たからもの
午前中はパパと、午後は学校から戻ったマドにーにと過ごすようだ。
私の涙がおさまったあと、パパがベルで呼んだじいやに教えてもらった。
私はお風呂がある部屋でお着替えと顔を洗って、髪飾りは侍女に可愛く付け直してもらった。
部屋を出るとパパも着替え終わっていて、軽い食事がテーブルに運ばれた。
パパは黒い飲み物しか飲まなくて、聞いたら、たまにしか朝ごはんは食べないそうだ。
私は1口サイズのパンケーキを数個とココアを頂いた。
午前中の仕事を休ませてしまって申し訳ないが、一緒に居られて嬉しい。
歯磨きカプセルを噛んでさっぱりすると、たたたっと近くで控えていたじいやの元へ駆け寄る。じいやがしゃがんで視線を合わせてくれた。
「じいや!」
「リフレシア様、如何されましたか?」
私はその場でクルンと回る。可愛いドレスを着せてもらったので、可愛さ倍増だと思う。ほれほれ幼児って可愛かろ? まあ、今回のメインは私じゃないけど。
「みてみて! リボン! にあう?」
「とてもよく似合っておりますよ。まるで妖精のように可愛らしいですよ」
「えへへー」
赤くなった頬を両手で抑え、恥ずかしくてぴょんぴょん飛び跳ねてしまう。
「あのねー、これパパに貰ったの」
「それはようございました。リフレシア様の可愛らしさが更に引き立つ素晴らしいリボンですね」
「リシアのたからもの!」
「ふふふ、愛らしいですね」
優しい笑顔のじいやにほっこりする。
両手を広げてギュッと抱きついた。驚いたのか、少し慌てている。
「リフレシア様?」
「リシアねー、じいやもたからものにするの」
「なんと、このじいやをでございますか?」
「うん! あのねー、好きなものはたからものにするんだよ」
知ってたー? と首を傾げると、じいやは目を丸くした。すぐに茶目っ気たっぷりの顔をして、いいことを知りましたと破顔する。
「リシア」
パパが私を呼ぶ。はーいと返事をしたあと、じいやにこっそり耳打ち。
「一番はパパなの。ないちょだよ?」
じいやは楽しそうに笑いながら、存在感のある宝物ですねと言ってきたので、心の中で確かにそうかもとくすくす笑った。
パパが痺れを切らしたように再度私を呼ぶ。じいやから離れると、不動の一位に抱きついた。
「楽しそうだな」
「うん、たのちい!」
私を抱き上げたパパは、ふんっとじいやを見て鼻を鳴らした。
「宝物はそれだけでいいだろう」
髪飾りを見ながらそんなことを言うパパが可笑しくて、えー? と笑って首を振った。
きっと午後にマドにーにからドラゴンをプレゼントされる。それも宝物に入れないと。
「プリンが拗ねちゃう」
「プリン?」
「たからもの! たくさんあるの!」
パパはなんとも言えない顔をして、私の頭を撫でた。
午前中、パパの部屋でのんびりお喋りをして過ごした。ほとんど私が話していたけど。
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