第11話 (先輩/姉との)キス


「俺と千桜先輩が……会ったことがある?」


 まったく記憶がない。子供のころの話だとしても、こんな燃えるような赤毛の美少女がいたら、覚えているはずだ。


 千桜先輩は寂しそうに笑った。


「その頃のわたしは髪を染めていたから。母は、わたしの父とは別の男の愛人になって、その家でわたしも育ったの。その家は……それこそ羽城の家と同じぐらい身分の高い家だったわ」


 羽城と同じ、ということは五侯家、あるいはそれに準ずる高位の家だ。

 それに、千桜先輩の父が誰なのかも気になる。


 もしかすると、五侯家の当主の誰かなのかもしれないし、それが千桜先輩が羽城の養女となった理由かもしれない。


「思い出せなくてすみません。でも、いつ、どこで俺は先輩に会ったんでしょう……?」


「教えてあげない」


「な、なんでですか?」


「だって、わたしだけが覚えているなんて、ひどいじゃない。君が自分で思い出すまで内緒♪」


 からかうように千桜先輩は言う。そして、俺の頬をそっと撫でた。

 俺は自分の顔が熱くなるのを感じる。


「あはは、照れてる……! 可愛いな、もうっ」


 そう言って、先輩が俺の頬をぷにぷにしだしたので、うろたえる。


「や、やめてくださいよ……」


「さっきわたしの胸を触ったくせに」


「そ、それは先輩が挑発するから……!」


「気持ちよかったんでしょう? 童貞くん?」


「そういう先輩も処女のくせに」


「なっ……! こ、これでも、わたしモテるんだからね? 学校では毎日のように告白されているし……」


 先輩が顔を赤らめて早口で言う。俺は呆れて先輩を見つめた。


「でも、付き合ったことはないんですか?」


「そうね。男の人と手をつないだこともなければ、キスしたこともないし……セックスだってしたことない」


 あけすけな言い方に、今度は俺がうろたえる。からかっているのかと思ったが、先輩の表情はいつになく真面目だった。


「先輩なら、相手は選び放題でしょう?」


「あ、わたしが超絶美少女で性格も良くてモテモテって認めてくれるんだ?」


「そこまでは言ってませんけど……まあ、可愛いですし、美少女なのは事実だとは思いますし」


「ふふっ、『可愛い』『美少女』か……」


 にまにまと先輩が嬉しそうに笑う。俺に褒められたことがそんなに嬉しいんだろうか。

 先輩は突然、俺の首に腕を回し、そして、ぎゅっと俺に抱きついた。


 柔らかい大きな胸の感触が、俺の胸板に当てられる。


「せ、先輩!?」


「わたしね、好きな人がいるの。だから、誰とも付き合ってない」


 どきりとする。先輩の好きな相手。

 誰だろう……?


 いや、誰だろうと、俺には関係ないはずなのだけれど。

 なぜか胸がざわつく。先輩の甘い匂いで、俺は冷静さを失っていた。


「先輩の好きな人って誰ですか?」


 俺は聞いてしまった。先輩は青い瞳で俺を見つめ返す。


「ここまでしてもわからない?」


「え?」


「目をつぶっていて」


 先輩の言葉に、俺は素直に従ってしまう。

 そして、次の瞬間、俺の唇に少し湿った、柔らかい感触がした。


 それは甘い果実のようで……。


 この日、俺は千桜先輩とキスをした。姉とキスしたのだとは、このときの俺は知らなかったのだ。





<あとがき>

これから明かされる千桜先輩の秘密とますます過激なアプローチをお楽しみください! 愛華と志帆たちのエッチな反撃も……!


面白い、千桜先輩の秘密を知りたい、愛華たちとのエッチなシーンも見たい! と思っていただけましたら、


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