第5話
「すいません……気が緩んでいました」
「俺はてっきり
「申し訳ありません」
「今回は気にするな……元とは言え俺はS級陰陽師だ。死なない限り学事が出来る。次に失敗しなければいさ……失敗の代償は最小でお前の命、最大で周りの命だ」
――――と死んだ父親の言葉を借用し、後輩を
弟子を持つとこう言うフォローや助言をしなくちゃいけないなんて実に面倒だ。だが、仁科の御技を教えを絶やす訳にはいかない。
「俺も昔はミスをしたものだ」
「仁科先輩がですか?」
「ああ、良く父に怒られた。今回の鬼は
「牛鬼なのに『
「牛鬼が、人を食い毒を吐く魔物とされている事はしっているな?」
「ええ、類似する
「基礎の知識はしっかりしているようだな。マラリアとは『悪い空気』を意味し本質的には、即ち我々の言う『瘴気』と同じモノを指している。
医聖大ヒポクラテス曰く『悪い空気や水土を摂取する事で病気に至る。こうして病気になった人間も瘴気を発し、周囲の人間を感染させる』と言う。
少しファンタジーが混ざっているが、当時としては先進的な考え方をしている。日本の江戸末期、蘭学として西洋医学が学ばれた時代になると、京都市
俺は咳払いをすると解説に戻る。
「牛鬼が『
「『
「民俗学者で最後の
また島根県北東部の
新潟や滋賀でいう『
「私がこの国の
「確かにその通りだ。俺の
「水木しげる先生とか好きそうですね」
イタコ爺のやっていた水木しげるのモノマネはシュールで面白かった。
「鬼太郎は好きだよ……」
「まぁ今回の鬼は、鬼が放つ独特の気である。
「この穢れた霊場の主は倒しましたが、他にまだ同格が居るかもしれません。早く運転手さんの元に向かいましょう」
「それも、そうだな……一応救援要請を出しておこう。星川たのめるか?」
元S級陰陽師とはいえ、現在は協会に階級を返上し隠居した身の上のため、気軽に連絡するのは気が引ける。
「いいですけど、私の報告だと多分対応が雑になると思うので、先輩の名前を出させてもらいますね」
「面倒だが致し方がない……俺の名前をだして民間人の保護を求めてくれ……」
俺は指示を飛ばすと、喉の奥に引っかかっている違和感に気が付いた。先ほど説明した通り、今回の鬼は『水』・『土』、『木』、『火』、『金』の順でその気を宿している可能性が高い。
もし、『木気』の鬼ならば……人間を近づけないようにしていただけとも考えられる……何かこの事件には裏があるのかもしれない。それを探すにはあの少年少女に聞いてみるのが一番だ。
俺は運転手の男が消えた方向へ向けて先を急いだ。
俺が運転手さんの元に辿り付いた時には、みんなの怪我の治療を始めていた。
怪我と言っても雑木林で多少切った程度のもではあるのだが、傷口が
俺の存在に気が付いたのか? 運転手の男性は状況を説明する。
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TIPS 『
『
古くは、古代中国の道教家の
台密とも呼ばれる。日本の天台宗に本格的な密教を持ち込んだのは、長崎の出島で中国人の僧侶から知識を授かった
日本の密教は、空海、最澄以前から存在した霊山を神聖視する在来の山岳信仰とも結びつき、修験道などの神仏習合の主体ともなった。山岳
また武士系陰陽師にこの呪文を『
また九字には十字と言う派生があり、九字の後に一文字の漢字を加えて効果を一点に特化させる効果がある。
一文字の漢字は特化させたい効果によって異なり、作中では捕縛、拘束が目的であるため縛と付け加えた。
天台宗(台密)や道教 最も強力であるといわれている。
原文『臨兵闘者皆陣列前行』
意味『臨む兵、闘う者、皆陣列べて前を行く』
真言宗(東密)
原文『臨兵闘者皆陣列在前』
意味『臨む兵、闘う者、皆陣列べて前に在り』
仏教系
原文『臨兵闘者皆陣烈(裂)在前』
意味『臨む兵、闘う者、皆陣烈(裂)れて前に在り』
原文『臨兵闘者皆陳列在前』
意味『臨む兵、闘う者、皆陳列べて前に在り』
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