【完結】ダンジョン配信者山田オリガくん、不本意なバズり方をする~ パワーアップのために諸肌さらしただけでわざとじゃないんです!性癖を破壊する意図なんかありません!!
第十三話 山田オリガくん、順調に探索を進める……が!
第十三話 山田オリガくん、順調に探索を進める……が!
山田オリガは念仏を唱えていた。
股間が元気になりそうなので御仏のお慈悲に縋って冷静さを取り戻そうとしていた。
もしこれがオリガ一人で探索していたら、ドローンの操縦AIに『股間は移さない位置取りで』と命令できただろう。
しかしカップル配信な以上、そんな命令をしたらオリガの股間が野獣になっていると気取られてしまう。それだけはできない。
「機嫌を直してほしいな、オリガくん」
オルガは仏頂面でナターシャを睨んだ。
公衆の面前で辱められお怒り度MAXといった感じだが、しょせん男なので間近で女性の半裸を見れて嬉しいという気持ちがごたまぜになっている。
とにかく敵だ。今は敵が欲しい。
オリガはなん十歩か事に張り巡らせる
「敵です。恐らくウルフ系」
「ではボクと一番相性がいいな」
「気を付けて。たぶん毒持ちです」
振動に検知したのは小さめの振動が四つ、一塊になっている。恐らくは四足歩行。となればウルフ系のモンスターだ。
問題があるとすれば彼らの爪牙は常に不衛生で、傷から毒が回ることも多い。
「援護に徹します」
「よろしく!」
オリガは弓を背中に戻し、糸使いとしての能力でかく乱と援護に徹すると決めた。俊敏なモンスター相手に命中させられるほど射法を極めた訳ではない。ならば糸を張り巡らせてのクラウドコントロールに徹するほうがいい。
「がるるるるぅ!!」
「さぁ来いよ!」
ナターシャは細剣を一挙動で引きぬくと、半身になって構え、片手で背中からマントのような赤い布を振り上げた。
「あははっ、鈍い鈍い、止まってるみたいだ!」
大口を開けて迫るウルフの噛み付き攻撃を前にナターシャは回避し――さらにもう一度、独楽のように回転して回避。相手の攻撃の前を左右に無駄に往復するという優速の剣士にのみ許された、一度の攻撃に対して二度も回避するという離れ業を見せる。
さらに迫る他のウルフの噛み付きをレッドフラッグを翻して流麗に受け流した。盾としての機能を持つレッドフラッグで防げばそれもまた回避と見なされる。
そして回避が成功するたびに
「それっ!!」
剣光が瞬く。
ウルフの脳天を貫く刺突。それが何度も煌めいた。脳天に一撃、口内に一撃、喉笛を払う計三回の反撃で事も無げに切り倒す。丁寧な殺し方コンテストとかがあれば入賞間違いなしだろう。
”おお……すごい、ただのセクハラ女だと思ってごめん”
”回避すればするほど火力や速度あがるんだっけか。だから一度の噛み付きに二回避けてるのね”
「なんてったって基礎があがってるからね!」
ナターシャは上機嫌だ。体が軽く動きが切れる。
自分の五体を包み込む人工筋肉の強化に加え、ここ数日で万パズしてフォロワー数を増やしたおかげで
さらに突進してくるウルフをレッドフラッグでくるむように包み込み、空中へと放り投げる。
「オリガくん!」
「ご心配なく」
オリガもひたすら時間稼ぎに徹している。
目に見える糸をウルフの飛び越えられる程度の高さに配置し、跳躍した相手にちょうど激突する位置へと透明な糸を張る。
跳躍した途端に糸の弾力で弾き飛ばされ横転したところをオリガの弓が正確に射抜いた。
”アー! 乳首、雄っぱいポロリないんですか!”
「ありませんよ!」
オリガも
新しい階層に踏み込んだ二人は事も無げにモンスターを討伐し続け、先に進む。
お互い目立った怪我もない。多少の疲労も少し休めば回復する程度だ。
「ダーリン、大丈夫かい?」
「その呼び名はやめてください。怪我はありません。矢玉も回収しました」
背中の矢筒に矢を収める。
ダンジョン内部の生物組織は外に出れば消滅するが、矢の再利用をするならひとまずは血糊をぬぐっておく必要がある。オリガの矢筒はそういう手間も自動で行ってくれる代物だった。
”結構進んだね”
「最初に出てきたウルフ系もこれで五回ほど遭遇しました。そろそろ中間地点に設置された神社に到着できるはずです」
ダンジョンは常に同じ構造、という訳でもない。
数週間から数か月のランダムな期間で構造が変化する。それでも神の威光に守られた神殿のみは不変であり、どれだけ形が変わろうとも『だいたい中間地点』に神殿は位置し続ける。ダンジョンという異世界の法則を、この世の神がもたらす法則がはねのけ続けているわけだ。
歩き続けてそろそろ到達するはず。
何度目か張り巡らせた
「数1、種別は四足歩行、けれど早くて重いです! 接敵までおよそ8秒!」
「なんだって?」
ナターシャは警戒しながら細剣を引きぬきオリガを庇う位置に立つ。
この階層ではそこまで高速で移動できるモンスターは存在しないはずだ。警戒の色をにじませながら構えたナターシャは――そこで姿を現したモンスターに顔をひきつらせた。
「
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