4話 親父の再婚相手の連れ子が二番目に可愛い女子とその妹でした

 拝啓、昨日の僕へ。

 昨日の僕はこんなこと信じられないかもしれないけど、僕こと雨宮春希には、十七歳になって家族が一人増えます。ビックリだよね。だって親父、何も言わないんだからさ。まぁ、頑張れよ俺。敬具。


「さっきから何ブツブツ言ってるんだ? お前」


「いやいや手紙の一つくらい読みたくなるだろ! 何だよこの状況!」


 家に帰ったら急に、『再婚相手の方とご挨拶しよう』とか言うから俺なりの精一杯のオシャレをして来たっていうのに…………


「何でファミレス!?」


 俺たちは、某緑色の看板のファミレスに来ていた。


「何でって……談笑するにはファミレスが一番だろ」


「いやその解釈は間違ってないけどさ!? お相手の方との人生を左右することなんだかさ、もっと高級な店かと思ったよ!?」


 てか、普通そうだよね? 変なのってもしかして親譲りか…………?


「うーんそうなのかぁ……? お相手さんも、『あら良いわね! 私もそこが良いと思ってたのよ〜』とか言ってたから大丈夫だろ」


「分かったけど声真似はキモイからやめてくれ」


 いつもは声真似なんてしないのによっぽどテンション上がってるんだな親父。


「お、今着いたってメッセージがきた。ってことで迎えに行ってくるから好きなもんでも頼んで待っててくれ、春希」


「了解」


 そう言って親父は席を立つ。

 じゃあお言葉に甘えて好きな物でも頼んでおくか。ドリアと、辛くないけど辛いってメニュー名に入ってるチキンと、ドリンクバーもいるな。いや、三人ならピザとかの方がいいのか? あ、好き嫌いとかアレルギーとかも考えると……ダメだ。


「最近はあんまり気にしてなかったから分からないな…………」


 色々考えながらメニューを眺めていたら、親父と、その少し後ろに、流れるようにサラサラな黒いロングヘアーを持つ、若めの女性がやってきた。


「春希くん、お待たせしたわね。春希くんのお父さんと再婚させていただく予定の────坂下さかした美幸みゆきです」


「あ、父から話は伺っております! というかさっき聞きました。父がいつもお世話になっております。雨宮春希です」


「あら〜凄い良い子ね。秋生さんが言ってたのと全然違うじゃないの〜」


 おい親父。俺のことなんて言ったんだよ…………


「今はちゃんとしてるけどドンドンボロが出てくるから」


「おい、親がそう言うこと言うもんじゃないだろ!?」


「あらあら。二人は仲が良いのね〜」


「どこをどう見てそう思ったんですか!?」


「雰囲気とかかな〜? 私の娘たちは全然仲良くしてくれないのよね〜」


「そうなんですね」


 少し喋ってみて分かったのが、おっとりとしているなぁということだ。でも、美幸さんは名前の通り美しいし、幸せそうな感じもする。悪い人じゃ無さそうだから良いお義母さんになりそうだ。親父とも合いそうだし……………………ん?


