第一章 夜会での日常③
しかし、どうやらそれは思い
まるで私に押されたと言われんばかりの動きである。
「何をしている、レティシア」
「……
「お兄様、殿下……」
(うわぁ、出た。できれば関わりたくない面倒な人達……)
キャサリンの背後から、茶番劇に役者が二人登場した。
その
「キャサリン、
「お兄様、私なら平気ですわ」
(長丁場にするのは勝手ですけれど、時間の
「レティシア、何をした」
「お兄様、レティシアは悪くありませんわ。……私の言い方が悪かったかと」
(お姉様、会話のキャッチボールってご存じで? 一応私に聞いたと思いますけど)
キャサリンは作り上げた自分の苦労が伝わるように、押されるまでの
「キャサリン嬢、間違いや
「あぁ。それを認めない方に問題がある」
「
(
しかしこれに関してはカルセインの場合、
今でこそ父について私達
母は家の中だと父にしか
私が生まれる前のことは知らないが、気が付いた
キャサリンが兄にどう取り入ったかは不明だが、私の悪評は姉二人と母の悪影響を受けて育ったから、と言えば
「でも、私の言い方がきつかったのは事実ですから……本当にごめんなさい、レティシア」
(そう思うのならば
「キャサリン、相手にするだけ無駄だ。
「お兄様いけません。私はレティシアの姉ですよ? 見捨てるだなんて」
(お兄様の意見に賛成です)
「それでもだ」
「お兄様……」
「……取り
(殿下グッジョブ。役に立つこともあるんですね)
エドモンド殿下の一言に納得する素振りを見せたキャサリンは、二人に連れられてその場を後にした。
私に残ったのはいつも通り、周囲による
(……そう言えば喉渇いたんだった)
ようやく茶番劇から解放された私は、視線を気にせず飲み物を取りに向かった。
毎度
(……あれ? 緑茶みたいなものがある)
飲み物が置かれる場所にひときわ目立つ存在が。緑の
セシティスタ王国には紅茶はあっても、緑茶は存在しないのだ。今までは他国から輸入もしていなかった。前世ゆかりのものに再会した気分になり、気持ちは高ぶった。
(飲もう!)
迷わず手に取ると、一口飲んでみる。口の中に広がるのは覚えのある味だった。
(……
その味は前世の
緑茶を
「
レディ。そのような言葉をかけてもらったことなどない私は、自分のことだと思わず
「おや、お気に召しませんでしたか」
(これが家でも飲めたらなぁ)
「レディ?」
(茶葉は探せば売っているんだろうけど、自立に備えて貯金をしないといけないし、今の
「……失礼しますレディ」
(……?)
「……私のこと、ですか?」
「はい。周囲に
「あ……」
言われるがまま
「これは失礼いたしました」
声をかけてきた男性はとても端整な顔立ちで、何かはわからないが彼の存在自体が
(……なんか発光してる?)
「いえ、私の方こそ
キャサリン関係で話しかけられることしかなかったために、目の前の男性を不思議そうに見る。一体何の用だろうと。
「えっと……私になにか」
「我が国の特産品である緑茶を手にしていらしたので、つい声をかけてしまいました」
「あ……そう、でしたか」
なるほど、緑茶の生産地の方か。ということは他国の人であるため、私の悪評は知らないという所だろう。さすがに他国にまで
「セシティスタ王国の方々にとっては、目新しいものでしょうから。好みはわかれるでしょうし、そもそも手に取っていただけないと思っていたので」
「……とても美味しいですよ」
「そうですか、それはよかった」
悪意も侮蔑もない、
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