第15話 使い
――光の長の……使い?
いつか来るとは思っていたけれど、まさかこんなに早く来るとは思ってもいなかった。
『もう? と思われましたか?』
「え、いや……」
どうやらよっぽど顔に出ていたみたいで、その子はさっきまで笑顔で目を細めていたのに、今は表情が分からないほど……無表情だ。
――え、いきなり……ふんいきが変わった?
あまりにも突然変化に驚きをかくせずにいると……。
『そもそも私たちとあなた方人間とでは時間の流れが違います』
「……」
『私たちは見た目こそ幼いですが、五倍ほど年を取っています。ですのであなた方の感覚で決められたくありません』
この子の言葉には「人間がきらいだ」という感情が見えかくれしていて、かなり口調がきつい。
「ご、ごめんなさい」
正直「私が悪いか」と聞かれると、違うかも知れない。でも、謝らずにはいられないほどの何かを感じた。
『……いえ、すみません。こちらも大人げなかったです』
その子はそう言って頭を下げて謝ったけれど、それでもどことなく感情が見えない。だからこそ、なおさらこわい。
「う、ううん。言う通りだから……」
でも、言っている事は事実だ。
『今回私が出向いたのは長のケガを直していただきたいと思いまして……』
「え、ケガ?」
『……はい』
「でも、どうしてケガなんて……」
――それも長って……一番上の人だよね?
これはあくまで私のイメージだけど、そんな人が好き勝手に外を出歩いているという印象がなく、それこそケガをしようモノならおおさわぎになってしまう。
『ようせいの長は自分の種族のようせいが亡くなった場合。そのたましいをケガとして受けるのです』
「え」
――そんな話、聞いた事がない。
それはもちろん、あの二人からもだ。
『この話を知っているのはようせいでも数少ないですから』
そう言っておだやかな笑顔を見せているけれど……正直、これを信じていいのかも分からない。
『元々わたしたち光の種族は他の種族と違い力も弱い。それでいて長は他の種族と比べて長になって長いのです』
「そ、それじゃあ」
――他の長と比べて多くケガを負っているって事?
「じゃ、じゃあ急がないと!」
『……来ていただけるのですか?』
「うん」
――そんなにケガを負っているのにボーっとなんてしていられないよ。
『では、こちらの方に立ってもらえますか?』
ようせいさんはひざから飛び立つと、私がいるベッドの近くに立つように言う。
「う、うん」
私は素直にその指示に従う様に立ち上がった瞬間――。
『やっぱりここにいやがったか。この裏切り者!』
そんな大きな声と共に男の子がその子に向かって突っ込んできた。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「……え」
『はぁ、全く』
いきなり体ごと突っ込まれ、ようせいさんは『ぐふっ』という言葉と共にその場で気を失ってしまった様だ。
『みやこちゃん! 大丈夫!? 何もされてない?』
「え? え? う、うん」
その後に飛んできた女の子は私を心配してくれたのかすぐに飛んできた。
だけど、一体何が起きたのか全然理解出来なくて、ただ目を白黒させるしかなく、とにかく気を失ったようせいさんと男の子を交互に見ていた。
――え「大丈夫」って? 裏切り者って?
『いたぞ!』
『そこだ!』
『捕えろ!』
何が起きたのか分からず固まっていると、今度は気を失っているようせいさんと似ているようせいが数人現れてなわでしばっている。
『大丈夫?』
「え、うん。大丈夫……だけど。え?」
――ど、どういう状況?
そう思いつつ辺りをキョロキョロ見渡していると……。
『お前。今やみのまほうでねむらされるところだったんだぞ』
「え! って、やみのまほうって?」
聞いた事のないまほうを思わずたずねてしまうと、男の子はあきれた様に「はぁ」とため息をつく。
『おい、教えてやれ』
『えっとね。そもそもやみまほうって、本来はやみの種族しか使えないモノなんだけどね』
そんな男の子から説明する様に言われた女の子はやさしく私に教えてくれた。
その話を聞くと、どうやら元々はやみの種族しか使えないまほうの一つで本来は「ねたいのにねられない」という人を眠りやすくするていどの力しかないらしい。
『でも、やみのまほうは悪い感情に強くえいきょうを受けてね。その感情が強いと、思ってもいない力をはっきしてしまうの』
「え、じゃあ今のをもし受けていたら……」
『もしかしたらずっと眠ったままになっていたかもな』
その言葉に思わずゾッとしてしまった。
「で、でもどうして?」
――そんな事をされる覚えなんてないんだけど。
思わずそう聞くと、男の子はまた「はぁ」とため息をつく。
『長がお前に会おうとしたのが気に食わなかったんだろ』
「え、でも今……私はその長に会いに行こうとしていたんじゃ」
『だから、それがウソだったんだよ』
「……ウソ」
男の子が言った言葉にショックを受けていると……。
『ね、ねぇ』
『ん?』
『あ、あれ……』
女の子があわてた様子で私の後ろを差す。
『はは、マジか』
女の子の指をの先を見て何かに気が付いた男の子はなぜか笑う。
「?」
――なんだろう?
不思議に思って後ろを振り返ると……そこには――。
『こんにちは』
キレイな黄色いドレスを着た私と同じくらいの身長の女性が立っていた。
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