【完結】ダンジョン配信者山田オリガくん、不本意なバズり方をする~ パワーアップのために諸肌さらしただけでわざとじゃないんです!性癖を破壊する意図なんかありません!!
第十一話 山田オリガくん、相方に講義する!
第十一話 山田オリガくん、相方に講義する!
山田オリガは17歳だ。
普通ならこの年齢の人だと学校に通うべきところであるが、彼の場合だと頭脳明晰だったためすでにアメリカのほうで学位を取っている。
対してナターシャ=更級は21歳だ。ダンジョン探索者という職業がこの世に出現してすでに40年近く。
設立当初はヤクザな商売だと嘆かれたものだが、今や探索者のもたらす希少な資源で社会は潤っている。後ろ指をさされることはなくなっていた。
そして二人は今日も配信用ドローンを前に引き連れながらダンジョンを進む。
「そんなわけでぼくとナターシャ=更級さんとの共同で、現在は地下中層を進んでいます。いつものように目的地は伊邪那美様の神社。
下層が適正レベルのナタさんがいるとのことで認められた形ですね」
中層ともなると敵も強い相手が出てくる。ここでさらなる深みを進むことを諦める探索者も多い。
平均よりも豊かな生活は、中層から出てくる資源でも十分に実現できるからだ。エレベーターを降り、まずはダンジョン内にある神社の中で最後の武装をチェックする。
「ところでオリガくん。なんでダンジョンに神社があるんだっけ」
”ナターシャ……おまえ、それは探索者ガイドブックに載ってるだろ……”
”わりかし教科書に載る話なのに……”
「ふふ。みんな、ボクの事をおバカだと思ってるだろ。その通りさ!
ボクは見かけこそイケメンの美女だけど頭の良さには自信がないよ!」
オリガは呆れの視線を向けた後で口を開く。
「まぁいいですよ。おさらいをしておきましょう。
まず、ダンジョンが出現した40年前。一つの異変が起きました。これまで伝承でしか伝わっていなかった……大昔の魔術などが再び力を持ち始めたんです。ダンジョンが出現したことにより、超自然的な力……俗にいう魔力がもたらされたから、と言われてますね。
そしてこの日本では……陰陽術が復活したんです」
”へー……”
”伊邪那美様のご利益は知ってても、どういう経緯だったか知らない人は多いよな”
”オリガ先生のドスケベ個人授業はまだですか!!”
「………………さて。ダンジョンには一つ、共通した決まりがあります。ナタさんはなんだと思います?」
「んん。モンスターがいて宝を落す?」
「それも正解です。もう一つの正解は『すべて地下にある』ですよ。
当時新設されたダンジョン対策課、またの名を『新陰陽寮』はファンタジーにはファンタジーをぶつけんだよの精神で、ダンジョン対策を始めたんです」
「うん」
「古来より地下は冥府に繋がっている、あるいは冥府そのものだと言われてました。
黄泉比良坂、アケローン川、三途の川、そのすべてが地下です。
そこにダンジョン対策課は目を付けました。つまり……ダンジョンはこの冥府に誰かが勝手に作った不法建築物だという論法です。
この国で言うならば冥府の主神は伊邪那美様。ダンジョン対策課は神官を通じて古来の神へと
『あなたの領域に勝手に住まう不届きものを我らが変わって討滅いたします。
その戦のさ中に休める場所を作る許可を。どうか我らをお守りください』とね」
”へー。つまりそれがダンジョン内部にある神殿だと……”
「ダンジョン探索協会の一番の手柄は間違いなく『危険なダンジョン内部で、絶対的に安全な地点を作った』ことですよ。
逆にアメリカは土着の冥府信仰が存在せず、この神殿を作りにくいんです。なので別のやり方で探索者の安全を確保しているんですが。興味があるならアリアドネ・ライフロープで検索してください」
”
「あの世のものを食べると、この世に戻れなくなるという決まりですね。
仰る通りダンジョン内部でモンスターの肉を食する事は推奨されていません。
……しかし昨今は神官を通じて神との意思疎通も可能になりました。
モンスターの肉を食するのは非推奨ですが、地上近くの神殿でお祓いを受ければ伊邪那美様もお目こぼししてくださるそうです。
なので我々も伊邪那美様の神殿を通る際はお賽銭を忘れずに」
オリガはドローンへの説明を終え、ゆっくりと立ち上がった。
相棒になるナターシャへと視線を向ける。
「それではナタさん」
「うん」
そっと手を差し出し合い、お互いの小指を絡ませる。
二人が手を離せば、そこには一本の糸で繋がっていた。
ナターシャは己の小指から伸びる糸が少し進んだ先で虚空に消えているような光景に小首を傾げた。
「これが必要なんだっけ」
「ええ。ぼくの魔力をナターシャさんへと直接送り届けるための
ほえー、と感心した風の声をあげるナターシャ。
地道にだが凄いことである。魔力は探索者がダンジョンの怪物と戦える重要な要素だ。
”え……ますます凄くない?”
”強力なスキルは魔力の損耗が激しいし、回復のためのポーション系は戦闘中に飲んでる余裕とかあんまりないからな”
”ますますオリガくんの有能さが証明されていく……”
そんな風に褒められるオリガ。
「ナターシャさん、これであなたに糸使いのスキルで人工筋肉を纏わせるようになりました。
ご用命の時はどうぞ」
「うん。よろしくね」
そう言いながらナターシャは胸のポケットから愛飲する煙草……ではなく、ロリポップを取りだして唇に銜えた。
「禁煙なさってるんですか?」
「……一度、真面目に強さを取り戻そうと思ってね。
ああ、それとオリガくん。
はい、と頷くオリガ。その前を進むナターシャ。
二人は安全な神殿から魔獣ひしめく地底へと足を踏み入れた。
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