第7話 ロシア系美少女の胸を触る
魔女。呪われた存在。
たしかに、赤髪碧眼の美少女は、魔女に見えるかもしれない。しかし、千桜先輩が魔女だというのは、どういう意味なのか?
「赤毛はケルト系の魔女の象徴だからね。わたしはケルト系ではないけど」
千桜先輩は言う。俺は気になっていたことを尋ねてみることにした。
「千桜先輩って、その……ご両親は……」
「ああ、生まれのこと? 母はいわゆる白系ロシア人――ロシア革命のときにヴォルガ地方から日本に亡命したロシア人の子孫なの」
「へえ……」
「父はいないわ」
「え?」
「いわゆる私生児ってやつね。わたしの父は、とっても大金持ちだったから、母を愛人にして妊娠させて捨てたの」
千桜先輩は淡々と告げる。
俺は言葉を失った。
俺は恵まれた境遇で育ったと思う。両親の羽城智人、羽城文香は学生時代に知り合った仲良し夫婦だ。いわゆる政略結婚ではあったらしいが、羽城家の令嬢だった母は、婿養子となる智人に夢中で、ラブラブだったとか。
それは今も変わらない。母の文香は美人で優しくて真面目な人で、いつも父と俺のことを考えてくれている。
「わたしの母の名前……千桜アナスタシアといえば、聞いたことがあるんじゃない?」
その名前を聞いて、はっとした。そうだ。千桜という名字をどこかで聞いたことがあると思ったら、千桜アナスタシアといえば、世界的に有名なピアニストだ。
ショパン国際ピアノコンクールやエリザベート王妃国際音楽コンクールで華々しい成績を挙げ、ウィーン・フィルでも演奏。
その神秘的な美貌と若さでも注目を集め、CDもものすごく売れている。
たしか国籍は日本だが、ロシア系だと聞いたことがある。
一応、俺は一時はピアノに本格的に取り組んでいた身だ。名前を聞いたときに思い出せなかったのが悔やまれる。
ただ、千桜家は名門ではない。五侯家どころか、まったくの庶民だ。
なら、なぜ父の羽城智人は、マリヤを養女にしたのか?
俺はわからないことだらけだった。それは志帆も同じみたいだ。
志帆も、そんなに恵まれた生まれではない。「実家に捨てられた」と自嘲するように言っていたことがある。羽城の屋敷に来る前は、虐待も受けていたらしい。
それでも、志帆の実家は羽城の系譜に連なる旧家だ。千桜先輩とは、条件が違う。
「ま、そんなことはどうでもいいじゃない。父が誰であろうが、母が誰であろうが、わたしはわたしなんだから。」
その言葉を聞いて、俺はまじまじと千桜先輩を見つめた。
千桜先輩は小首をかしげた。
「わたし、なにかおかしなことを言った?」
「いえ……」
ふうん、と千桜先輩はつぶやくと、「あっ」と声を上げた。
「君も同じだよ、弟くん。名門の生まれじゃなくても、羽城家の後継者でなくても、君は君。そうでしょ?」
その言葉は、今の俺が一番欲しいものだった。常に羽城の後継者として評価されるのは、とても……重荷だから。
千桜先輩はそっと俺の頬に手を伸ばした。ひんやりとした小さな手が、俺の肌を撫でる。
「なんだかとっても疲れているのね、弟くん」
「そう見えますか……?」
「そうそう。わたしが癒やしてあげる」
千桜先輩が優しくほほえみ、耳元でささやいた。
これから、この美少女と一緒のベッドで寝起きするのか……。悪くないかもしれない、と俺は思い始めていた。
だけど、それを許さない人間が一人いた。
「だ、ダメ! そんなのハレンチだもん」
志帆が顔を赤くして、抗議する。千桜先輩はくすりと笑う。
「なら、あなたが代わりになる? 勇人くんと、一緒のベッドで寝る?」
「そ、それは……兄さんには愛華さんがいるから」
「そんなこと言いながら、本当は勇人くんと寝たいんじゃない?」
「ね、寝るって、その、そんな……」
「添い寝するって意味だけど。何を想像したの?」
千桜先輩は面白そうに志帆を見つめる。完全に志帆は手玉に取られてしまっている。
志帆はむっと頬を膨らませた。
「ともかく、兄さんを癒やすのは、愛華さんとあたしの役目だから、あなたの出番なんてない」
「ふうん。でも、愛華もあなたも、勇人くんに甘えるばかりで、癒やしてあげられていないでしょう?」
「そ、そんなことない……!」
「そうかしら? 」
千桜先輩は、突然、俺の右手を握ると、強引に自分の左の胸へと重ねた。
俺の右手が、千桜先輩の手と大きな胸に挟まれる形になる。
「せ、先輩!? こ、これはまずいのでは……」
「呼び方は『先輩』、じゃなくて、『お姉ちゃん』でしょ?」
「い、いや、そういう問題じゃなくて……」
「お姉ちゃんが癒やしてあげる。ただ、それだけ。それとも、嫌な気分になった?」
嫌な気分はしないけれど……。
制服のブラウス越しに、質感のある柔らかな感触がする。
俺は、自分の身体に熱がこもるのを感じた。
な、なんて凶暴なものを持っているんだ……。さすがロシア系美少女……。
スタイル抜群だとは思っていたけれど、実際に触ってみると、その胸の豊かさを実感する。
愛華も胸が大きい方だけれど、二つ年上だからか千桜先輩の方がかなり大きい気がする。
といっても、愛華がハグしたり腕を組んだりして胸を押し当ててきたことはあっても、直接触ったことはない。
初めての経験に、俺は完全に理性を奪われていた。
先輩は可愛いものを見つめるように俺を見つめると、その赤い唇をそっと俺の顔に近づける。
キスされるのかと思い、どきりとしたがさすがに違った。
耳元で先輩はささやく。
「さて、わたしと一緒のベッドで寝たいでしょう?」
<あとがき>
千桜先輩の真意は……? ますます積極的なアプローチ! そろそろお風呂回&愛華たちの反撃も……!
面白い、続きが気になる、千桜先輩との風呂場でのイチャイチャを見たいと思っていただけましたら
・☆☆☆→★★★
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