第3話 なにもしてないのに登録者増えた

学校にドラゴンが来たせいで今日の授業は終わりとなった。


警察や各機関を呼んでなぜドラゴンが現れたのかを調査するらしい。


そのせいで俺は校外にいた。

そして眼帯をして歩いてた。


学校の外にいる時は基本的に眼帯をしてる。

俺の【邪封眼】は見たものを殺してしまうからな。


「くっ……この忌々しい目が……」

「お前のつらさはよく分かるよ」


黒木が同情してくれている。


「俺はこの眼を持ってしまったせいであの子を……」

「お前の悲惨な過去を今こそ話してくれないか?桜井」

「いや、今は話すべきではないだろう」


そんな会話をしていたらうしろから声をかけられた。


「あ、あの桜井くん?」


振り向くとそこには。

俺の隣の席の女の子だった。


名前は……覚えてない。

組織のメンバーの名前を覚えるのに忙しい俺には表世界の人間の名前まで覚える余裕は無い。


「どうした?」

「教室で話してたこと当たってたね。未来予知かなにかなの?あれは」

「組織からの情報だよ。組織は間違えることがないからな。基本的に言われたことは100%当たるのさ」

「組織?」


そう聞かれて口を滑らしたことに気付いた。


俺は背中を見せて答える。


「すまない。答えられない。忘れてくれ。君まで危険な目にあうことになる」


俺といる人物は組織に狙われてしまう。

だから……俺からはなにも言えない。


そうして歩いていこうとすると横に並んでくる女子生徒。


「これからどこに行くの?」

「サイゼ」

「あ、サイゼ行くんだ。私も行っていい?」


そう言われて女の子に目をやった。


「組織から目をつけられても知らないぞ?」


そう忠告してから俺はサイゼに向かった。


サイゼに入って注文する。


「エスカルゴのオーブン焼き漆黒の闇風で」


黒木が声をかけてくる。


「その注文はやめておけ。お前が"あっち側"だとバレる」

「そうだったな」


俺は店員さんに言い直す。


「エスカルゴのオーブン焼きとプチフォッカ、ドリンクバー。それからペペロンチーノ大盛りとミラノ風ドリア。それから平日限定のランチセット2つ」

「そんなに食べれるんですか?」

「くっくっく……エスカルゴとプチフォッカ以外は招かれざる客向けの注文ですよ。ふふふ。見ての通り俺は少食ですよ」


店員さんの顔が青ざめた。


招かれざる客の存在がやはり恐ろしいようだ。

そのまま注文を聞いてとっとっとっと走っていった。


そこで俺は女子生徒に目を向けた。

未だに名前も知らないからそろそろ聞いておこう。


「えーっと、名前を聞いておこうか。招かれた客人よ」

「知らないの?!隣の席なのに?!」


そう驚いてから名乗ってきた。


「柊 みゆ」

「ふん」


鼻で笑って続ける。


「いい名前だな」

「いい名前なんだ」


それから俺はスマホを見て。


「ふん(嘲笑)」とか「はっ(呆れ)」とか「おのれ!(怒り)」とか言ってた。


そうしてニュースとかを見ているとこんな記事があった。



【凶悪犯が逃亡中】

犯人はナイフを所持して逃走中です。気をつけてください。




そのとき、料理が運ばれてきた。


(ドリンク入れに行くか)


コーラとサイダーを混ぜて【ブラックポーション】を作成して俺は席に戻っていった。


そしてエスカルゴに手を付けようとしたとき。


「あっ」


ドリンクに手が当たってコトっと倒れて


バシャァ。

床にドリンクがぶちまけられてしまった。


「これが世界の選択なのか……」

「なに意味の分からないこと言ってるの?桜井くん」


呆れたような顔で俺を見てくる柊に答える。


「いずれ分かる時が来るさ。君にも世界の選択というものが。俺がここでドリンクを零したことにも意味がある」


そのとき。

カランカラン。


男が入ってきた。

男だと分かったのは体格だ。


かなりでかい。


そいつは「いらっしゃいませ」という店員の言葉も無視して歩いて中に入ると柊さんに目をやった。


そして、そのまま。

スっ。


ポケットからナイフを取りだしたとき


「あ、あれ。逃走中の凶悪犯よ!」


客が騒ぎ出した。


「騒ぐな!殺すぞ!」


男はそう言いながら柊に手を伸ばす。

しかし。

柊と男の間には俺がさっき零したドリンク溜まりが存在しており。


「なんだここは滑るぞ?!」


つるっ!

