ホンモノのストーカー

「やあ〜夏帆ちゃんじゃない。どうしてこんなとこいんの?」


その瞬間、夏帆がそのチャラけた人を汚物を見るかの様な目で見た。


でもソイツはそれを無視するかの様にニタニタ笑いながら話しかけてきた。


「何処か遠い所に転校するって言ってたよね〜?なんで機陽高校の制服着てるの?」


「アンタには関係ないでしょ。私がどこに転校しようが私の勝手。アンタらに口出しする権利はない。」


「へ〜そうなんだ〜。みんなに嘘ついてたんだ〜。じゃあ、みんなに夏帆ちゃんは機陽高校に居るって言っておこ」


「あっそ アンタみたいな愚図が言った事なんて誰が信じるの?」


「チッ」


そのままどこかに走って行ってしまった。


なんだ?めちゃめちゃ夏帆がイラついているぞ?なのに話しかけて若干脅しの様な事を言っ


てくるコイツもなんだ?


「ああ、アイツ私の前の高校の奴。入学してから付き纏ってきたんだよね。


まあ、それを理由にして転校の直談判してきたんだけどさ。まさかここで会うとは思わなか


ったけど。正直言って何してくるか分からないから怖いのよね。あうゆう言う輩達って。」


なるほど、夏帆のストーカーか。


「大丈夫だよ。俺、中学の頃にボクシングやってたから。何かあったら絶対に守るよ」


言うのを忘れていたが俺は中学時代ボクシングのクラブに入っていた。


その中でも強い方だった。だから、相手が相当強く無ければ負けることはないと思う。


そう言った後、急に夏帆が顔を赤くした。


「う、うん。ありがと」


言ってから気がついたがめちゃくちゃ彼氏面してしまった。また、やってしまった。


「ま、まあ、まずそう言う事が起きない様にしよう」


「うん。気をつけるよ」


俺はここからどう会話を弾ませるのか分からないので、とても微妙な雰囲気になった。


「あ、あのさ、さっき言ってたけど私の事にちゃ、ちゃんと守ってよ??」


この状況から更に微妙な雰囲気になる事を言うなぁ!


でも、周りの学生から嫉妬の視線と大人から初々しいカップルを見る様な目で見られたので


ハッとした。


お互いこの場から早く移動しようと思ったのか少し早歩きで学校に向かった。


教室では、夏帆と俺が一緒に登校してきたのを見てか、絶望している顔をした男子何人かいた。


とはいえ席が近いのでまた自分たちの話に没頭してしまった。


これがいけなかった。


さっきまで絶望した様な顔をした男子達がこちらへ向かってきたのだ。


「お前夏帆さんと付き合ってるの?」


「いやいや、付き合ってないけど…」


「じゃあ、昨日もそうだけどよぉ、俺たちの夏帆さんに馴れ馴れしくするなよ!」


「は?俺たちの夏帆?あのなぁ?勘違いしてんじゃねえぞ?夏帆はお前らの所有物じゃねん


だよ。あとさぁ、昨日もそうだけど って言ってるけどいつ俺がお前達の前で夏帆と仲良く


話してたんだ?お前もしかして昨日、俺らのことつけてたのか?」


夏帆の頬が引き攣った。そりゃそうだ、安全だと思っていた学校でもストーカーがいたんだ


から。


それに今の発言にはかなりイラついた。


しかも、コイツも夏帆の事ストーキングしてたのかよ。


「なあ、おい。お前夏帆の事ストーキングしてたのか?」


「あ?してねえよ!」


「じゃあ、そのスマホに映ってる写真はなんだ?」


コイツはアホなのだろうか。ロック画面を夏帆の盗撮写真にするなんて。


「い、いや。これは違う」


「何が違うんだ?言ってみろよ。な?二度と俺の夏帆にストーキングなんかするんじゃねえ


ぞ?次やったら冗談の抜きにお前らのこと潰しに行くからな?」


普段の俺なら嫌われる事を気にして絶対に言わないであろう事を言った。それくらいムカついた。


「……………」


ビビり散らかしていた。普段おとなしい俺にキレられたのが怖かったのだろうか?


とりあえず、夏帆のストーカーを潰せたからいいか。


「と、言う訳だ。だから、もうこのクラスでストーキングしてくるやつはいないよ。


だよな?お前ら?」


夏帆の方に向き直ってそう言った。


周りは無言で頷いていた。


「お、俺の夏帆…………」


夏帆何かブツブツと言っていた。


「もう授業始まるから帰れよ」


みんなが蜘蛛の巣を散らす様に居なくなった。





放課後、俺は佐藤広大と一緒にいた。


「なーんかお前、夏帆さんと話し始めてから変わったよな。今まで気弱だったのにさっきみ


たいにハッキリと物言う様になったし」


「え?そうかな?」


「うん、かなり変わったぞ?お前。少しは夏帆さんの気持ちとかにも気付ける様になったら


どうだ?」


「うん?夏帆の気持ち?」


「お前、まさかここまでやられてわかってなかったのか?その鈍感さ変わらなかったみたいだな」


「と言うと?」


「俺の口から言わせるか?」


「………………」


「まあいいか。多分、夏帆さんお前の事好きだぞ?」


「いやいや。そんな訳ないでしょ」


「信じるか信じないかはお前次第だけど、少しは夏帆さんの事じゃなくて自分の思いに目を向けてやれ」


そのまま何処か行ってしまった。


俺の思いか…


確かに夏帆をストーキングされたと分かった時は自分のことみたいにイラついた。


人の物呼ばわりされた時はすごい胸がモヤモヤした。


夏帆が他の人と付き合ったりしたら、多分胸が張り裂けると思う。


この感情はなんだ?


生まれてこのかた、二次元にしか恋したことのない俺には分からなかった。


ただ、絶対に夏帆を他の人に取られたくないと言う気持ちがあった。


「人を取られたくない」でググって見た。そしたら、独占欲と出てきた。


Siri「独占欲とは主に相手に強い好意を抱いている時にあらわれます」


「………………」


「そ、そうか!俺は夏帆の事が好きなんだ!」


でも、今の自分じゃ告白してもOKされるか分からないし、俺もこのままの自分で告白するのも嫌だ。


なら!自分を変える!それだけだ!






後書き


やっと、司が夏帆への好意を自覚しましたね!


そろそろ、物語も終盤になって来ました。読んでくれてる皆様、ありがとうございます。


評価、応援してくれると嬉しいです!


ではでは































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