第3話 役者は舞台へ

「~~という訳で我々無貌教団はですね・・・聞いてます?」

「ああ聞いてますよ。素晴らしい活動ですね」

「そういえば何故興味を持ったんです?」

「SNSのアカウントを見させてもらって、こんな事あんのか?と思って聞いた次第です。はい。」

「そうですね。信者以外は信じられないかもしれませんが、近々本当に我々の儀式が完成し世の中が良くなるのです。善良な人間だけが残るのです」

「どんな風に?」

「我々の神が降臨するのです。きっと素晴らしい光景がこの世に訪れますよ」

(何が素晴らしいだ。正確には終わりだろ)

どうした物かと考え質問を少しの時間で考える。


「教義として生贄だのなんだのは合ったりするんですかね?」

「生贄ではありませんが、神を呼ぶ際に我々全員が犠牲となりますのでそういう意味では、全員ですかね?」

(笑顔で何を言ってるんだこいつ・・・)

「い、嫌じゃないんですか?自分が死ぬとか」

「それですべての方が救われるなら本望です」

(手に負えない・・・)

「他の方もそういった思考なんですか?」

「ええもちろん!我々の教団では入信する際にマインドを変えてもらえるため、古い自分という物はないのです」

「つまり過去も人格も捨てたと?記憶はあるんですか?」

「何もありません。人のために動くだけです」

ニャルラトホテプとやらの仕業と勘繰るも得体が知れぬ恐怖にゾッとする。

黒服たちを説得するのは不可能と考えるサカモト


「幹部の方々たちもそう言った事はされてるのですか?」

「幹部などという役職はありません。全てが平等です」

「そうですか・・・古株の方とお話がしたいのですが」

「一応明確に古い方ならいらっしゃいます。正確にはその方が所謂教祖となっていますね」

「ぜひお会いしたい」

「こちらもお会いしていただきたくお呼びしてあります。」

「なっ・・・お話を聞かせていただくだけですよね?」

「もちろんです」


「お待たせしましたコーヒーです」

「!?」

「ど、どうかされました?」

「い、いえ」

サカモトは自分のような一般人が踏み入ってはいけない領域に着てることを悟り、ウェイトレスに驚いてしまうも平静さを装った。

氷のカランとした音で深く深呼吸をし、リラックスする形で座り直す。


「それで後どのぐらいで?」

「今駅前だそうです」

(やけに早いな?近くにいたのか?相手は化物たちだ用心しよう)

「そうですか」

静かな時間が過ぎ教祖を待つしかないサカモト。


「す、少しタバコを吸ってきてもいいですか?喫煙所があちらにあるので」

「ああ、気が利かず申し訳ないです」

「いえ・・・申し訳ないですが来られたらお待ちいただくようお願いいたします」

「ええ、ごゆっくり」


喫煙所へ向かい中に入りラッキーストライクを加え火をつけ電話で・・・名前が分からない謎のアイツに電話をかける。

「もしもし?」

「おお、どうだ。そこで電話をかけるのは初めての行動だぞサカモト」

「時間が無い。教団のリーダーに対しての記憶はあるか?」

「特段聞いていない。今から会うのだろう?今回が恐らく初めてだ」

「分かったよ・・・ちなみに名前は何だ?」

「・・・ジョン・ドゥとでも言っておこう。名前など無いのでな」

「OK。ジョンと呼ぼう」

今まで吸ったタバコの中で一番熱が入る。タバコを綺麗に吸い切り灰皿に捨てて喫煙所を出るサカモト。録音をオンにして席に戻る。


喫煙所からの曲がり角を曲がったその瞬間席には女性が見えた。

ただ何かがおかしい見てはいけない何かを直視し脳の奥まで何か大事な物を握られている感覚になる。とにかく逃げなくては!と体が強張るも頭では話を聞こうという冷静な考えが響き渡る。

