第4話
俺は脚を止めるためブレーキを掛けると少女達を立たせる。
「この
「アレが鬼なんですか?」
少女は怯えながらに現状を確認する。
学校で基礎は習っているハズなんだけどなぁ……
「ああ、生き物……特に人間の情念それが集まったモノが怨霊や鬼、妖怪と呼ばれる存在だ。特に墓場、病院、学校、処刑場や古戦場、山や河、海などには負の感情が淀み、その淀みから生まれ出でるのがああいった化け物だ」
俺は
鞘から抜き放たれた刀身には一切の飾り気はなく、ただ鋭く冷たい一振りの刃と言った印象を与える。
「刀の陰陽師……仁科家ですか?」
「ああ、仁科本家で次期当主候補だった三年前の英雄……仁科祐介とは俺の事だ」
言いたくもない。時代劇のような啖呵を切り、同じぐらいの少年少女を安心させる。
「オン・アクウン」
――――と現代式符術では殆ど使われる事の少ない
先ほどよりも早い速度――――まるで瞬間移動のような高速で移動して鬼の眼前に移動する。
本来ならば対応する印を結ばなければ、発動しない術だが元Sランクの俺レベルになると省略できる。
無論、現役時代ならもっと少ない霊力で、早く高い効果を出せたのだが……
「
運転手をしていた陰陽師はそう呟くと、五枚のそれぞれ込められた気が違う呪符が霊力に従って、
その五芒星は
「これは?」
「本来は仏教の
そういうと特殊警棒を片手に運転手の男は走りだした。
………
……
…
「石は流れる、木の葉は
――――と口づさみながら刀を大上段に構えながら近づいた。
すると、木気によって生じたツタから逃げ出さんと
「鬼が大人しくなった?
勉強不足だな、星川いろは………
剣を地面に突き刺して呪符を取り出し呪文を唱える。
妖怪変化の類はその本質を見定められる事に弱い。
今回唱えているのは、何れも伝承の中で牛気除けとして語られるモノだ。
「
刹那、どこからともなく法螺貝の音が周囲に鳴り響く。
古くから貝の音には破邪の効果があるとされており、また愛媛県の大洲市に伝わる伝承ではホラ貝の音と真言で怯んだとある。効果は絶大だろう。
俺は耳を塞ぐ事無く次の術式の発動に移る……
星川は両耳を塞ぎながら声の限り叫んだ。
「やるならやるって言って下さい!」
「悪かった。これで終わらせる」
柏手を小気味よく打つと深呼吸をして呪文を唱える。
「
弓に矢を
ギチギチと音を立てて木が強くしなり折れそうになった瞬間。俺は矢を放った。
ひゅるりひゅるりと甲高い
現役時代ならこんな儀式めいた願掛けをする事なく戦えたというのに……今の俺では昔話に習った小細工や、神仏に祈らなければ鬼共を祓う事は出来ないようだ。
そしてモノの見事に霊力は空っぽ寸前。現在の俺の霊力はC級と言った所だろう……
「仁科先輩ってやっぱり強いんですね……現役退いて三年も立っているって思えないぐらいは強いんですけど……」
そういうと拘束に使っていた木気の術を解いた。
刹那。
鬼の前足が振りかぶられた。
星川は足が竦んでおり、
剣を地面から引き抜くと短い祈りの言葉を唱え剣を
「
三日月状の刃と化した霊力は、馬上槍の穂先のように
「バカ野郎! 鬼っていう存在はな神霊に類する存在だ。
仏教では神々と同等の存在であり、日本古来の言葉では鬼は
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TIPS 『土蜘蛛、山蜘蛛』
史実において大和政権に服属しない。
まつろわぬ民のこと。
取り分け越後……現在の佐渡ヶ島を除く現在の新潟県全域に住まう蛮族の事を土蜘蛛と呼んだ。
720年『日本書紀』、713年『風土記』『神武記』『釈日本紀』の中に記された『越後国風土記』などでは、
「「狼の性、梟の情」を持ち強暴であり、山野に
――――と狂暴で、手足の長い尾の有る異形の民族として描写され、土雲や
また個人名も記されており、
恐らく野蛮で未開の領域に棲む竪穴式住居や洞窟に棲む縄文・弥生型の非農耕民族や文明的に劣った北方民を、見下し化け物に見たてたものと思われる。
大きさも1.2m~60mと伝承により大きく幅があり、変化能力を有する
また
時代が降るにつれ、蜘蛛の妖怪として登場し、天皇や神仏、武家の権威を示すための敵として度々登場する。
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