ドタッ!

男が盛大に背中からこけた。


「これが世界の選択なのさ」


男に近寄って俺は近くにあった椅子を手に取ると男の顔面を殴りつけた。


「ぐあっ!いでぇ!やめてくれ!」


その場に四つん這いになって身を守る男だったが、俺はそのまま椅子で叩きつけ続けた。


シーン。


ピクッピクッ。

気を失ったようだった。


そこで俺はスマホで警察に通報した。


それから黒木に目をやる。


「サツが来やがる。ズラかるぞ。俺たち闇の住人にできるのはここまでだ」

「そうだな、相棒」


俺は柊さんに目をやった。


「またな柊。こんな俺に話しかけてくれてうれしかったよ」


そう言いながら財布から取り出した金を押し付ける。


「払っておいてくれ」

「え、え?」


とまどっている柊を置いて俺はサイゼを出ていこうとしたのだが店員に引き止められた。


さっき俺の注文を聞いた店員だった。


「招かれざる客というのはこれのことだったんですね。それとジュースをこぼしたのはわざとだったんですね。お見事ですお客様」


(いや、違うんだが。まぁいいか)


俺は頷いて答えた。


「そうだ。これが招かれざる客で、すべて見えていた。そう。これが世界の選択ということだ」


そう答えて俺はサイゼを今度こそ出ていった。


その背中から


「今日のお代はけっこうです」


という言葉が聞こえたので俺は柊に渡した金を回収してから外に出た。


ついでに次回以降使える金券ももらってしまった。


残った食事も急いで持ち帰り用のパックに詰めてもらった。


ちなみにいつもなら黒木と二人でがんばって注文したぶんは食べてる。




寮に帰ると寮母がいた。


ちなみにこの寮母だがウチの学校の女子生徒がバイトとして行うことが出来る。


そして今の寮母は生徒会長の白石。

なかなか人懐っこい人だ。


「お帰りなさい桜井くん」


そう言われて俺は手に持っていたものを見せた。


「暗黒騎士が調理した日替わりランチだ。必要だろうか?」

「いらないかなー」


そう言われて俺はガサッと袋を下げる。

これは晩御飯にでもしようと思う。


「ねぇ、桜井くん。ところで昨日はなにしてたの?」


そう聞いてくる生徒会長に答える。


「昨日は静寂に浸ってた。生徒会長もどうだ?」

「私はいいかなー?あは、あはは」


そう答えて生徒会長は寮母の待機部屋に向かっていった。

ちなみにここの寮母だが割と楽だ。


時給の割に仕事がほとんどないので割と人気がある。


そんなことを思い出しながら俺は靴を脱いで部屋に向かおうとすると。


「おい桜井」


黒木に声をかけられて振り向く。


スマホを見せられた。


「我ら【ブラックナイツ・サーティーン】の公式チャンネルの登録者が少し増えてるぞ」


そう言われて黒木のスマホをひったくって画面を見てみると。



†【ブラックナイツ・サーティーン】†

チャンネル登録者数:100人


となっていた。


(ちょっと前に見たときは0人だった気がするんだが)


万年0人の俺達の公式チャンネルの登録者数がなぜか増えていた。


ちなみにアップロードしている動画は1本だ。



【メンバー紹介動画】


これの再生数が0で心折れてそれから投稿してないのだが。


「なんで増えてるんだろうな?ひょっとして、組織に見つかったか?それとも他のメンバーが俺とコンタクトを取りたがってる?」


今日の予定を変更してもいいかもな。


「今日の夜は配信でもしてみるか」


団員が接触してくるかもしれないからな。




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