すべてはこのスマホから生まれた

 私はもともと、スマホと脳みその二つだけで創作をしていた。中学では朝読書というものがあり、紙本を読む専門だった。しかし、様々なストーリーを味わっていく中で、これとこれをこう組み合わせたらさらに面白くなりそう、というような妄想をするようになった。その思考がだんだん広がっていって、自分で物語を思い浮かべる方へと変化していった。初めて文字に起こしたのは中三の冬だったが、あまりの難しさに、たった数千文字で断念した。

 受験が終わってすぐの三月下旬、私はついにスマホを手に入れた。とりあえずTwitter、Instagram、そして小説を書くためのアプリをインストールした。早速書き始めた作品が「Diary」というものである。こちらも途中で断念してしまったが、時が経ってから、題を変えて、かつ結末などを再構成してアップした。

 一番最初に書き上げた作品は「あなたが泣くから私は笑う」だった。2020年の10月頃、パッと思い浮かんだものを数時間でひと息に完成させた。これはかつてアップしたが、元々の完成からはかなり変えられている。時事的なテーマかつ私的な内容だったためだ。

 翌年の4月に書き上げたものが、2作目の「大切なあなたに」だった。当初は題の候補が二つあり、正式には決めていなかったのだが、思い切って公開した時に内容を変更し、それに合わせて題も決めた。

 だいたいこれと同じ頃、「君のとなりで僕は」という長編に取り組んでいた。これは新たな設定を加えたため「雨が降れば街は輝く」に変わった。1年半ほどかけて完成させたが、そのあとの推敲にものすごく手間がかかった。シーンの順序を入れ替えたり、新たな描写を追加したり、あるいは消したり……。

 その他の短編たちは基本的に「思いついた時に書く」ようにしているのだが、アイデアだけが溜まっていって執筆が追いつかない時もあれば、何も思い浮かばず何も書けない時もある。ただ、私はたいてい自分の経験を元に物語を作るので、まさか現実には起こらないファンタジーを書く方々の想像力には頭が下がる。

 初投稿は「雪が降る日の午後8時」だったが、実は「ロベリア・シンドローム」が先に完成していた。後者はもともと何かの公募に出すつもりだったので、ネットで上げるわけにはいかなかった。しかし、気分が変わってノリと勢いのままに上げてしまったのである。私が物事を始める時はほぼ「ノリと勢い」である。これさえあれば何でもできる。続くかどうかは未知数だが。

 そして、続々と数千文字程度の作品を完成させていった。

 今はパソコンを使って執筆することが多いが、手軽にメモできるスマホは必須アイテムである。いわばネタ帳のようなものだ。つまり、私が書くものは全て脳とスマホによって生み出されていると言ってもいい。


 書くようになってから、小説に限らず、ドラマや映画など、観るだけではもったいないと考えるようになった。

 なぜ人は物語を作るのか。

 この問いの答えは無数にあるだろうが、また理由なんかないという方も多くいらっしゃるだろうが、表現の取捨選択には、自覚の有る無しに関わらず、理由が伴うだろう。それらをただ受け取るだけでなく、どんな意味が込められているのか考えてこそ、「読む」や「観る」といったことではなかろうか。私は、ただの消費者にはなりたくない。

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