358. ティーダの冒険者
翌日、早めにギルドに向かうと、結構ギルドは賑わっていた。
昨日は全然人がいなかったから、あんまり依頼がないのかと思って心配してたけど、掲示板にはたくさん依頼が貼られてた。
Aランクの掲示板には相変わらず、昨日見た船の護衛の依頼しかないけど、Cランク、Dランクの掲示板には色々な討伐依頼があった。
Bランクの掲示板は討伐依頼は無くて、護衛しかなかったから、この辺りはCやDランクの魔獣が多いのかも。
「森の魔獣討伐は色々あるけど、海のはちょっとしかないね」
「そうだな。シーサーペントってやつも、期限が長いということはなかなか見つからないということなんだろう」
「俺らがCやDランクの依頼を取っていいのか分からないよな。余っているやつならいいけど、しばらく様子を見て、依頼が残らないようなら海に適当に出てみるか」
「そっか。高ランクになるとそういうことも考えなきゃいけないんだね。僕はDやCが長かったし、Bになったと思ったらBランクの依頼を受ける前にAになったから、考えたこともなかった」
「シュペアの昇級の早さは他に無いだろうな。最年少記録か?」
「エトワーレはいいが、他の国のギルドでは大人しくしておいた方がよさそうだな」
そっか。高ランクになればギルドが味方についてくれるとは聞いてるけど、どれほど効果があるのか分からない。
領主様とかに迷惑かけたくないし、緊急事態でない限りギルドで派手なことはしないでおこう。
「君たち見ない顔だな、いい依頼がなかったのか?」
掲示板から少し離れてみんなの様子を見ていると、知らない人が声をかけてきた。
揶揄ったりって雰囲気じゃないからゲオーグも警戒してないみたい。
ゲオーグみたいな大きくて筋肉がすごい人と、ルシカみたいなゲオーグよりちょっと細い人の二人組だった。
「そうだね。ティーダに来たのは初めてなんだけど、ここはCDランクが中心なのか?」
こういう時には人とすぐに仲良くなれるルシカが対応してくれる。僕はまだ相手がどんな人なのか分からないから黙っておこう。
「そうだな。子どもがいるとなると、薬草採集とか、ボア辺りか?」
「いや、できれば海の魔獣と戦ってみたかったんだけど、いいのがなくて迷っていたんだよね。依頼関係なく海に行くか、余った依頼を受けるか」
「海の魔獣か。クエストでなくていいなら狩場を教えてやろうか? だが、子どもを連れていくのは危ないかもしれんぞ」
「大丈夫だ。この子はこう見えて強い」
「そうか。大人2人が強そうだし大丈夫か」
「テフ、大丈夫か? 子どもが海に落ちたらどうすんだ」
海に落ちたらか……
泳いだことはない。荒野で水面に氷を張りながら歩くのは練習したけど、海は湖よりも波がたって不安定そうだったから上手くできるとは言いきれない。
水の中に入った時の対策も考えておくべきだった。水の中から風を使って飛び上がることはできるのかとか、流動をこんなにたくさんの水の中で部分的に作用させることができるのかとか。
まだまだ僕には課題が山積みだ。
「ロープで子どもと俺らか、仲間の誰かを繋いでおけばいいんじゃないか?」
「それなら大丈夫か」
僕はゲオーグとロープで繋いで、たとえ海に落ちても流されたりしないようにすることにした。
「俺はティフロートでこっちがザンツだ。俺のことはテフでいい」
「俺はルシカ、こっちがゲオーグとシュペアだ」
「いつもはどこで活動してるんだ?」
「ずっとレーマンにいたんだが、そこから王都に行ったり他国を回ったりしている」
「お、レーマンなら俺も行ったことがあるぞ。王都に行く用事があって、そこから足を伸ばしてレーマンでしばらく鍛えていた」
「もしかしたらギルドですれ違ったことくらいあるかもしれないな」
テフがレーマンに行ったのは4年前だったから、ゲオーグはまだレーマンに来ていなくて、すれ違っているとしたらルシカくらいだったから、当時のことを話して2人で盛り上がっていた。
「それにしてもティーダにいて王都に用事があるなんて珍しいな。その後はずっとティーダから出ていないのか?」
「いや、3年くらい前に知り合いの結婚のお披露目会でフェルゼン領に行った」
結婚のお披露目会ってそんなに貴族じゃなくてもやるのかな?
僕も3年前に領主様のお披露目会に行った。偶然?
「俺らも3年前ならフェルゼン領にいたな。ちょうどフェルゼン領の領主の結婚お披露目会があって、シュペアが行きたいというから行った」
「おい、それ本当か?」
急にテフがルシカに詰め寄って、なんだろうと思ったら、テフとザンツと他にも何人かで領主様の結婚お披露目会に行ったのだとか。こんなところで領主様の知り合いに会えるなんて凄い。
どういう知り合いなのかと思ったら、前にオークジェネラルを含むオークの群が出た時に領主様とティーダの冒険者たちで一緒に討伐したのだとか。
そうだったんだ。
一気にみんなの距離が近くなって、よく聞いてみると、ミランとも知り合いだということが分かった。
ミランが魚介を持って、テフやみんなも馬車に乗せて一緒にクンストまで行ったんだとか。
領主様はラオさんと旅をしたり、冒険者もやってるから知り合いが多いのは分かるけど、ミランの知り合いに会ったのは初めてだ。
テフは領主様が海でクラーケンやブラックサーモンを倒した話をしてくれた。
海に飛んでいって、氷を浮かべてそこで戦ってたとか、海の水を操作して海の上を歩いてクラーケンとかを運んだとか、そんな話をしてくれた。
やっぱり海は湖みたいに水面が静かじゃないから、流動で波を抑えて氷を張りながら歩くんだ。
それは僕もやったことがない。海には落ちないようにしよう。
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