部屋への侵入

夏帆が好きだと自覚した次の日、俺はまた夏帆と登校していた。


でも、おかしい。信じられないくらい上手く言葉を発せないのだ。


何か言おうと思えば噛み、早口になってしまう。


話そうと思えば思うほど泥沼にハマっていくのだ。


なんなら顔も赤いし、少し動悸がしている。


「どうしたの?なんか今日変だよ?」


うん。心配するよね。


普段通りに話してたら、相手が噛みまくるし早口だし顔は赤いし異常だもんね。


「だだ大丈夫だよ!?」


「そう?あまり大丈夫そうには見えないけど」


そう言って、手をおでこに当ててきた。


「………………え!?」


しばらく状況が理解出来なかった。


「ほら!やっぱり熱あるよ!」


「そんな事ないよ!早く学校行こ〜!」


「あ、ちょ、待って!家帰らないとダメだよ〜〜」


そう言って学校へ走って行った。


30分後………


「どうして熱があるのに私から逃げたのかな?」


「ハイ。スイマセン」


「今日は家に帰ってゆっくりしてね?」


「ハイ。ワカリマシタ」


保健室で夏帆から尋問を受けていた。


本当に熱があったのだ。単に緊張してただけだと思っていたら、大間違いだった。


あの、動悸と顔が赤いのは風邪の症状だったらしい。


先生にも


「今泉さん、熱があるならすぐに家に帰れば良かったんじゃないかな?


学校来て20分で早退する人なんて過去に一度もいなかったよ?」


こう言われた。


夏帆には心配と迷惑をかけたし、先生にも申し訳ない気持ちになった。


「あ、そうそう。ノートとか渡しに行くから家のスペアキー頂戴」



なんでスペアキー持ってんの知ってんだ?


「頂戴?」


「ハイ」


30分後…………


「家に戻って来てしまった…」


せっかく学校に行ったのに1時間で家へ逆戻りだ。


親は仕事で出張してるからここ1週間は帰ってこない。


「さて、何をしようか」


今まであまりやってなかったネトゲでもやってみるか。


「ぷるるるるるるるるる」


「ガン!」


びっくりして机を蹴ってしまった。


こんな時間になんの電話だ?


連絡先を見ずに通話を始めた。


「ねぇ、まさか今から遊ぼうとか考えてないよね?」


夏帆の声だった。


「ハイ。カンガエテイマセン」


「本当に?」


「ハイ」


「ならよし。しっかりと休んでね」


「ハイ。ワカリマシタ」




「ガチャ」


こっっっっっっわ!


まじでなんちゅうタイミングでかけてくるんだよ。


あいつはエスパーか!?


声の鷹揚もなかったから余計に怖かったんだが。


なんだ、あの緊張感の漂う会話は。


またかかって来たら怖いので、寝ることにした。


ベットでは「夏帆に迷惑かけたな〜嫌われてないかな〜」という気持ちでいっぱいだった。


そしてそのまま寝落ちてしまった。




「ガチャ」


「んあぁ?」


スマホの時計を見た。


(もう5時か)


そろそろ起きないとな。


なんか音が聞こえたけど、洗濯機だろ。


「ふあああぁぁぁ」


本当に軽い風邪だったらしい。


少し寝ただけでかなり回復していた。


「よし!まずはコンビニにk」


部屋のドアの前に髪の長い女が立っていた。


「ぎゃあああああああああああ!」


「俺の心霊系は無理なんだって!本当に勘弁してくれよぉぉぉ!」


1人寂しくパニックになっていた。


しかし、冷静になって見てみるとすごく夏帆に似ていた。


唯一違う所といえば可哀想な物を見る目をしているくらいだ。


「あ、あの。夏帆さん?」


「ああ、やっと起きたのね。アンタのために色々買って来たから見てみなさい」


なんか………冷たくね?


「うん、うん。ありがとう。でも、材料しか入ってないよ?」


「それは私が作るからよ。台所貸してもらうわね」



5分後……


「司くんは、掃除も出来ないのかしら?」


台所が汚すぎて見事に怒られていた。


「はい。掃除をサボりました」


「今から掃除しましょうか?」


「ハイ」


掃除をしながら思った……やっぱ夏帆冷たくね?



夏帆視点


(押してダメなら引いて見なきゃ!)


実行するタイミングを間違っていた。


風邪で弱っている


(ネットに書いてあったもん!)


こちらもネット情報だった。




司視点


(なんか申し訳ないな)


「手伝える事あったら手伝うよ?」


「大丈夫だよ」


一瞬で拒否された。


ここに居るのは邪魔でしかないのでリビングに行って待っていた。


20分ほどで夏帆が何かを持って来た。


「はい、おかゆ」


俺の体調を考慮した物を作ってくれたようだ。俺は梅が苦手なんだがそれも入ってない。


(マジで天使)


そして、当たり前の様にスプーンを俺の口の前に持って来た。


俺もそれを躊躇なく食べてしまった


「……………ん!?」


夏帆もまさか食べるとは思ってなかったらしい。


顔を赤くしていた。


(き、気まずい)


すると夏帆が耐えられなくなったのか


「じゃ、じゃあもう帰るわね」


と言って帰ってしまった。


嵐の様に来て去って行ってしまった。


















































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