朝顔②

藤原「そうそう。あきらめの悪い源氏は、槿あさがおきみが斎院の役目を終えて、戻ってくるなり、会いに行くのよ」


和泉「槿あさがおきみと源氏はいとこ関係にありますから。まさか、槿あさがおきみが会ってくれないなんてこと、源氏は思いもしなかったのでしょうけど」


清原「会えなかったの?」


藤原「正確には、会ってもらえなかったって、感じかしら」

和泉「そうですね」


『「人知れず神の許しを待ちし間にここらつれなき世を過ぐすかな」』

(『源氏物語』より)


藤原「源氏にとって、槿あさがおきみは、十七歳という少年の頃から思いを寄せていた人ではあるけれども。という近しい間柄でもあるのだからっていう、源氏の甘えが感じられる歌でしょ。わたしは、あなたのことをずっと待っていたのです、って」


清原「それで。槿あさがおきみの返歌は?」


『「なべて世のあはればかりを問ふからに誓ひしことと神やいさめむ」』

(『源氏物語』より)


和泉「和歌を取り次いだ女官ですら、源氏のことが気の毒に思えるくらい、冷たい内容です」

藤原「神様は、あなたのことを許していないのでしょう? だったら、わたしが許せるわけないでしょ、って」


清原「槿あさがおきみは、かたくなに源氏を拒むのね。源氏相手にそこまで冷たくできる人ってのも、すごいわ」

藤原「でしょう?! 世をときめかす あの光源氏の誘いを断るなんて。なんと、もったいない! って、思う女官もいたそうよ」

清原「いても不思議じゃないでしょうよ」


うんうん、と藤原と清原は、何度も深く頷いた。





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賢子(たかいこ)さんは、語りたい 結音(Yuine) @midsummer-violet

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