76話
『ようやっと出番かァ! 待ちくたびれたぜマイマスター』
「ごめんね。それじゃ、あのアンテナがどう壊れてるか調べてくれる?」
『んん……? まあ別にいいが、面白い使い方だなァ』
なんでもハッキングするコンピュータウイルス、という設定の「ノイス」は、
『で、どうだ。25レベルのうち、いくら渡してくれるんだ?』
「一時的なんだよね?」
『終わったら返すぜ。機械はウソをつかない』
「じゃあ20レベルね」
大笑いするノイスにエネルギーを渡して、パラボラアンテナの様子を調べてもらった。
『どこも壊れてねェなー。今の今まで使ってたんじゃないかってくらいまともだぜェ。動力はぜんぜん足りねェから、すぐ動かすってわけにはいかねェけど』
「やっぱり、発電施設は取り戻さなくてはいけないようですね……」
『壊せなかったってふうには思えねェ、保全に勤しんでる工員がいそうだな』
「きな臭いな、使ってるやつがいるってことか? どう思う」
ゾードの疑問に、ノイスは『そりゃ便利だからなァ』と笑う。
「何か隠してる?」
『誰からも信頼されてねェやつは誰も騙せねェんだぜ、マイマスター』
「わからないんだね」
『使用者のIDが分かるような施設ではございませんし、アクセス情報もありません』
ゾードの方のノイスも、かなり高度な情報を追っているようだった。
「えーと……ちょっと気になるんですけど、どうして遺物を探す施設なんてあるんです? いまは要りますけど、これが建った年代って……」
「疑問はまあわからんでもないが、歴史もそこそこ複雑でな。人類の生存圏がここまで小さくなるのにも、わりかし時間がかかってんだ」
ローペの言葉に、ゾードはかぶりを振った。
「クエストガチ勢から聞いたことをちょっとずつ……にはなるんだが。この星の歴史、どのくらい覚えてる?」
「五つの星が衝突して、調査することになったとか」
「そうだな。けっこうな大惨事のはずなんだが、コロニーのおかげで生存者はそこそこいたらしくてな。
「……進み遅すぎませんか?」
俺も、
「人数も質も大したことねえから、すぐ蹴散らされたっつうか……そこそこ粘ったが、ある時期を境にいなくなったとかでな。プレイヤー目線だと「引退」ってことなんだろうが、こっちの世界だとどういう扱いなんだか」
「その成果は、どのくらい出たのかな」
牙を腕組みで支えながら、錫児さんが尋ねた。
「用語として知れ渡っちゃあいるが、個人名としては……ってレベルだ。で、遺物がどういうモンなのかっつう話になるんだがな」
「武器とか防具、でしたよね」
「大昔に使われていた実体装備の破片――だから、そうだな。いま稼働してる機械だの符蛆だのが持ってるやつは、ライヴギア技術と似たようなやつで、パーツの一部みたいなモンらしい」
「あー、道理でドロップアイテムがしょっぼいわけだ」
ザイルの感想は、ごもっともとしか言いようがなかった。原生生物を倒すと肉や骨が手に入るし、機械や符蛆を倒すとライヴギアの部品が手に入るが、武器や防具が直接落ちることはない。実体のある物資は、すさまじいくらい貴重なのだ。
「実体装備は、もう尋常じゃねえくらい貴重だが……それ以上に、その性能も「魔法の道具」なんて評が残ってるくらい、ものすげぇシロモノだったみてぇだな」
「なーるほどー。別ゲーでいう、アーティファクトとかマジックアイテムとか……そういうものってことですね?」
「そう。だから“何者か”が狙ってるらしい」
『ぼかすなよ、角刈りの』
調査を終えたノイスが笑う。
「ぼかすも何も、この惑星に何がいるかすらわかってねぇんだぜ。入植者と
『マイマスター。ここの電源だけで動かせる施設が、内部にありました』
ゾードの方のノイスが、流れをぶった切って言った。
「おう? 省エネってことは小規模なんだろ、役に立つのか?」
『ブレイブの記録を閲覧できる、読み取り装置です』
「ふぅん……? ザクロくん、ついに機会が来たようだね」
「ええ。これで、ようやく」
どこにあるのかもわからなかったはずの装置が、この施設に据え付けられている。間違いなく朗報のはずなのに、どこか不穏だった。
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