過去の思い出 前編
小学3年生の頃だ。彼女と一緒に生活する事ができなくなるなんて考えてもいなかった。
息が苦しい。クラクラする。足に力が入らない。
幼い夏帆「ねえ、大丈夫?」
幼い司 「うん。大丈夫だよ」
とは言ったがもう限界が近づいていた。
(あぁ、もうダメかも)
ここで俺は気を失った。
俺はしばらくして、何処かわからない真っ白な部屋で目を覚ました。
体は楽になっていて、腕に何か刺されていたから、何となく(病院かな?)と思った。
周りを見ると、涙ぐんでいる両親と夏帆ちゃんがいた。白衣着たおじさんが入ってくると、
何故か夏帆ちゃんだけが部屋を出る様に言われて、嫌がっていたが連れて行かれてしまっ
た。
おじさんは、両親の名前を呼びこう告げた
「彼、司くんを検査したところ、心臓癌 ステージ3だという事が分かりました。この段階になると手術でしか完治は難しいでしょう。ここでは、この手術は出来ないので東京の病院にいってもらう事になります。」
その瞬間、両親が泣き出してしまった。
幼かった俺は(心臓癌?ステージ3?手術?)と両親が何を言われているのか分からなかった。
ただ、自分が何か大変な事になっているのだけが分かった。
そして、2週間後またもや何処だか分からない病院と連れて行かれてしまった。
夏帆ちゃんにさようならも言えなかった。さっき会ったのが最後になると本心では分かっていたはずだったのに。
俺は東京国際病院というところで手術をする事になったらしい。医師がとても難しい顔をし
てプリントを見ていた。
すると、その医師は僕の方を見て近づいてきて
「私の名前は、一ノ瀬 隆二です。司くんと一緒に病気と戦う仲間だよ」
と言ってきた。
僕は「よろしくお願いします」と小声で言って、やんわりと今自分がどんな状況なのか説明
してもらった。
説明をきいて
(やっぱり、夏帆ちゃんと会えるのはあの時が最後だったんだな)
と理解した。
1ヶ月を過ぎたくらいに、先生に「そろそろ手術をして病気を取ってもらえるから、一緒に
頑張ろうね」と言われた。
手術の日が来た。
結論から言って、手術は失敗した。癌をうまく取りきれなかったらしい。
「もう、僕は夏帆ちゃんと会えないんだ..............」
けれど、一ノ瀬先生が最善を尽くしたおかげで命に別状はなく、僕はもう一度手術を受ける
ことができるらしい。だから次の手術に向けて、薬を飲んで癌の進行を止めていた。
その間に、一ノ瀬先生はいなくなってしまった。
自分のミスに責任を感じて、耐えきれずに辞職してしまったらしい。
そして、次の手術で癌を取り切ることができ2ヶ月後退院する事になった。
退院して家に帰り、色んな人に「退院おめでとう!!」と言われたがその中に夏帆ちゃんの姿は無かった。
しばらくして親に「ごめんね?もう、夏帆ちゃんとは遊べないかもしれない」
と言われた。
けど、生きて帰って来れたなら会えるはず。そう思い、色々両親に質問した。
なのに、両親ははぐらかすばかりで教えてくれなかった。
次の日、学校へ行くと夏帆ちゃんの席は空っぽだった。
そして担任の先生に、「一ノ瀬 夏帆ちゃんは転校しました。」
と言われた。
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