけど……最悪のケースを考えれば君は妖怪に
「嘘だろ?」
「何とか言ってよ!?」
「すずかっ!?」
「私たち友達でしょ?」
――――少年少女は口々に
「危ないから離れなさい!」
運転手さんが駆け寄ろうとする。少年少女の押しとどめる。
次の瞬間。少女の体は消えた。
刹那。
キーン。甲高い金属音が鳴り響き他の音はかき消され、刹那の時間無音がその場を支配する。
俺が抜き放った刀は、黒く変色した少女の細腕を防いでいる。
霊力を脚に流し、体重の乗った
「――――!!」
鬼と化している為か、額には大きな一対の四肢は黒く変色しており、
「姿を現したか鬼め!!」
「火行符よ。
少なくとも相手の鬼が如何なる気を纏っているともしれない状態で、
だが祐介はある確信を持って縛りを入れたのだ。
式神でタイミングを計っていたため、ワザと到着が遅れた星川が呪符を放つ。
「
地面が揺れ木の根のようなツタが出現すると、少女に憑いた鬼の手足を絡めとる。
「――――!?」
「いかなる鬼神・神霊かは存じませんが、木より火が生じる事は自然の摂理なれば御身と言えど、その定めに逆らう事叶わず。
絡みついたツタに引火し、火は炎へと昇華する。
火達磨になった少女に向けて、俺の指示通り次の術が放たれる。
「
火が付きかけたところで、地面から岩石でできた杭のような岩が飛び出して少女の行く手を阻む。
黒色に変化した頑強な拳で岩を破砕しているがある程度は効果があるようだ。だがすでに次の手は打たれている。
「
岩の杭は砕け中から、金属製の檻が出現するが鬼は一瞬で引き千切られる。
「
そう考えれば、水気に
俺は
そして俺は内心で呟く……だからあの鬼は土気か木気を帯びていたんだ。
『了解です……このまま
「
地面が割れ
鬼は藻掻くが、土石流に流され強制的にこの場から退かされる。
逃げるなら今しかない!
「運転手さん例のモノはありましたか?」
「ええ、社の中にあった。ご神体と思われる
煤け色の落ちた紫色の布に包まれていたのは、直径20㎝ほどの円形の鏡だった。裏側の中心部には
かく言う俺もホンモノを見たのは、両手の指で足りるほどしかない貴重品だ。
「ありがとうございます。これでなんとかなるかもしれません」
「私はどうすればよいでしょうか?」
「星川や学生達を連れて逃げてください」
運転手の男は唇を強く噛み締めるとこういった。
「……分かりました。ご武運を……」
「ああ、俺もタダで負ける積りはない!」
「それは頼もしいです。生きて帰って来たら一緒にメシに行きましょう! 元とは言え仁科様の方が階級が高いのですから奢ってくださいよ」
「分かった。三人で高いメシを食べに行こうか……」
内心で星川に謝罪の言葉を述べると、星川に撤退の命令を下す。
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TIPS
『相生』
順送りに相手を生み出して行く、陽の関係。
『相剋』
相手を打ち滅ぼして行く、陰の関係。
『比和』
同じ気が重なると、その気は盛んになる。その結果が良い場合にはますます良く、悪い場合にはますます悪くなる。
(瘴気が濃くなるのはこの現象が起きているから)
『相侮』
逆相剋。侮とは侮る、相剋の反対で、反剋する関係にある。
水気で火気を消せず逆に水が消される。
『相乗』
乗とは陵辱する、相剋が度を過ぎて過剰になったもの。
強すぎる『相剋』と考えると簡単。
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