第11話 海賊の港

 海賊の港町――レイヴンスカルとやらは、帝国海軍でも簡単には攻め込めないよう切り立った崖と岩山に囲まれていた。


 地続きでもなく、無理やり海に浮かぶ馬鹿でかい岩をくり抜いたような島だ。

 港町というが、これで普段はどうやって物資を補給するのかとニオに聞いたら、それこそ海賊らしく商業船から奪い取ってきた品が売りさばかれて経済が成り立っているらしい。


 まさに海賊が海賊のために造った港町。

 俺とニオを先頭に船員全員を連れて陸に上がると、潮の匂いに交じって酒と汗の混ざる空気に飲まれた。


 そこら中でマスケット銃の発砲音と喧嘩の騒音と売春婦の誘い文句が聞こえてくる。

 清い森で生きてきたエルフたちは顔を引きつらせていた。俺の仲間すら苦笑いだ。


「念のため、イティの守りはしっかりしておけ」

「え、ええ、言われなくてもそうします、はい……」


 五十人のエルフに守られる未熟なイティは、こんな混沌とした町で何か得られるだろうか。

 エルフやサンランページの仲間たちは海賊とうまくやれるだろうか。


 不安に囚われていないのは、ニオだけだった。


「んー! 久しぶりに戻ってきたけどサイコー!」


 ジョッキ片手に早速飲んでいる始末なのだから。


「こんな町のどこがいいんだか」

「わかんない? この汚くも香しい空気と耳に障るけど心地いい騒音の素晴らしさが! まさに海賊の理想郷さ! ボクにとっては生まれてからずっと過ごしてきたから第二の故郷みたいなものだしね!」

「……生まれてからずっとこんなとこに入り浸ってりゃ、普通の女に育たなかったのも納得だ」


 売春婦まがいのことをして俺の仲間を落としたのも大いに納得できるというものだ。

 無茶ぶりされた仕返しに馬鹿にしてやったつもりだが、全く気にかけていない。

 むしろニヒヒと笑って言い返してきた。


「けど決してつまらない人間にもならないよ? 帝国では退屈な仕事ばかりしている奴が多いらしいじゃないか。まさに帝国がレイヴンスカルと同じだったら、そんな退屈な人生を送る人はいなくなるさ。そう思うだろう?」

「悪いが、世の中のバランスって奴の重要性を再認識したところだ」


 言うも、ニオはキャハハと笑うばかり。

 すでに酔っているので、おそらく何を言っても無駄だろう。


「ま、諸君! 一日とはいえ海賊の港を楽しんでくれよ? ボクの顔なじみも大勢いるしさ」

「その顔なじみとやらも海賊だろ、連れていけないのか?」


 しかし、ニオはチッチッチと指を振った。


「顔なじみって言っても、もっと幼かったボクを襲ってきた変態共の事さ。例えばほらあそこ! あの前かがみで暗い顔した奴! よーく覚えてるよ、何年か前に襲ってきたから、”タマ”を握り潰してやったんだ」

「……哀悼の意って言葉、こういう時に使うのかもな。ガキに手を出したら種なしになっちまったんだからよ」

「ボクへの心配はないの?」


 肩を透かして呆れながら返してやった。


「その時もどうせ乗り切ったんだろ? 得意の悪知恵と海賊の腕で」

「大いに正解! タマを握り潰したけどせっかくの服を破かれたから、こっちも全裸にしてやって縛り上げて町中に放り出してやったよ! 「この男、子供に負ける海賊にして玉無し」って立札も地面に刺してやったさ!」

「……心からの哀悼の意」


 この様子じゃしばらく頼りにならなさそうだ。

 船で地図を見ながら話し合った通り、エルフ十人につきサンランページのメンバー二人を護衛につけたメンツに分かれてもらい、ニオが比較的安全と言った酒場へ向かわせた。

――――――

【作者からの心からのお願い】


『完結済みだから安心!』『毎日二話更新を約束!』


 以上は必ず守ります! この作品は"コメディ"を学ぶために書き始めましたので、それを感じられたら以下願いします!


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