【短歌ニ十首】夢みる素肌
笹木深冬
夢みる素肌
公園で啜るセブンの豚汁は 五時間前のセックスの味
会議中 ゆうべの睦言取り出して 舐めて戻して平気な顔する
個室の鍵を締めた途端くりかえし 舌根で弾く三つの子音
ぐっすりと眠りたい日は寝かせ置く あなたの返信示す①
次に会える日の前の晩までは 死んでいれたらいいなと思う
マツエクのクーポン捨てたところなの なんで今なの いつも夜なの
ただ好きと言うのにワイン三杯と交わりが要る歳になったの
吐息がかかるこの距離で 嫌じゃない人はきっと万分の一
リブニットの線に爪立てながら ひくい丘陵を辿るのがすき
カラメルに似た首元にふと思う aikoはやっぱり天才です。と
恋人じゃないあなたの腕だから わざと濡らして困らせている
「カンパイ」と初めてその手に触れた時 もっと深いことすると知ってた
プレゼントに合鍵がほしい、なんて言ったことのなき友にこんな歌は詠めない
私はあなたとフォードごと蜂の巣にされてもかまわないのに
返信がないのはあなたに興味はないですと返信があったということ
「脈なしの彼を振り向かせる方法」身も蓋もないセグメントをされ
合鍵と部屋着を交換するまでは想っていてもいいことにする
まだエモいなんて言葉がなかった日 何て言って茶化してたっけ
向かい側座る人にも教えたい 私たち今日最後なんです
改札で振り解いた手はあの日比べた時と同じなのにね
【短歌ニ十首】夢みる素肌 笹木深冬 @Mifuyu_S
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