14. 領主様結婚の知らせ
夏に向けて日差しが強くなってきた午後にその情報は舞い込んだ。
「速報のニュースだよー!」
「僕にも一枚ちょうだい。」
「はいよ。」
紙を受け取って読んでみると、領主様が結婚するらしい。
あの領主様と結婚するんだから、素敵な女性なんだろうな。
よく読んでみると、結婚式は王都の教会で行われるけど、お披露目会は領都で、しかも領民にも公開されると書いてある。
領主様に会えるんだ?
でも、凄くいっぱい人が来るんだろうな。
僕がいても、気付いてもらえないかもしれない。
でも、例え気付いてもらえなくても、領主様を見ることができるなら行きたい。
お披露目会は3ヶ月後だ。
領都、領都ってどこだろう?
遠いのかな?
「ルシカ~?あれ、いないや。
ゲオーグ~?も、いないのか。」
仕方ない。図書館に行こう。領地の地図ならあるはず。
うーん、地図で領都クンストの場所は分かった。
そして、今いる街の名前レーマンも分かる。
でも、どれくらいの時間で行けるのか、歩くのか、馬車で行けるのかも分からなかった。
僕が生まれた村まで3日だったから参考になるかと思ったけど、僕は生まれた村の名前を知らなかった。
そうだ。冒険者ギルドで聞けば分かるかも。冒険者は旅をする人が多いって言うし、護衛依頼とかあるって聞くし。
「ここレーマンから、領都クンストまでどれくらいかかるか知りたいんですが、分かりますか?」
「レーマンからクンストだと、馬車で2日くらいね。徒歩だと4-5日くらいかしら。季節や荷物の量、人数によっても違うから、あくまで目安ね。」
「分かりました。ありがとう。」
「いいえ、シュペアくんはいつも礼儀正しくて良い子ね。分からないことがあったら何でも聞きに来てね。」
「はい。いつもありがとう。」
そっか。5日くらいで行けるなら、僕1人でもいけると思う。
この街に来た時は3日歩いたけど大丈夫だった。今度はご飯やお金を持って行けば、きっと大丈夫だ。
でも、ちゃんと2人には言っておこう。
長い間2人と離れるのは初めてだな。
「おう、シュペアやっと帰ってきたか。飯行くぞ。」
「うん。」
「ゲオーグ、飯行くぞー」
「おう。」
最近よく行く、串に刺さった鳥を焼いたのが名物のお店に行った。
「あのね、2ヶ月ちょっと先なんだけどね、僕、領都に行きたいんだ。」
「領都?何しに行くんだ?」
「えっと、これ。」
僕は昼間に配っていたニュースの紙を広げて見せた。
「ん?領主様は結婚するのか。
あぁ、結婚のお披露目会は領民にも公開されるから、それに行きたいってこと?」
「うん。だから、その間、僕はいないから。」
「何でだ?俺らも一緒に行けばいいだろ。」
「だな。」
「え?ルシカもゲオーグもお披露目会に行きたいの?」
「俺は領都には行ったことがないから行ってみたいな。お披露目会はどちらでもいいが、芸術家が住んでいる寮があると聞いたことがあるから、ちょっと見てみたい。」
「へぇ~ゲオーグは芸術に興味があるのか。俺は領都には一度行ったことがあるけど、今の領主様に代替わりしてから、かなり変わったって聞いた。街並みとか見てみたいな~」
「そっか。ルシカは行ったことあるんだね。領都はお披露目会に行かなくても、見る場所はたくさんあるんだね。」
「あ~でも、あの領主様と結婚する人は見てみたいな。」
「だな。あの領主様は女性が苦手だと聞いたことがある。相手がどんな人か見てみたいな。政略結婚かもしれないが・・・。」
「さっきね、ギルドで聞いたら、馬車で2日、徒歩だと5日くらいって言われたの。
どうやって行くのがいいかな?」
「護衛依頼受けるか?」
「護衛依頼・・・。」
「それ僕も受けられるの?」
「Bランクのメンバーがいるパーティーだから、大丈夫だ。
ゲオーグ、厳しいか?」
「いや、ここで立ち止まったままでは前に進めないからな。受けることに賛成する。」
「まぁ大丈夫だろ。この領地はほとんど盗賊なんかは出ない。噂の段階でも領主様がすぐに対応するからな。
出るとしたら魔獣だろう。」
「そうか。少し安心した。でも一応、覚悟は決めておくよ。」
「護衛は覚悟がいるの?」
僕が尋ねると、2人は顔を見合わせて、少し思案しているようだったけど、何か分からないけど2人で頷いた。
「そうだな。シュペアは盗賊って分かるか?」
「悪いことする人でしょ?人の物を奪ったり。人を殺しちゃったりするんでしょ?」
「そうだ。
護衛というのは、商人や貴族が出かけるのを守る仕事だ。
商人は商品をたくさん持っているし、貴族は金をたくさん持っているから、盗賊に狙われるんだ。」
「うん。」
「盗賊が襲ってきたら、護衛はその商人や商品、貴族を守るために戦わなきゃいけない。
人と戦わなきゃいけないんだ。人を斬ることもあるし、盗賊を殺すこともある。」
「そうなんだ。」
「たくさん人を殺して、たくさん人の物を奪っている盗賊は、殺してもいいことになっている。
まぁでも、人だから、覚悟がいるんだ。」
「そうなんだ。僕、頑張るね。」
いつか領主様を守るって約束したから、僕は人だって相手できるようにならなきゃいけない。
だって、領主様は僕を守ってくれたから。
頑張らなきゃ。
「いや、シュペアはまだやらなくていい。人が相手だったら、俺たちが対応するから。」
「そうなの?僕がまだDランクだから?」
「まぁ、そうだな。Dランクは人を相手にする必要は無い。」
「分かった。でも2人が危なかったら僕も出て行くからね。」
ちゃんと僕も、覚悟を決めるよ。
強くなるために。2人を守るためにも。
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