第7話 特殊部隊

ダンジョンの中を走ってると大量のウルフがいるフロアにやってきた。


俺の視線の先には大量のウルフがいる。

その数は50を超えるだろう。


「ちょっと待ってよー。って、なにこの?!ウルフ!」


驚いているひめちー。

それからコメント欄が更新された。


"うおっ。なんだここ!ウルフめっちゃいる!"

"ひめちー逃げてー"

"ガチで多すぎんか?"


俺はそんなコメントを見ながらしゃべる。


「これが組織のやり方さ」


"なんの組織?"

"どこの組織だよ"


「次元犯罪者組織の【追跡者】。教団などと呼んだりする事もある」


"その組織はなにしてる組織なの?"


「主に俺たちブラナイのメンバーを追いかけている。他にはダンジョンに出現するモンスターの違法な捕獲業務なども行っている」


"やべぇな次元犯罪者組織"

"思ったよりしっかりした犯罪組織だった件"

"でも設定だろ?そういう"


「【追跡者】はちゃんと存在してるぞ」


俺はそう言って目の前にいるウルフの集団を指さした。


「ここに動かぬ証拠があるだろ。このウルフ達が組織の特殊部隊のブラッディドッグだ」


俺がそう言うと吠え始めるウルフたち。


「ガルッ!」

「ガルルル!!」


そして


"おい、どうすんだよ?ひめちーが怪我したらやばいぞ?"

"なにをするつもりなんだ?"

"この数相手してどうするんだろうほんと"


ジリジリ。

ウルフ達が俺との距離を測りながら近付いてきて。

そして


「「ガァルッ!」」

「ガルル!!!」


"お、襲いかかってきた?!"


連携の取れた動きで俺たちに向かってくるウルフ達。


「ガル!」

「ガァルル!」


"囲まれた?!"

"おい、厨二病なんとかしろ"


俺はさっそく手を眼帯に持っていこうとする。


「しかたない。【邪封眼】を解放する」


そう言うとコメント欄が一気に加速した。


"これが邪封眼ちゃんですか"

"キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!"

"ほんとコテコテだなwww"


「はぁ……はぁ……」


パーン!

眼帯を叩いて例のケチャップ袋を破裂させる。

その時に



「俺の【邪封眼】を見られるとは運が悪くて運がいいヤツらだな!!!!!!」


と叫ぶ。

袋を割った時の音を少しでも誤魔化すためだ。


"え?血出てるんだけど"

"これまじもん?"

"え?マジで血が出てるじゃん"


叫んだお陰で袋の割れる音は聞こえなかったらしい。


俺が目から血を流していると思い込んでいる。


グイッ。

上に眼帯をずらすと、

パーン!!!!!


ウルフの体が内側から破裂して全滅。


それから眼帯を戻す。


"ま、まじかよ……"

"やべぇぞこれ"

"あの目マジで特別なのか?"


俺の【邪封眼】についてのコメントが増えていく。


そして


"ヌルすげぇぇぇぇ!!!!!"

"名前ダサいけどすごいぞこいつwww"

"本物の目じゃん!魔眼ってやつか?!こんなのあるんだ!"


俺はそれを見ながら。


「あぐ……」


そう呻いて片膝をついた。


そして苦しそうにしていく。

バタリ。


倒れた。


「ひゅー……ひゅー……」

「え?、ちょ、ちょっと?!ヌル?!」


俺の頭を持ち上げて自分の膝に乗せてくるひめちー。


「はぁ……」


"おい、ひめちー?やばいんじゃないのか?!ほんとに"

"ひ、ヒールを"

"そうだよひめちー。回復させないと"


「ひ、ヒール!」


そう言ってくるひめちーだが。


【ヒールは使用できません。対象がいません】


当然の表示。

ヒールは怪我をしている人間がいないと効果が出ない。

そしてこの場に怪我をしている人間はいない。


でもひめちー達は俺が怪我をしていると思っている。


「え?!なんで?!」


驚いているひめちー。

コメント欄も加速した。


"え?!対象ならそこにいるじゃん!"

"なんで?!なんで?!"


俺はそこでかすれ声を出しながらひめちーの顔を見てこう言った。


「俺は議会のジジイ共に呪われている。その呪いは、"癒されてはならない"という呪いだ。だから回復魔法が使えない」


そしてゆっくりと右手を伸ばしてひめちーの頬に触れた。


「そん、な顔をするな。サード」


そのときだった。


ドライツェーン:サード。弔ってやってくれ。ヌルはもうだめだ


相棒が俺の配信を見ていたらしくコメントしてきた。


「で、でも?!」


ドライツェーン:【邪封眼】の使用制限は知っているだろう?


「知らないよ?!」


"なんだ?!使用制限って"


ドライツェーン:【邪封眼】は本来一度しか使えない呪われた魔眼だ。だがヌルは特別な精神構造をしておりその制限を無視して何度か使用出来る。しかしダメージはそのまま受けるんだ



「そ、そんなに危険な能力だったの?!」


"あんなに強い魔眼だもんな。制限も納得出来るけど"


俺は力を入れて起き上がるフリをする。

本当は普通に起き上がれるんだけど少しでも弱っているように見せる。


フラフラしながら口を開く。


カメラとひめちーの死角になった瞬間、例のケチャップ袋を取りだして口の中に含んで。


「かはっ!」


カメラに映るようにして吐き出した。


"吐血?"

"え?まじかよ。口から血を吐いたぞ?!"


バタリ。

また倒れた。


そのときだった。

同接に目が入った。


視聴者50万人になっていた。


"え?なにこれ?"

"今どういう状況?"

"急展開すぎて誰も理解出来てないよ"

"きゅ、救急車は?!"

"ダンジョンに救急車くんのか?!"

"じゃあどこに通報すんだよ?!"

"マジでやばいだろこれ"

"設定とか言ってる場合じゃないんじゃないのか?!"


「ちょ、ちょっと?!ヌル?!大丈夫?!」


さっきみたいに俺の頭を太ももに乗せてくれるひめちーに声をかける。


「そんな顔をするなサード」


俺はダンジョンの天井に向けて手を伸ばした。


「ただ俺の墓所はここだったというだけだろう」

「墓所?!そんなわけないよね?!」


ダラり。

俺は天井に向けた手を下に落としてそのまま。


ガクり。

全身から力を抜いてその場にぐったりとした。


「え?ぬ、ヌル?」


グラグラ。

俺の体を揺すってくるひめちー。


俺は何も話さない。


"え?死んだの?"

"まじ死に?"

"これ、大丈夫なの?サイト的に"

"BANされそうだな"


俺はそのコメント欄を見ながらニヤニヤしていた。

この後復活すれば盛り上がるだろうなぁとか思いながら。


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