第1.5話 【姫川視点】どういうこと?

~姫川 あいり視点


「行っちゃった」


私はつぶやいた。


男の子ふたりが走っていった方向を見つめることしかできなかった。


そうしながらコメント欄に目を戻す。


"え?やばくね?"

"てか、じゃふうがんってなに?"

"魔法?"

"ミノタウロスが内側からふきとんだぞ?"

"どういうこと?"


コメント欄が一気に更新されていた。


"ひめちー今のなんなの?"


その質問に私、姫川 あいりは答えた。


「え?わ、分かんないよ私に聞かれても。あの子たちに聞いてよ」


いちばん困惑しているのは私だ。


つい先程までダンジョン攻略に来ていて、そこに突如乱入してきたミノタウロス。


もう少しでやられそうになっていたのに、そこにさっそうとふたり組の男の子が現れた。


そしてそのひとりが勝手にミノタウロスを倒して私を回復させてどこかへ行ってしまった。


そうそう


「あの人目から血を流してたよ」


"まさか目から血を流すことを代償にあの強力な魔法を発動させたのか?"

"そうじゃないのか?"

"聞いたことあるわ。代償魔法だっけ?代償を払ってより強い魔法を発動させるもの"

"初めて見たなぁ。そんな上級魔法"


「私も初めて見たよー」


あんなすごい魔法を見たのは生まれて初めてだ。


「痛くないのかな?あれ」


"そりゃ痛いでしょwww"

"てか意味の分からんことペラペラ話してたけどなんなんだろうな?あれ"

"ヤヴォールってなにwww"

"ドイツ語で了解だぞ"

"うわぁwww今どき厨二病発症してる?www"

"しかもコッテコテwww"

"いや。そうとも言いきれないんじゃないか?"


「厨二病じゃないの?あの人?」


今どき珍しいとは思うけど。


"あんなコテコテの厨二病もういないでしょ。それよりは実際にあの通話通りのことが起きてるって思ってもいいんじゃない?あの男の子どっかの組織に飼われてるのかも。目から血も流してたし"

"あー。ありえなくはないよね。ダンジョンが現れてから世界情勢も変わったもんね。秘密組織とかもあるのかも"

"そういえばあの子見たことあるかも。【チェイサー】がどうとかこーとか言ってたよ。「俺は追われてる」とかブツクサ言ってたよ"

"え?マジで追われてるの?"

"目から血を流しながらあんなすごい魔法を使うもんなぁ。本当に追われてるんじゃないのか?"


と、その時だった。


ザー。

ブツっ。


「ありゃっ?」


配信画面がフリーズしてしまった。


「おーい?聞こえてるー?」


そう呼びかけても反応は帰ってこない。


これは……


「まさか、あの子たちの関係してる組織からの干渉?」


これ以上深く関わるなという意思表示なのだろうか?


ブルっ。

身震いしてしまう。


「私大変なことに巻き込まれちゃった?」

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