第2話 時と場所を考えろ
翌日。
通常通りに学校に登校しようとしていた。
俺は寮暮らしだ。
そして黒木も同じく寮暮らしである。
まず髪の毛の寝癖を取りそのままペターっと寝かせる。
目元まで隠れるくらい少し長めの前髪。
これが俺の髪型だ。
「どこにでもいるような人畜無害の陰キャの完成だな」
それを確認して制服に着替えていると。
コンコン。
「迎えに来たぞー。桜井」
俺の部屋をノックしながらそう声をかけてくるのは黒木だった。
ちょうど準備も終わったことだし部屋から出るとすぐ目の前には黒木の姿。
「おはよう。桜井。眠れたか?」
「まぁね」
そんな会話をしながら俺は玄関に向かいそのまま寮を出ていく。
この寮は大きめの建物の中に個人の部屋があるような感じの寮だ。
そんな寮を出ながら俺は黒木に話しかける。
「なぁ、黒木。組織の出方はどうだ?」
「向こうも手を出せないようだが。昨日【青の悪魔】を倒したばかりだからな。お前の【邪封眼】を改めて見てビビっているのだろう」
その言葉を聞いて考える。
「ならもう少し日常を楽しめそうだ」
「そうだな。今はこのなんでもない日常を楽しもうぜ。俺たちにはもう経験できないこの毎日を」
そう言いながら道を歩いていると。
バン!
後ろから走ってきた誰かにかばんで後頭部を殴られた。
「ギャハハハ!おっはー桜井くーん!じゃあなー!ノロマー!」
そう言って俺の横を通って行ったのは山口だった。
金髪で頭の悪そうな男だった。
「お、おい大丈夫か?桜井」
声をかけてくる黒木に答える。
「いや、気にするな。これもいいカモフラージュになるだろう」
俺がこうして日常生活を送っていることを【チェイサー】に気づかれては周りに危害が及ぶかもしれない。
だから
「山口はあれでいいよ。こんないじめられてるような俺があの【ブラックナイツ・サーティーン】のヌルだとは誰も思わんだろう?」
「桜井……」
「心配するな」
山口も俺という人間を隠すために必要なのだ。
だが
「必要なくなればあいつには消えてもらう。つかの間の平穏ってやつさ」
・
・
・
3時間目の授業が始まった。
俺の席はいちばんうしろの窓側の席だ。
(ふふっ……風が気持ちいいな)
そよそよと吹いてくる風に髪がなびく。
俺はこういう平和な時間がけっこう好きだった。普段はこうやって心を休める時間なんてないからな。
「先生。トイレに行ってきます」
授業の途中だったが黒木がトイレに向かった。
それからしばらくして。
ブーッ。
ブーッ。
ポケットにいれていたスマホが振動した。
スっ。
俺のスマホの振動に気付いたのか隣の女の子が見ていた。
(ちっ……気付かれたか……まぁいい)
そう思いながらも俺はカーテンを手に取ると、他の人たちから見えないようにそれで壁を作ってその中でスマホを取りだして画面を見た。
(黒木?)
そう思いながらも俺は電話に出た。
「どうした?」
『ヌル。やばいぞ』
「なにが?」
『ま、まさか。ここが選ばれるなんて……』
ワナワナと震えているのが電話越しに伝わってきた。
ゴクリ。
息を飲みながら俺は聞き返す。
「選ばれたのか?」
『あぁ。ヤツらこの学校を実験の場所に選びやがった。知ってるだろ?俺の【千里眼】は。それが教えてくれるんだよ。この地にドラゴンが舞い降りるってな。それも、エンシェントドラゴンだ』
「なんだと?!」
俺はつい叫んでしまった。
(しまった!)
気付いたときには遅い。
「誰と話してるんだ?桜井?」
ツカツカツカ。
先生が歩いてきた。
俺は急いでスマホをポケットに隠しながら先生に口を開いた。
「と、とりみだしてしまいすみません」
「授業中に通話とはいい度胸だな?スマホを出しなさい」
「スマホは使用していません」
ここでスマホを取り上げられるとまずい。
俺のこれからの生活に支障が出るからだ。
とにかく誤魔化さないと。
「自分は今妖精と会話していました。その妖精が言うのです。この地は選ばれた、と」
俺はクラスメイトに向かって口を開いた。
「みんなも早く逃げるんだ。この地は選ばれたんだ」
そう言うと山口が笑い出した。
「やばっこいつ。受けるわ。おもろ」
だがここで引き下がるわけにはいかない。
「ほんとうなんだ!血と悲鳴が入り混じる地獄にここは変わる!」
俺がそう言った瞬間だった。
「ギャオォォオォォォォォォォォォ!!!!!!!」
ドラゴンの叫び声が聞こえてきた。
俺が窓の外に目をやると。
「う、うそだろ……」
先生が困惑していた。
俺たちの視線の先にはドラゴンがいたからだ。
バサッ!
バサッ!
バサッ!
降りてくるエンシェントドラゴンを見て俺は声をかける。
「よう。久しぶりだな【古代伝説】またの名を【黄昏の英雄】。そんな姿になっちまって。かわいそうに」
「ギャオォォオォォォォォォォォォ!!!!」
吠えているドラゴン。
それを見て先生がやっと動きだした。
「と、とにかく避難しなさい!早く!避難を!」
「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁああ!!!!」」
「「きゃぁぁぁぁぁああぁぁあ!!!!」」
そんな悲鳴をあげながら生徒は走り出そうとしていた。
「聞いてねぇぞ?!ドラゴン?!」
山口も逃げていった。
(しょせんは一般人か)
最後に残ったのは俺と先生だったが。
「桜井!なにしてる!逃げるぞ!」
そう言ってくる先生に答える。
「先生、俺とあいつには因縁があるんです」
「な、何を意味の分からないことを言っている!ほらいくぞ!」
掴まれた手をはねのけた。
「覚悟は決めている。それにこれは俺がやらねばならないことなんですよ。【漆黒の堕天使】である俺が」
ガッ。
窓についている落下防止の手すりを掴んで俺は窓から飛び降りた。
「桜井!何階だと思ってるんだ?!4階だぞ!」
そんな声が聞こえてくる中俺は校庭に着地。
そこでやっと俺を見つめてくるエンシェントドラゴン。
ギロッ。
「探してるのは俺だろ?」
そう言いながら俺は右手を右目に持って行って手のひらで一瞬目を隠しながらカラコンを入れて。
それから俺はドラゴンに目を見せた。
「これだけは使いたくなかったんだが。【邪封眼】で相手するぜドラゴン」
俺はそう言いながらこの前青の悪魔を倒したようにドラゴンの内部の血液を一気に沸騰させた。
すると。
パーン!!!!
同じように内側から破裂した。
「はぁ……はぁ……」
ペタリ。
その場にしりをつけて座り込んだ。
そうしながらポケットから棒状のお菓子を取り出して人差し指と中指で挟みながらタバコみたいに口でくわえた。
チューっ。
すパーッ。
「ふぅ……まさか。組織のヤツらここまでしてくるとはな……手段を選んでられないのか」
俺はそう呟きながら立ち上がって校舎の方に向かうことにした。
スマホは取り上げられることは無かった。
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