第5話 交渉は喫茶店で
「では前金1000万成功報酬8000万でお願いします」
「そんだけの金なら多少の無茶はさせてもらう。お前の妄言が本当だとしてこちらが成功した時の金はあるんだな?」
「こちらの画面を見ていただければ」
「本当のようだな・・・お互いの事は不干渉でいいよな?俺もその金の出どころは知りたくない」
「はい・・・あまり大きな声では言えないので現金にして所定の位置に置かせてもらいます。」
「じゃあ前金をいただこうか」
「こちらです」
「おい確認しろ」
喫茶店のマスターが不安そうにこちらを見ているが許してもらうとしよう。
「確かに1000万ちょうどあります。全て本物です」
「おう・・・車に詰めとけや」
「はい」
「ではお願いします」
「分かった。だがお互いこれ以降の干渉は無しだ・・・指示通りこちらは動くだけ結果も全て報告しない。はっきり言えばこちらの事情を全て見通した上で大した要求をしないお前の得体の知れなさが怖いよ」
「私も何がなんだか・・・」
「じゃあ7月6日、7月7日は手筈通り動かせてもらう」
「よろしくお願いします。お会計はこちらで持たせてもらいます」
「いやいい貸し借りは無しにしよう」
「そうですか」
「じゃあな」
「では」
物騒な雰囲気が終わりマスターがホっとしたような顔をしてコーヒーを作ってくれる
「いやマスターすいませんね」
「サカモトさんも意外と凄い交友関係だねぇ・・・」
「もう連れてこないよマスター。俺も汗だくだく」
「俺には何が何だかわかんないよ」
「まあいろいろあってね・・・」
時は遡り7月2日13時
「情報はこんなもんか・・・」
・不法滞在の嬢、大麻などの栽培販売場所など
・主要幹部の連絡先、現住所
・資金
・警察の捜査進展についての情報
「俺に交渉できるのか・・・?」
「頑張れよサカモト」
「お気楽だなぁ・・・」
「時間が無いが情報は全てそろってるならリーダーでいいんじゃないか?」
サカモトは現在の情報で手札は揃ってると考えリーダー各であるモガミをターゲットとして、電話をすることにした。
「さすがに緊張するなタバコ一本吸ってからだな」
タバコが美味いと感じ今日は絶好調だと確信するサカモト。
いつだったかバイト先で貰った苦手な微糖のコーヒーを飲み目を覚ます。
「よし・・・やるか」
電話を鳴らしながらパソコンをジョンから借り情報を見ながら話していくことにする
「誰だ?何故この電話にかけれた?」
「は、初めまして・・・えーっと・・・」
「名前なんてなんでもいい早く答えろ」
威圧感がとんでもないこちらの腰が引けている事を悟ると、より高圧的な態度でやってくるため言葉が詰まってしまう。
「あなたに仕事をお願いしたいんですが・・・」
「は?それで俺の番号を調べ上げたってのか?お前俺が誰か分かってんのか?」
「ライダーズのモガミさんですよね?・・・えーっとリーダーの」
「話だけ聞いてやる」
「す。すいません」
「謝らなくていいから早く要件を言え」
「とあるカルト教団を武力的につぶしてもらえませんか?報酬は9000万お支払いします。更に警察のあなた方の捜査進展具合も教えることが可能です」
「・・・正気か?お前がどういう人間か知らんが支払い能力があることは俺の番号を調べた時点で多少は信用できるが、何故警察の情報まで?」
「えーっと、まあ友達が・・・あはは・・・」
「あはは・・・じゃねえだろ舐めてんのか?」
「いえ!すいません!」
目の前にいるでもないのにペコペコと頭を下げ続けるサカモトをジョンはいつもの通り「頑張れよサカモト」と言いながらそこらへんにあったお菓子を食べていた。
「報酬は魅力的だが、その教団は何て名前だ」
「無貌教団です」
「聞いたこともねえな」
「構成が100人も満たないですが記憶を全員消されてますので社会的立場はほぼありません」
「殺してもいいって言いてえのか?」
「・・・そうなります」
「お前大人しそうな割に以外とヒデエ奴だな」
「何とかしないと不味いんです」
「ちなみにだがコレを断ったらどうなる?」
「あなた方の商売ルートなどを全て警察にバラします」
「・・・断らせる気は無いようだな」
「こっちも必死なんです」
「じゃあ聞くがその集団を殺して何がしたい?」
「7月7日に儀式が行われます。それを止めないと不味いんです」
「お前の妄言で100人が・・・まあいいか」
「受けてくれるんですか?」
「まあ・・・先に警察の進展情報を精査させてもらってからだな」
「今あなたのメールアドレスに送りました」
「早いな・・・全て想定通りか?」
「い、いえそんなことは・・・」
お互いがお互いを信用しないまま会話が過ぎていく。進展情報をモガミに渡してなんとかなってくれと祈るサカモト。
「お前本当に何者だ?今日のガサ入れ情報あんじゃねえか」
「私はそういうの詳しくないので・・・」
「こんなことありえねえが信用してみるぞ。今日の16時らしいからそれが本当だったかどうかで仕事を考えさせてもらう」