「み、美幸さん……今なんて?」


「あら〜お義母さんでもいいのよ〜?」


「それはまぁ追々…………じゃなくて!! 娘がとか言いましたよね!? しかも娘って!?」


「言ったわね〜。あら? 秋生さん、伝えてなかったの?」


「春希に言うタイミングがなくて…………って痛い痛い」


「ほ、ん、と、う、は?」


「ごめんなさいサプライズの方がいいかなって思いました」


 そんなことだろうと思ったわ。


「まぁしょうがない……それで、娘さんたちと言うのは…………」


「待たせたわね」


「お待たせしました」


 俺が美幸さんに娘さんたちのことについて聞こうとしたその時、後ろから二つの声がした。後ろを振り向くとそこにいたのは二人の美少女だった。

 一人は、ちょうど肩くらいの長さがある、ツヤツヤで美しいセミロングの黒髪を持った美少女だ。しかもかなりの。

 というか…………うん、どっからどう見ても…………


「ってえぇ!? もしかして…………春希くんっ!?」


「やっぱり俺のこと知ってることは、ウチの学校で二番目の美少女って言われてる同じクラスの坂下美帆さんだよね!?」


「二番目は余計よ!」


「ごめん! 俺が言ってるわけじゃなくて学校の男子たちが……」


「それは知ってるわ。春希くんは優しいの知ってるし」


 あ、やっぱり坂下さんなんだ…………じゃなくてさ!? 何年も恋していた学校一の美少女と付き合えたと思ったら、次の日には学校で二番目の美少女と義理の姉弟になるとかどこのラノベだよ!? いや、これは夢だ! 夢に違いない!


「坂下さん、ほっぺつねってくれ! 思いっきりだ!」


「良いけど……本気で行くわよ?」


「どんとこいや!」


「えぃ」


「痛ァァァァァァァァァァ」


 やっぱ夢じゃなかったみたいだ。

 本気でやれとは言ったけど坂下さん、握力強すぎだろ!?


「何だぁ。二人は知り合いなのかぁ。なら話が早い」


「早くねぇわこのバカ親父!! 姉妹できるなら言って欲しかったし、相手女子高生なんだから余計にだよ!! 俺へのサプライズよりも相手の子に気を遣えよ!?」


「いや、混乱してるけど私は大丈夫。だけど…………なんでママも教えてくれないのよ!!」


 あ、坂下さんママ呼びなんだ。いつもクールっぽいけど可愛いところあるじゃん。


「あら〜言わなかったかしら?」


「再婚するとしか言ってないわよ!!」


「あの〜…………一旦座って落ち着きませんか? 周りの方のご迷惑にもなるので……」


 そう切り出したのは、坂下さんの隣にいたもう一人の美少女だ。茶髪のツインテールで、坂下さんのクールな印象とは対照的に、可愛らしい雰囲気がある。


「君は?」


「お姉ちゃんの一個下の妹の坂下さかした彩美あやみです。えっと…………春希さんはいつもお姉ちゃんが、秋生さんはいつもお母さんがお世話になってます」


「お〜! 君が彩美ちゃんか。聞いてた通りの良い子だね〜」


「ありがとうございます!」


 え? この子、もしかして状況飲み込めてる感じ……? 凄いな。

 とりあえず俺たちは雨宮家族と坂下家族に分かれて座る。


「えっと……じゃあ改めて雨宮春希です」


「父の秋生です」


「えーっと…………坂下美帆です。春希くんとはクラスメイトで、仲良くさせてもらってます」


「坂下彩美でーす。お姉ちゃんとは別の学校なので……春希さんとは初めましてです」


「この二人の母の美幸で〜す」


 何この彼女の家族と初顔合わせみたいな感じ!? 気っまず!!


「それで…………親父と美幸さんはいつ再婚するんですか?」


「えっとな……明日、籍を入れにいこうと思ってる」


「「「いや急展開すぎない(ませんか)!?」」」


「そう思ったんだけどね〜。明日は春希くんと美帆は学校の創立記念日でお休みで今週は三連休じゃない? だから明日がいいと思ってね〜」


「じゃあ…………家はどうするのよ?」


「あーそれはな美帆ちゃん。ウチ、空き部屋多いからウチに引っ越してもらうことにしたんだ。嫌かな?」


「い、いえ! だ、大丈夫です!」


 これは坂下さんが可哀想だな……拒否権ないみたいなもんじゃないか。


「それで…………いつ引っ越しを?」


「明日から明明後日にかけてよ〜」


「「「いや急展開すぎない(ませんか)!?」」」


 ん…………? ってことは、坂下さんたちと同じ屋根の下に住むってコト!? そうだよね!?


 こうして俺────雨宮春希は、学校一の美少女の彼氏になったけど、学校で二番目に可愛い美少女と同居することになりました。


 何言ってんだコイツとか絶対言われそうだけど安心しろ、俺にも分からん…………

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