一種のパニック状態になると女性がこちらを振り向いた。


「どうかされましたか?」

見た目は絶世の美女だ。

だがおかしい。

ハザマはどう見ても40は超えてるのに対して18やそこらと思えるような少女が古株。

頭がパニックになり声が出ない。

後ろずさるとウェイトレスに当たってしまう。


「きゃっ!大丈夫ですか?お召し物汚れてないといいのですが」

「・・・はっ!はあっ!はあっ!・・・だ、大丈夫です」

間違いなくウェイトレスに当たっていなければ正気を保てなかっただろう。


「あ、ああ なんでもないです。」

「そうですか。それは良かった」

「サカモトさんどうかされたんですか?」

「女性に免疫がない物で・・・お恥ずかしい」

「ふふふ。ありがとうございます」

席に着き美女から話を聞くことに。


「私はツノモチといいます。ハザマさんと同じ同志です。」

「サカモトです。よろしくお願いします」

「ハザマさんからお話は聞いていると思いますが、まだ何か?」

「ええ、入信した時に行われる儀式のようなものでどうやって記憶を消すのかをお聞かせ願いたい。」

「それは教えられません。どうですか?教団に入れば全てわかりますが」

(金でどうだ・・・)


「献金をこの後一千万ほど行う予定ですが、どうでしょうか?」

「まあ素敵ですね」

「そうでしょう?お教え願えれば・・・どうでしょう?」

「ええそれでしたら・・・と言いたい所ですが、何も分からないというのが本当の所なのです。こちらも全て一人で部屋に入らせて部屋から出てきたらすべてが終わっているのです。」

「・・・不明という事ですか」

「そうなのです。申し訳ありません。」

とりつく島も無く静寂がテーブルを囲む。


「ではサカモトさん私は教団に戻ります。どうかご自愛ください」

「ま、待ってくれ」

「はい?」

「7月7日の儀式をやめろ」

「・・・どこでそれを?ハザマですか?」

「わ、私は何も言ってません。本当です」

「ハザマあなたは異教の神に仕える者でしたか」

「本当です!信じてください!」

「本当だ。ハザマさんは関係ないぞ」

「・・・そうですか。良かったですハザマさん。疑ってごめんなさい」

「い、いえ・・・」

「平等が聞いて呆れるな」

「ふふふ。躾るのも古株の仕事ですので」

嫌な汗が顔をこちらに向けられただけで滝のように流れ出る。


「あら 汗がひどいですよ。こちらをお使いください」

サカモトにナプキンを差し伸べサカモトが受け取ろうとすると手首をつかまれた。


「離せ!」

「どこまで知っているんですか?」

「は、離してくれ!」

「人が来ちゃいますよ?」

「・・・」

「良かったです。これでお話してくれますね」

「・・・」

「お教えください。7月7日に何をどうするのですか?私たちは」

「・・・」

今すぐボタンを押して戻りたい。だが反応をうかがわなければ


「ア、アザトースを召喚するんだろ?逆に聞くが何故そんなことをする?」

今までの冷めた空気が凍り付いたのが分かった。


「・・・そうですかご存じ何ですね」

「・・・」

「・・・ですがご安心ください。あなたが何をしても儀式は止まりません」

「・・・」

「・・・あなたに出来るのは異教の神に祈りながら無意味に死ぬだけです」

「・・・」

「・・・では失礼します。ハザマさん行きましょうか」

「はい」

「お会計は・・・まあ短い命のあなたが払ってくれるでしょう」


カランコロン

「ありがとうございましたー!」


ただ空気に圧倒され、何も言えず縮こまってしまった。

このやり方はダメだ。絶対にこの日はここに来てはいけない。


「お、お客様?大丈夫ですか?」

「・・・!はあっ!はあっ!はあっ!」

息をするのを忘れていたようで倒れこむように机に突っ伏してしまう。

水をもらい息を整え。まずは体と思考を落ち着かせる。


「・・・どうするんだ?これ詰んでないか?」

窓の外をトラックが通り過ぎて行きよからぬ考えが頭に浮かぶ。


「トラックで突っ込むか・・・?」

最終手段として考えて置く程度にとどめ次は何をするか考え込む。


とりあえずお会計をして家に戻る事にしたサカモトは電車に揺られ家に帰った。



「ただいま」

「サカモトお帰り」

「もうかなり詰んでる状態だ」

「だろうな。だが私は直接の協力は一切しないからな」

「知っているよ」

「そうか。よかった」

「とりあえず飯でも食うか」

「私にも作ってくれ」

「分かったよ」

先ほどの事をいったん忘れ料理をするサカモト。


「とりあえず教団は殺すか壊滅させるかしかないな」

「まあ決めつけず色々考えるんだな」

ご飯を食べ一時の休息に入る2人であった。



「ガキだな無理だろう」

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