359. 海の魔獣
テフとザンツが連れてきてくれた海は、さっきの砂が広がったところじゃなくて、岩がゴツゴツしていて海の水がザバーンと打ち付けてくるところだった。こんなに波があるところで氷を張ってその上に乗って戦うなんて、やっぱり領主様は凄いと思った。
「海の中って色々いるんだね」
「お、分かるのか? もしかしてシュペアくんは索敵を使えるのか?」
「うん。ルシカとゲオーグも近くなら使えるよ」
「やっぱり騎士団に入るような奴は凄いんだな。ウィルだけかと思っていたが、他の奴もその辺の冒険者とは全然実力が違うんだな」
「そんなことないよ。中隊長は特別凄い。ミランもそうだけど。僕たちはまだ修行中だから。」
「まだ小さいのに偉いな」
そんなに海の遠くまで索敵を広げても、陸まで持って来れないから、遠くても500メートル以内までかな。できればもっと近く、50メートル以内にいるものを狙いたい。
「でかいのがいるな」
「うん。でかいっていうか長い?」
「確かに長い」
ブルーサーペントに似てる。ブルーサーペントって海の中を泳いだりするのかな? 僕たちも泳ごうと思えば海を泳げるから、ブルーサーペントも泳いだりできるのかも? そんなことを考えていると、体の一部が水面に上がってきた。
青ではなかった。白っぽく見えるけど銀みたいにも見える。強い日差しで銀色に見えるだけかもしれないけど、遠いからよく分からないな。
「あれはシーサーペントだ」
「運がいいというか悪いというか……」
「あれ、ギルドに討伐依頼出てたやつかな? さっきギルドを出る時にはまだ誰も受けてなかった」
「あれがシーサーペントか。大きさはルヴォンたちと倒したブルーサーペントと同じくらいか」
「あれ、どうやって倒すの? 攻撃したら逃げちゃうんじゃない?」
「海の魔獣は一撃目が重要だ。ロープが付いている槍を刺して逃がさないようにして戦うんだが、相手も逃げようとしたり攻撃するために海に引き摺り込もうとする」
面白い。そっか、海の深くに逃げられたり沖に行ったら追いかけられないもんね。僕が海に落ちる心配をされている理由がやっと分かった。僕が子どもだから、間違って落ちちゃうと思われてるのかと思ったけど違った。魔獣と戦う時に引き摺り込まれる可能性があるんだ。
確かにあんな大きな魔獣と力比べをしたら、僕なんてすぐに海に引き摺り込まれちゃうんだろう。
「あいつ、やってみるか?」
「やってみよう」
「そうだな」
最初の槍は慣れているテフが投げてくれることになった。
もし上手く当たらずに逃げられそうになったら、海に防御壁を作って逃げられないようにしよう。それでも逃げられそうになったら、氷の檻を作ってみてもいい。
「行くぞ!」
テフがロープが付いた槍を構えて、勢いをつけてズバッと投げた。ロープの端はザンツが岩場の奥の方に括り付けてくれてる。
槍が海に向かって飛んでいくのを見ていると、水面に出ているサーペントの背中に刺さった。
ちょっと浅そうだけど、なんとか刺さってる。
「もう1本いくぞ!」
テフは続け様に3本の槍を投げて、サーペントは逃げられなくなった。みんなでロープを引いて陸に近づけて、そこから攻撃を開始する。
みんなで槍でグサグサ突いていると、サーペントはだんだん動きが悪くなってとうとう動かなくなった。これを陸に引き上げて持って帰るのって大変だよね。
「ここなら使って大丈夫かな?」
「いいぞ。中隊長の知り合いだし問題ないだろう」
ゲオーグの了承を得ると、僕はサーペントに重力操作をかけてゲオーグに合図を送って陸に引きずり上げた。
「シュペアくんも重力操作が使えるのか。便利だよな」
テフには僕が使ったのだとすぐにバレてしまったけど、きっと領主様が使ってるのを見たことがあるんだろう。
刺さってたロープが付いた槍を外して、5人で抱えてギルドまで持って帰った。
これも美味しいのかな?
「今日の酒の肴はシーサーペントだな」
「シーサーペントって美味しいの?」
「美味いぞ。他にも色んな魚介が食べられる店を教えてあげるよ」
ギルドにはまだシーサーペント討伐依頼が残ってたから、それを剥がして一緒に持っていった。
「え!? 3人ともAランク? シュペアくんってもしかして子どもの姿の大人? なんか失礼なこと言ったかもしれん。なんかすまん」
「舐めていたわけじゃないんだが、その、すまない」
テフとサンツが焦ってたから面白かった。また僕は子どもの姿の大人に間違われたけど、それは強いって認めてくれてるってことだって教えてもらったから大丈夫。
「僕はまだ13歳だから子どもです。謝らなくていいよ。海の魔獣の倒し方教えてくれてありがとう」
「ああ、こんな倒し方があるとは知らなかった。勉強になった」
「うん。色んな国に行ったけど、こんな倒し方は初めてだな」
ルシカとゲオーグも楽しかったみたい。
その後は、ティーダの冒険者の人が行きつけの魚介の料理がたくさんあるお店にみんなで行って、「ウィルの知り合いの騎士たちだ」ってテフが紹介してくれたら、冒険者のみんなが寄ってきて色んな話を聞かせてくれた。
領主様に子どもが生まれた話や、フロイの子どももいる話をして、すごく盛り上がって楽しかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます