短歌20首「新婦友人」

玄川透

新婦友人


出欠を問わず日程だけ寄こすもう信頼と思うほかない

名を変えて真っ白い服まとうひと見送る式はみんな葬式


群生す紺の花々スカート垂れ流す血と無理解あと思いつきの死

むらぎもの腐臭にけぶる花園でただ透明なあなたは光

薔薇というあなたが好む花だけは無臭無言で揺れるアクリル

踊り場ってなに踊るんだろって踊れない上履き突き合わせてあははって

あの頃の救いはいつか花細しはなぐはし葦にふたりで成り果てること


ネイビーのドレスは好きなだけであり回帰ではない手向けではある

このたびは寝耳に水という声にひとり乾いた耳そばだてる

どの皿もよくは知らない新郎のひたいにかかるあぶらがにおう

比類なき光を無下に濁らせる手垢まみれの祝辞わらわら

料理下手はにかんでいた横顔の奴隷宣言ファーストバイト


百均のおそろいリング交換の喝采浴びてまなうらに消ゆ

紺色のうねりは沈む白船が風切って過ぐ波止場の隅に

白無垢を脱いで破瓜色オーガンジーひきずり笑うあなたは女

祝福を受けて皮膚から皮膚を行く先から寄こす眼差しを追う

テーブルの端から互いに手を振った今生の別れのようだった

地下鉄のトイレに捨てたハイヒール踊り場の夢渡すものかと


ベッドから母を求めて泣く稚児の無垢の真ん中いきり立つ雄

妻にさえならぬ知己から内祝いされて戸惑う首すじひかり

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短歌20首「新婦友人」 玄川透 @krkwngm

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