13. ルシカとゲオーグ(ルシカ視点)

>>半年後


その後、シュペアはすぐにFランクに上がり、一月後にはEランクに上がった。

そしてウルフやボアを倒しまくり、その3ヶ月後にはDランクまで上げることができた。

ギルドでの講習も終わっているし、一年以内にはCランクに上がりそうな気がする。

ワイルドベアを一撃で倒せるくらいだから実力的にはもうBだろうが、Bランクに上がるには試験がある。

盗賊の討伐、人を相手にできるかどうかという試験だ。


俺は迷ってゲオーグと話し合った。




「シュペアは確かに強い。どんどん強くなっているし。実力だけならBでもおかしくはない。

だがしかし、Bランクに上がるには盗賊を殺さなきゃいけない。だから受けさせていいか迷っている。」

「確かに。魔獣や獣ならいいが、シュペアにはまだ人は早いと思う。まだ10歳だろ?」


「そうだよな。」

「俺でも、Bランク試験を受けるのは、しばらく迷っていたし。」


「そうだったのか。で、試験はどうだったんだ?」

「一応倒した。だからBランクになれた。でも、またやれと言われたら、できるか分からない。

仲間や自分が危なくなればやるが、そうでなければ、捕縛して治安部隊に引き渡す方法を選ぶかもしれない。」


「なるほどな。」

「ルシカは?大丈夫なのか?」


「俺はまぁ、大丈夫だな。

慣れたと言うと変だが、襲いかかってくる奴や、盗賊なんかは、人間だと思わないことにしている。

言葉を話す魔獣だと思うことにしてから、大丈夫になった。」

「そうか。俺もそれを参考にしよう。危機的な状況で迷いが出る方が怖い。」


「確かにな。

自分のせいで自分が犠牲になるならいいが、仲間が犠牲になることがあればゲオーグは耐えられないだろうな。」

「うん。だから、護衛はほとんど受けたことがないんだ。

こんなだから、Aランクを目指すのも諦めている。」



「それはダメだ。と言いたいところだが、俺もAランクを目指すのは諦めている。

だが、シュペアはいつかAランクにしてやりたい。」

「それは俺も思っている。ルシカはなぜAランクを諦めたんだ?」


「一言で言えば、実力不足だな。

ゲオーグはオークナイトと戦ったことはあるか?」

「いや、まだ無い。

確か、Aランク冒険者単独かBランクパーティーが倒せるレベル、だったか?」


「あぁ。そうだ。

俺は1人では全く歯が立たなかった。

それで、自分の限界を悟ってAを目指すのは諦めた。まぁ、そういうことだ。」

「そうか。でも、冒険者は続けているんだな。」


「ゲオーグ、お前意外と痛いところ突くな。確かにな。あのまま辞めようと思ったんだ。あの時は。パーティーも抜けたし。

でも俺には他にできることが無かった。

いや、言い訳か。

まだ諦められねぇのかもしれないな。」


「そうか。

・・・俺も、そうかもしれない。

Bランク昇格試験を受けて人をやってから、しばらくは眠れなくて、冒険者を辞めようと思っていた。

でも、俺も他にできることが無かった。

それは言い訳かもしれない。

もしかしたら、俺も諦めきれていないのかもしれない。」



「なんだ、俺たち同じか~。」

「そうみたいだな。」


なんだかんだでゲオーグとは気が合うんだよな。割と大人しいし、真面目だし、初心だけど。

嫌いじゃない。


やっぱりまだ早いよな。

せめて成人はしないとな。



「シュペアが成人したら、また考えるか。まだDだしな。」

「そうだな。まぁシュペアならすぐにCに上がるだろうが。」


「だよな。槍の腕も上がっているが、最近はよく図書館に通って魔術の勉強をしているしな。」

「シュペアって魔術師なのか?戦士なのか?どっちだ?」


「うーん、戦士なんじゃないか?槍が一番得意だと言っていた気がする。」

「そうなんだな。魔術師でもいけそうだけどな。」

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