ゴンくん
マドにーには、ちょうどパパとお昼を食べ終わった頃に帰ってきた。
少し早めのお昼だなーと思っていたけど、わざとじゃないよね? ショックを受けてるマドにーにが少し可哀想だった。
パパが仕事へ行き、私は自分の部屋へマドにーにとレッツラゴー。お昼ご飯は、私がお昼寝してる時に食べるんだって。ええ、遅すぎない?
「僕、朝からずっとそわそわしてたんだよ」
「そわそわ?」
「うん。この時間が待ち遠しかった」
なんて嬉しいことを。10歳の子供って、女子のスカートをめくったり鼻ほじったりしてるもんじゃないの? まあマドにーにのそんな姿、想像出来ないけど。
というか媚び売る2歳児も普通居ないか。人のこと言えないな。
部屋に到着し扉を開けてもらうと、部屋の真ん中に大きなプレゼントがででんと置かれていた。
わあっとマドにーにを見上げる。
「プレゼント!?」
「うん、そうだよ。本当は一番先に言いたかったけど、まあ仕方ないか。……リシア、誕生日おめでとう。産まれてきてくれてありがとう」
膝をついたマドにーにがにっこりと微笑みながら言ってきた。
ぱあああっと笑って、ギューっと抱きつく。ちょっと目がうるうる。
マドにーには私の背中をぽんぽんすると、さあプレゼントを開けてみてと、部屋の中に入るよう促した。
ルンルンと下手くそなステップを踏みながらプレゼントに近づく。
わあ、でかい! 私の身長超えてる!
「そこのリボンを引っ張ってみて」
思わず髪飾りを手で隠した。解いちゃダメ!
マドにーにが苦笑いしながらプレゼントの方のリボンを指さす。えへ、勘違いしちゃった。
えいっとリボンを引っ張ると、そこには大きな大きなドラゴン。
箱に入っていなかったのでシルエットで何となくこの前お願いしたものかなと分かっていたが、本で見たやつがドンと目の前にあって、興奮でぴょんぴょん飛び跳ねる。
わーって叫びながらドラゴンの周りをグルグル。
ドラゴンのお腹の方に立つと、両手を広げてぼふっと抱きついた。
柔らかい。ふわふわして気持ちいい。こんなに大きいぬいぐるみ初めて見た。
少し顔を離してドラゴンを見つめる。あれ? 本で見たのと少し、違う?
牙は丸くて、爪はなくて、トゲトゲは背中に一列しかない。それになんだか、すごく可愛くなっている。
ドラゴンの目には金色の宝石が埋め込まれている。あ、マドにーにの色だ!
本で見たときのかっこよさがだいぶ、いや殆ど失われているが、これはこれで凄くいい。
「ありがとう、マドにーに!」
どういたしましてと、私の頭を撫でてくれた。
あ、この子に名前を付けないと。ドラゴンっていうのは種族名だからなんだか可哀想。
うーんと悩んでいると、心配そうにマドにーにが顔を覗き込んできた。
「お名前をかんがえてるの」
「名前?」
「うん! リシアがママだからこの子にお名前つけるの!」
「……うん、いいと思う」
その間はなんだろうか。聞かないでおくね。でも次はないよ。
「うーん、うーん。……あ! ゴンくんにする!」
「……うん、いいと思うよ」
マドにーにに向かってヒーローキック。次はないって決めてたもん。
私の名付けに何か問題があるの? ドラゴンのゴンくんってすごくいい名前なのに!
「ご、ごめんリシア!」
「ゴンくんにあやまって!」
「ゴン、くんも、えーと、ごめんね?」
「ふはははは、とくべつに、ゆるちてやろう! がはははは!」
「え、今のはゴンくん?」
「よかったね、ゴンくんゆるちてくれるって!」
「……ふ、ふふふっ、うん、ふっ! あ、ありがとうゴンくん。ふふ、ふはっ!」
なんかマドにーににバカにされてる気がするけど、気のせいかな。
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