――第四線――(七月六日)
夜にベッドで眠る前にもう一度、五線譜ノートのことを考える。
『すき 今日も話しをしたよ』
帰りのホームルームが終わった後、五線紙を見たら昨日書いた『アナタは誰?』に対する返事として、新たにそれは刻まれていた。
今日一日、学校で話した相手を頭に浮かべてみる。
バスケ部の皆、クラスメイト、先生、校門の守衛さん、この中で特別、言動が気になる人もいなかった。
ヒントをくれたつもりだろうけど、やはり誰なのかわからない。
だからわたしはこう刻んだ。
『アナタのことを教えてほしい』
五線譜ノートは今日も教室の机の中に置いてきている。
明日もきっとアナタの想いが刻まれる。
アナタとわたしで言葉を綴るようになってから、わたしは五線譜に新たなメロディーを刻んでいない。
アナタのことがとても気になるから。
色々考えだすと、不器用なわたしは何から片付けたら良いか分からなくなり、何もできなくなる。
ツカサにも心配をかけてしまったし
――そろそろ決着をつけないといけないよね。
そして五線紙ノートにわたしの心の奥底にある想いを刻まなければならない。
『すきって言ってくれてありがとう。でもわたしにはすきな人がいます。アナタと違い、まだ伝える勇気すらないけど、いつかこの想いをその人に届けます。だからごめんなさい。アナタの気持ちに答える事はできません』……と
好きな人と気まずくなるのが嫌で、これまでずっと自分にも嘘をついて誤魔化し、普通の友達として振舞ってきた。
五線譜で想いを寄せてくれたアナタを傷つけてしまうかもしれないし、この五線譜での言葉のやりとりも終わってしまうかもしれない。
それでもこの気持ちだけは譲れない。
五線譜で最初に『スキ』と刻まれた時はとても驚いたけど、今は感謝している。
想いを伝える事の大切さを教えてくれたアナタに……
そしてアナタのおかげで、わたしは自分の気持ちに向き合う気になった。
ありがとう
おやすみなさい
また明日、五線譜で逢おう
わたしは瞼を閉じて今日を終わらせる。
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