第16話 考え直してみるといい機会だった

「何勝手なことしてんのさ!?」


 船長室にてイティも交え手紙を見せると、珍しくニオが声を荒げた。


「せっっっかくボクが色々考えてたのに、目先の金で転んだの!?」

「おっと、それだと語弊があるな。まだ転んでないし、俺が大抵の物より金が好きなのはお前も知ってたろ」


 もはや開き直って反論すると、ニオはそのまま食い入るように迫ってくる。


「煙に巻こうとしても無駄だよ! 君は黙って行動して”ヘタ”を踏んだ! そのせいでこのままだとボクらは道連れだ! 金なんかのせいで台無しだ!」

「ああクソ……わかったよ確かに俺が悪かった! だがお前だって金が欲しい海賊だろ?」

「いいや! ボクは金より自由が欲しい! 自由な海でいつまでも生きていたい!」

「金がありゃ自由だって買えるだろ!」

「物は言いようだね!」


 二人して言い争っているとイティが怒鳴った。


「ええい静まらんか! 争っている場合ではなかろう!」


 珍しくイティに正論を言われてしまい、俺もニオも黙ってしまう。

 こんな機会はなかったので忘れていたが、未熟とはいえ族長だったのだ。


「それにじゃ、少し頭を冷やせばお主たちならこの状況をどう打破し、尚且つ好機だと気づけるはずじゃ」


 打破するのはともかく、好機だと? 腕を組んで考えるが、どうにも頭に血が上ったままだからか浮かんでこない。


「おい、ニオは何か思いついたか」

「結局ボク頼り? 情けないねリーダーさん」

「今度は煽るつもりか? そっちがその気なら、ご自慢の盗んだ船吹き飛ばしてやろうか船長さんよぉ!」

「だから静まるのじゃ! これはフィンを取り戻す好機なのじゃぞ!」


 思わずニオと顔を見合わせた。冷静に考え直し、手紙の内容と浮かんだ事を照らし合わせてみる。


「手紙には囲んでいるとしかねぇな」

「襲ってくるのなら、とっくにやってるよね」

「金を積むってあるが、なんならフルーブデゾーロに行ってちょっとだけイティの指先切ってもらえば財宝が手に入るから冷静に考えたらいらねぇな」

「それに、話し合いの場をエルドラード号で設けるってあるね」

「ついでに、あの船には間地いなくフィンがいるな」


 つまり、


「変に戦わずに乗り込めてフィンを奪って逃げるチャンスだね」

「俺が先にそれを言おうとしたんだぞ」

「残念ながらボクの口の方が早かった」

「俺は少し酒を飲んでたから呂律が回らなかっただけだ」

「君からしたら小娘に言い訳かい? 小さい男だね」

「お前は胸から尻まで小さい女だな」

「それとこれとは今関係な……」


 バン! と三人を囲うテーブルが叩かれた。


「だから静まらんか! こんな状況で下らんことを言い出しおって!」


 再びイティに黙らされてしまった。しかし、交渉ができるなら俺の独壇場ともいえる。

 そこへ、ニオが先に口を開く。


「口先で騙してフィンを取り返すとしようか。こういうのはボクの専売特許だ。任せてくれよ」

「いや俺の出番だろ。何度も口先で修羅場をくぐってきたんだぞ」

「なに? ひがみ?」

「お前の口は確かに俺よりよく回るかもしれないが経験が足りていない」

「だったら君には提督相手に海の知識がない」

「じゃったら二人で挑めばよいじゃろうが!! なんならそこで化かし合いでもして白黒つけてきたらどうじゃ!!」


 いい加減にキレたイティだが、二人で挑むというのは納得だ。

 いくらか俺とニオは頷くと、策を練ることにする。


「フィンを取り返して提督たちから逃げて全員無事にフルーブデゾーロへたどり着く作戦だけど、ボクに考えがある。というか、今浮かんだ」

「そういうのはお前の方が得意だよな。で、俺にはまた無茶ぶりか?」

「いや、今回は二人で無茶することに……ううん、囲まれてるのも考えると、他の乗組員たちにも頑張ってもらうかな」

「まぁグレインたちを出し抜いてフィンを取り戻して、んで全員で逃げるわけだからな。多少の無茶は全員承知だろ」


 と、イティが口をはさむ。今までと違い、訝しむような声音で。


「二兎を追う者は一兎をも得ずというではないか。無謀な欲張りは破滅を招くと思うのじゃが……多少の犠牲はわっちらも覚悟の上じゃ。フィンを取り戻せるとあらば、なおさらの」


 フッ、とニオが不敵に笑った。俺も声を殺して笑う。

 どうやら言い争っていても、俺とニオは同じ穴のムジナのようだ。


「ボクたち海賊は二兎どころか三も四も追うのさ。それで全部手に入れる」

「同意だな。俺だって魔王を倒して富と名声とその他諸々を手に入れてきた。二つじゃ足りなさすぎる」

「流石わかってるね。じゃあ互いに補いあって提督とグレインを騙してフィンを取り返す作戦だけど、君の意見も聞きたいんだ」

「面白そうだ。早速取り掛かるか」


 なんて言葉を交わしていると、イティはポカンとしていた。


「言い争っておったと思ったら、詫びの言葉もなくあっという間に仲直りしおった……なんじゃお主ら、裏で話をつけておったのか?」

「こう言うだろ? 類は友を呼ぶって。利害が一致した友達同士、そう長いこと争わないよ」

「友かどうかはおいておくとして、そういうわけだ。ちゃっちゃと始めるぞ」


 墓穴を掘ったのは俺かもしれない。だが舐めてもらっては困る。

 掘った墓穴に足を取られたふりをして、油断させ近づけさせ、裏をかいてやるのが俺のやり方だ。



――――――

【作者からの心からのお願い】


『完結済みだから安心!』『毎日二話更新を約束!』


 以上は必ず守ります! この作品は"コメディ"を学ぶために書き始めましたので、それを感じられたら以下願いします!


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