「よ、よろしくお願いします」
「18時に連絡をくれ。じゃあな」
ツーツー
「あー怖かった」
「心拍数がすごかったぞサカモト」
「そうかよ・・・あんな怖い人種に関わることなんて無いと思ってたよ」
「サカモト腹が減ったぞ」
「出前でも頼むか・・・」
自分へのご褒美という事で給料日にしか食べないラーメンの出前を頼むことにした。
「えーっと特製醤油ラーメン2つで」
暫く待っていると出前がきたようでジョンが匂いにつられ見に来た。
お金を払い終え2人で黙々と食べていると通知音が
「美味しそうだなサカモト」
「猫!?なんで俺らの事分かってんだ?」
「お前の携帯とpcは絶対にハッキングできないからそれ以外をハッキングしたんだ。お前のインターフォンの警備会社をハッキングしてみているんだ」
「お前プライベートって言葉知っているか?」
「そんなもんハッカーやクラッカーには無いのと同義だ」
「泣きたくなってきた」
「これで聞こえるだろう?その同居人がスマフォとかに色々やっているのか?」
「インターフォンから直接喋んのかよ・・・」
我ながら変な事態に巻き込まれている事を再度自覚した。
「神にハッカーに半グレか・・・俺を何故こんなことに・・・神よ・・・」
「神と戦う人間が神に縋るなサカモト」
「そ、そうだよな」
「美味いから早く食べようサカモト」
「そだな・・・」
再度食べ始め食べ終えるとお腹いっぱいになり満足になった2人。
「大盛りを食べないとは若々しさが無いぞサカモト」
「何!?サカモト・・・次からは大盛りにしてくれ」
「分かったよ・・・何でこんな目に」
「それより猫なんかいい案はないか?」
「私はハッキングの事以外はサッパリだ。画面越し以外では喋れないし近くにコンビニぐらいしか行けないし電車すら乗れないぞ私は」
「お前いくつだよ・・・」
「今年で26だ」
「俺の2個上かよ・・・」
「年上の女性になんて口の利き方だサカモト」
「うるせー!こっちはこの後半グレと交渉するんだストレスを貯めさせるな」
「面白いなサカモトは」
「はぁ・・・つらすぎる」
「頑張れよサカモト」
「お前・・・本当・・・はぁ・・・」
有能なはずの味方がポンコツばかりという事に気づき、せめて半グレの方々はまともで合ってくれと願うサカモト
時間が過ぎ約束の18時になった。
タバコを吸い終え電話をかける前に何かに祈り気合を入れ電話をかける。
「も、もしもし」
「お前お手柄だったぞちゃんとガサ入れに来て危うく一つのビジネスがおしまいになる所だった。本当に何者だ?」
「お互い干渉は無しにしませんか?」
「分かった・・・こっちもハッキングやら何やらで情報バラまかれたら終わりだ。それにこの情報があれば教団を集団でやっちまえば俺らの仕業とはバレないだろう」
「すいませんねえ」
「明日どこかで合わないか?客の顔見ずにってのはアレでな・・・」
「私に何かする気ですか・・・?」
「いやそれは無い」
「万が一として何かがあった場合自動的に情報を警察にリークするようにしてもらうので何かするというのは無しでお願いします」
「大丈夫だ安心しろ」
「場所は高田馬場のフォースリーでどうですか?喫茶店です」
「分かった。13時でどうだ?俺は金髪だ」
「あそこなら目立ちますね」
「そうか じゃあ明日な」
場面は冒頭に戻り商談は無事成功した。
「これで大丈夫なはずだが・・・俺に出来ることは何かあるか?」
「タバコでも吸って落ち着くか」
「7月3日2時のニュース番組エキスポです」
「2時か・・・」
ライターでタバコに火をつけ考えごとをする。
・物理的な破壊で終わらせることはできるのか?
・単純すぎるが故に強力な作戦であることに違いはない
何度考えてもこれと言った考えが思い浮かばない。
ふと気になった事をジョン宛に送ってみた。
「何故俺は過去に戻れるんだ?」
「サカモトに行っただろう過去に送る機械があると」
「そのエネルギーとかはいらないのか?」
「そこについては私も疑問なのだが何故か都合よく一回分残っていたんだ。全て使ったはずだったんだがそこについては分からない」
「なるほどな一回分を何度も繰り返してるから時間が戻れば毎回一回分がぴったりってわけね」
「サカモトの部屋からの電気量ではとても無理だ」
「やめてくれ電気代がとんでもなくなる」
「ハハハサカモトは世界より金を気にするのだな」
「まあ電気関係については大丈夫だろう一回分あれば」
「まあ一回分あるわけだし大丈夫だろう。サカモトのボタンもあるわけだしな」
「最悪な状況になってもこれがあれば大丈夫だろう」
「じゃあそろそろ家に戻るよジョン」
「待ってるぞサカモト。美味い物を買ってきてくれ」
おねだりを受け予算内で何を買おうか迷っているサカモトだったが適当でいいかと思いマスターに挨拶をして店を後にした。
「人間は本当におもしろいな・・・次は何をするかな?」
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