第6話 コラボ開始

翌日。

俺はサードに指定された場所までやってきた。


そこに向かうとすでに待ち人はいた。


「あっ、きた」


俺の顔を見て手を振ってくる。

それから名乗ってきた。


「姫川 あいりです。今日はよろしくね」

「なるほど。俺は桜井。桜井と呼べばいい」

「うん。分かった」


軽く自己紹介が終わってから俺は話題を振ることにした。


「よくここまで(ラグナロク以降)ひとりで生き延びてくれたな」

「え?(ミノタウロスのことかな?)あ、うん。それくらい問題ないよ」


そう答えてくれた姫川を俺は頼もしく思う。


さすが【ブラックナイツ・サーティーン】のメンバーだ。


ちなみに略称はブラナイだ。


ということでこれからはブラナイでいこう。


「で今日はこれからどうするわけ?」


そう聞いてみると姫川は答えてきた。


「その、いっしょにダンジョンに行きたいんだけど、だめかな?」

「ダンジョンにか。まぁいいだろう。あそこには原初の……」

「あーはいはい」


俺の説明をどうやら聞く気がないようである。


おっといつもの癖で話そうとしていたな。


「そうだもんな。お前もブラナイのメンバーだからダンジョンのことくらい知ってるよな」


そう言いながら俺は姫川を促すことにした。

さっさとダンジョンに行こう。


そうしてダンジョンに来てから姫川は俺の端末で姫川の端末の画面が見れるようにしてくれた。


ちなみにカメラはドローンが担当してくれるので両手は自由だ。


「だが、なぜ俺の画面で配信を見れるようにしたんだ?」

「もしかしたら桜井くんについても質問があるかもしれないから。見れるようにしとくよ」

「ふむ。まぁいいだろう」


俺が戦っている敵対組織【チェイサー】についての情報も手に入るかもしれないし。こういうのもいいだろう。


そうしていると姫川が話しかけてきた。


「あ、配信中私のことはひめちーって呼んで」

「俺のことはヌルでいい」

「ヌル?うん」


そうして俺たちはとりあえずお互いの呼び名を伝えあった。


それから


「じゃあ配信スタートするね」


そう言ってひめちーは配信を始めた。


「どもー。配信していくねー」


そうして始まったひめちーの配信。

俺の画面でもコメントがどんどん更新されていく。


"待ってた"

"ひめちーーーー"

"うぉぉぉぉぉぉ!!!"


このコメントを見ていると分かることがある。


どうやらひめちーはかなり人気のある配信者ということらしい。

それから俺のことを説明してくれる。


「というわけでコラボすることにしました」


「ふっ。それもまた世界の選択というわけだな」


俺がそう言ってるとひめちーもこう続けたきた。


「そうそう!それもまた世界の選択!」


するとコメント欄も続いた。


"そうそう。世界も選んだんだよな"

"何を選んだのかは分からんけどそうだわ"

"世界が選んだのだ"


「そうだ。そしてここに集ったやつらは世界の選択が分かる選ばれた人間というわけだな」


"世界の選択ってなに?"


(くくく、それはいい質問かもしれないな。いいだろう答えてやろう)


「その質問に答える前にまずは話すことがあるな」


俺の前世の名前はラインハルト。


帝国いちの剣の腕を持ち……。


ということを説明してやった。


"マジで?前世ってほんとにあったんだ"

"信じるなよ。嘘に決まってるだろ。そういう設定なんだって"


スっ。

俺はそこでとあるものを取り出した。


「これは前世。俺が帝国の剣聖をしていた時、亡き妻が俺に送った結婚指輪である」


"また厨二くさい指輪出してきたなぁwww"

"贈り物でそんなジャキジャキのチャラチャラ指輪は送らんでしょwwwしかもそれが結婚指輪www"

"妻も厨二病なんやろwww"


どうやら信じていないようであるので言っておいてやろう。


「俺の事を厨二病だとかなんとかいうのは勝手だが俺は厨二病ではない」


"好きな飲み物は?"


「コーヒー。むろんブラック以外は飲まない」


"あっ……"

"ほんものですやん"


そうやってコメント欄の選ばれし奴らと会話していたときだった。


ひめちーがコメント欄に話しかけてきた。


「あ、あの私への質問とかはないの?」


"またあとでね"

"今こっちの方が面白そうだし"


俺はそのコメントを見て少し顔を歪めた。


「あんまりとやかく言うのは好きでは無いから黙っていたが遊びではないのだぞ?それにそろそろ招かれざる客人の到着するというのが俺の本能が告げている」


俺がそう言った3秒後。


プルルルルルル。


予備の電話が鳴った。


あいつは俺が着信が欲しいタイミングで発信してくれるな。


「ヤー」

『ヌル。悪い報告だ』

「ファック。続きを話せ」


俺は顔を歪めながらスピーカーモードにした。

これで配信にも黒木の声が乗るだろう。


『先行部隊のワンのやつがやられた』


カシャン。

俺は自然に手からスマホを滑り落とした。


ガシャン。ガシャン。


"え?どゆこと?"

"てかこいつスマホ何台持っとるんや?"

"林檎と泥の2台持ちは当たり前勢でもこんな持っとるやつはあんま見ないよな"

"破壊用と使用用と予備用とけっこう必要そう"


スマホを拾い直して話を続ける。


「ワンがやられただと?相手は?」

『チェイサーの特殊部隊【ブラッディドッグ】。気をつけろ。その先で待ち受けているだろう。狙いはお前だ』


ピッ。


通話が切れた。


「ヌル?ヌル?」


ひめちーが俺を呼んでくるけど他のことを考えていたせいで反応が遅れた。


「すまない。他のことを考えていた」


俺はひめちーの目を見て。


クルッ。


ダンジョンの先を見つめた。


「すまない。ここでお別れだひめちー。これ以上一般人である君を巻き込めない!」


ダッ。


走り出した。


「ちょ、ちょっとぉぉぉぉ?!!!急に何?!」


ひめちーもうしろから走り出してきた。

どうやら俺を追いかけているらしい。


"ちょ、ひめちーが振り回されとるwww"

"ちょっとは自重しろwww"

"厨二病は止まれないんだよ"

"誰の配信だ?これ"

"そりゃひめちーさんの配信よ"

"なお、肝心のひめちーは眼帯男の背中を追っかけてるだけの模様"

"これ実質配信乗っ取られてるやん"

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