第八話 山田オリガくん、ガンガン行こうぜと励ましを受ける!!




「えー。恐らく今回の一件で初めての方がほとんど、とは思います。

 始めまして、山田オリガです」

「やぁ、こんにちわ。彼のカップルになる予定のナターシャ=更級だよ」

「予定ですよ?!」

「ふふ、きみはいじわるだな」


 もちろんナターシャ=更級は最初からオリガとカップル配信に発展できるなんて考えていなかった。

 今や山田オリガはフォロワー数20万、ナターシャ=更級もフォロワー数10万越えだ。

 ただし今回は事前予告は無しのぶっつけ本番だ。



”突然の生放送だがニートのワイから逃れると思うなよ!”

”働け”

”働いてスパ茶しろ”

”いかん、その女には手を出すな!”

”痴女から美少年を守るため監視に来ました”

”俺たちのオリガくんを狙う悪女め……”

”俺が守護まもらねばならぬ”


 なにせナターシャ=更級は初対面のオリガに『やらないか』と誘いをかけた変質者の疑いがかかっている。

 天使のような美少年に、長身で胸の大きいエッチ系動画の配信者が絡むというのだ。大勢はオリガに対して18禁行為をしでかすのではないかと期待――もとい警戒していた。

 オリガは近くのテーブルに置いたドローンのカメラに対して丁寧に一礼する。

 今回の配信場所はダンジョン協会の中にある会議室を一つ貸し切りにしていた。



「今回はぼくたちの配信を見に来てくれてありがとうございます。

 ぼくらは配信者ですが同時に地下を目指しダンジョンという超自然現象に決着をつけるべく活動する神の使徒。

 腕のいい前衛の方と組む機会は逃せません。そんなわけでナタさん、よろしくお願いしますね」

「うん。こっちこそ。

 さて、初めましての方がほとんどだね。ボクの名前はナターシャ=更級。通称ナタさ。クラスは闘獣士マタドール

 みんなに変わってモンスターたちからオリガくんの事を守って見せよう」


”むしろ傍にいる淫獣が心配”

”まだ浅層だし最初の階層主も楽に倒したオリガくんなら大丈夫よ”

”気を付けて!(主に仲間に)”


「なんだいキミたち。失礼だなぁ」


 けらけらと面白そうに笑うナターシャをジト目で見つめながらオリガは話を続ける。


「さて。本日ぼくらはダンジョン協会内にあるトレーニングルームで訓練をしました。

 息を合わせるための連携の訓練ですが、それともう一つ。ぼくら二人でやるべきお詫びがあったのです」


”お詫び?”


「はい。ぼくは以前の乳首動画で……まぁ、そのどうしてぼくが乳首さらしただけでナタさんのアカウントが凍結されたのか直談判に行ったんですが。その……人工知能がぼくの乳首をセンシティブ判定したそうで。

 そのうえ、人工知能に手を加えるとなると大変なお金がかかるそうなので……我慢してくれと」

「そこから先はボクが話そう。

 ボクも異議申し立てのためにダンジョン協会のほうで待合室に詰めていたのだけど。いきなり室内から『キャー!!』とカンダカイ声がしてね。すわ女人の貞操の危機かと慌ててドアをけ破り突入したら。

 ……山田オリガくんが男性職員の手を掴んで股間に導こうとしていた……」


”えっ”

”ええええぇ……えっち! 変態!”

”あれ、もしかして先日に協会で聞こえたカンダカイ声が聞こえたと思ったらオリガくんの悲鳴だったのか! ……あれ?”

”……自分で男性職員の手を掴んで股間に?”

”どういうことなの……”


 オリガは恥ずかしさで耳まで赤らめながら答える。


「……恥ずかしながら、当時のぼくは頭に血が昇っておりました。

 男性であるのにぼくの乳首がセンシティブ判定を受けるという現実に我慢がならず……それなら男性であると明確な証拠を突きつけるために、その……」


”つ、つまり……オリガくんの性別を女性だと勘違いすれば、お〇〇〇んを触らせてくれるって……こと?!”

”アッー!!!!! スケベ! このドスケベ女!”

”女性がそんなことするなんて幻滅です!!///”

”エッチ! 変態女!”


「なんでみなさんぼくの事を女扱いするんですかぁ! へ、変態です!」


”ああぁぁ~///( ^)o(^ )”

”美少年に変態と罵られることで摂取できるエネルギーで満たされた……”

”君の股間を枕に眠りたい……”

”しかし、となると職員さんがカンダカイ悲鳴をあげたのだと?”


「そう。職員さんはオリガくんに手を掴まれ、二人きりの密室でお〇〇〇んを握らせられるという究極的状況に瀕した結果、内なるメスを呼び起こされてしまったのさ!

 そんなわけでボクはてっきり、あのカンダカイ悲鳴はオリガくんから発せられたのだと思って……職員さんの腕をねじり上げてしまうという加害者と被害者を取り違える最低のミスをしてしまったんだ……」


”それは職員さん仕方ない”

”同じ状況に放り込まれたら果たして正気でいられるのか”

”あまりにもひどすぎて草www”

”お〇〇〇ん握らされそうになったらそりゃ犯罪だわw”

”で、職員さん怒ってなかった?”


 と、その質問が来たあたりでオリガとナターシャの二人は視線を合わせ、少し言いずらそうに応える。


「その……職員さんは長年勃起不全に悩んでいたそうなんですが」

「……数年ぶりに復活して、長年ため込んでたお金で風俗行ったそうだよ……」

「もちろん最初……事情は公開しない方針でしたが、当の職員様から『ガンガン行こうぜ』と言われてしまいまして……」


”その節は誠にありがとうございました(職員)”

”ギャー!! まさか、まさかご本尊ですか!”

”オリガくんの股間は勃起不全にも効く……ってこと!?”

”職員としてひいきはできませんが、お二人の活躍を陰ながら応援しております(職員)”


「「その節は本当にごめんなさい……」」


 結果的に良い方向に転んだからいいものの、やった事はハラスメント行為と誤認である。

 オリガとナターシャの二人は、深々と頭をさげた。

 無理もないが。

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