第5話 これで明日のコーデもばっちりだ
翌日。
俺は学校に特別に登校することになった。
机を挟んで教師とむかいあう。
「えーっと桜井。話を聞きたいんだが。お前はドラゴンの襲来を予想していたよな?」
ピクリ。
俺は答える。
「はて、俺は予想していませんが」
「嘘をつけ。べちゃくちゃなんか言っていたと聞いたが」
それを聞いて俺は笑った。
「ふふふ、くくく、あははは」
「なにがおかしいんだ?」
「いえ、それを聞いてしまえばもう戻れなくなりますよ、そう思ってね。覚悟はできていますか?闇に追われる覚悟は、できていますか?」
先生の顔をジーッと見つめた。
「あれは20年前のこと」
「お前生まれてないだろ」
「あなたがたの常識ではね。20年前俺はこの世界に飛ばされてきた。その時の名前は」
俺がそうやって話そうとしていたら
「まともに話す気がないなら帰っていいぞ」
「分かりました。帰ります」
「お、おい?!」
そう聞いてくる先生に言う。
「これ以上民間人を巻き込めないんです。許して欲しい」
俺はそう言って出ていった。
そして扉を閉めながらこう言った。
「今はまだなにも話せないんです。だがじきに話せる時がくるはずです」
「今話せ!」
◇
そのまま屋上に向かうとそこには黒木がいた。
「奇遇だな黒木。お前も古傷がうずいたか?」
とは言ってみるがここで会うことを約束していただけだ。
「あぁ。ヤツらにやられた右目がうずくんだ」
「友よ。復讐の日は近いぞ。裁きの日。その日に地球上の全ては死に絶えるであろう」
そう言いながら黒木の横に立つと黒木にこう言われた。
「ところでお前ひめちーになんて言われたん?」
「ひめちー?あー。サードのことか」
俺はあのあと送ってきたDMのことを話すことにした。
「
言いかけた時黒木が発狂した。
「うがぁぁぁああぁぁぁぁあぁぁ!!!!!」
「なっ?!どうした?!組織の制裁か?!議会のジジイ共ついに黒木にまで?!」
「ちがわい!」
そう言って俺を見てくる黒木。
「ひめちーとコラボするのが羨ましいんだよ!美少女配信者のひめちーとコラボなんて羨ましすぎるぞこのやろー」
(ん?こいつどうした?急に様子が)
「俺も連れてけ!俺もひめちーに会いてぇよ!!!」
「無理だ。あいつがサードに化けている可能性もあるからな。ここで【ブラックナイツ・サーティーン】のメンバーがふたり行くのは危険というものであろう」
「そうかよ。まぁ楽しんでこいよ」
ガックリ。
そう言ってその場で肩を落とすと座り込んだ黒木。
「おのれ……組織のやつら。ドライツェーンの位置を把握して精神攻撃を?!」
こうしてはおれん。
「そこで待っていろドライツェーン。俺が組織を叩き潰す!」
ガシャン!
バッ!
屋上の落下防止のフェンスを飛び越えて俺はそのまま学校を出ていくことにした。
コラボは明日だ。
いつでも激しい戦闘ができるようにしておかねばな。
(ふっ。これが世界の選択と言うんだな)
そうして俺は休みなのでデパートに向かうことにした。
明日はサードと何百年ぶりに会うことになる。
おめかしのひとつやふたつしないといけない。
そうして俺は服屋にきた。
中に入ろうとして自動ドアに近付いてみたが。
ドアが開かない。
「貴様も俺を阻むのか?人類の叡智よ。それが世界の選択だと言うのか……メーデー。メーデー」
スマホを取りだして黒木に電話をかけるがでない。
「シット!」
そうしていたら
「桜井くん?」
俺に話しかけてくる女の子がいた。
そっちに目をやると。
「柊か」
「ドアの前でなにしてるの?」
「このドアが俺を阻むのだ。俺は今人生最大の危機を前にしている」
そう言うと彼女はドアに触れた。
ガーッ。
開くドア。
「ちゃんと触った?」
俺は斜め下を見た。
「ほんとうは全ての物を抱きしめてやりたいんだが……そうするには俺の力が強すぎる」
そう言ってみると柊は俺の右手を掴んだ。
「なにしてるのか知らないけど服見に来たんじゃないの?一緒に見ようよ」
そう言う柊に俺は店の中に連れ込まれた。
考えてみれば女の子とふたりでこういう店にくるのは初めてだったが、俺はこのていどのイベントでオドオドしたりせん。
「昨日はありがと。いつも意味わかんないこと言ってるけど、ちゃんとしてくれるとこはちゃんとしてくれて安心したよ」
そう言ってくる柊。
それから俺を見てきてこう聞いてきた。
「招かれざる客とか言ってたしジュースも零してたけどあれ知っててやったことなの?」
「その質問に答えるためには前世の話からする必要がある。だがそれをしてしまえば柊は俺と一生を共にすることになるぞ」
「いや絶対ないでしょ」
「聞きたくないのであれば答えられんな」
俺はそう言いながら男物の方に歩いていった。
そうして並んでる服を見ながら「はっ」とか「ふっ」とかいつものようにやりながら。
「こ、これは……」
とあるものを見つけてそれに見に行った。
「なに?」
柊も横から覗き込んできた服を見せつける。
ガイコツが中指を2本立ててムンクみたいに叫んでるイラストのシャツ。
頭には矢が刺さって血が流れてる。
「これにしよう。裁きの日は近いことを暗示しているアーティファクト」
「やめといた方がいいと思う」
そう言われて俺は断念した。
一般人にはやはりアーティファクトの圧は強すぎるようだし。
「なら柊女史。俺になにか適当にみつろってくれ」
「う、うん」
そう言いながら俺は柊に着せ替え人形みたいにされながら服を着替えた。
そうして俺は初めての女子との買い物を終えた。
寮に向かって帰る頃には夕暮れに近くなっていた。
その帰り道だった。
「あ、あの」
改まって柊が俺に話しかけてきた。
「なに?」
「そ、その……」
俺の顔を見てきて。
頭を下げながらこう言ってきた。
「わ、私と付き合ってくれませんか?」
「顔を上げるといい」
とりあえず顔をあげさせた。
その顔は期待半分、悲しみ半分みたいな。
「別にいいけど」
「ほ、ほんとに?!」
喜ぶ柊に答える。
「柊はちょうど150人目の花嫁ということになる」
「あー、うん」
なんか微妙な顔をしている柊。
どうやら信じていないようだが、人間のレベルじゃ俺を理解できないだろうな。
そう思いながら俺は寮へ向かっていった。
途中で柊と別れた。
「じゃあ、また月曜日。学校でね」
そう言って嬉しそうに笑って柊は寮に戻っていく。
俺も寮へ戻ることにした。
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