12. 休日(ルシカ視点)2/2


ゲオーグと色々アホみたいな話などをしていると、いつの間にか時間が経っていて、昼の鐘が鳴った。


ゴーン、ゴーン


「シュペア出てくるかな?」

「どうだろうな。これだけ長い時間出てこないってことは、面白い本を見つけたんだろうな。」



「ねぇ、2人とも、ここで何してるの?」


「ん?今、シュペアの声が聞こえなかったか?」

「俺にも聞こえた。ような気がした。」


「じゃーん。」



「「うわっ!?」」



「驚いた?」


「いつからいたんだ?全然気付かなかった。図書館の方見てたはずなんだけど。」

「うんうん。いつからいた?」



「ふふふ、ゲオーグとルシカが僕が出てくるかな?って話してるところ聞いてた。」

「えっと、それは魔術だよな?」


「そう。図書館で魔術の本を読んでたんだ。認識阻害っていうんだって。

強い魔獣と出会った時に認識阻害をかけると、魔獣に気付かれずに逃げることができるって書いてあった。」

「そうか。覚えたての魔術か。それにしてはクオリティ高いな。」

「確かに。使い慣れてるくらい違和感なく、魔力の流れにも変なものは感じなかった。凄いな。」



「ねぇ、2人とも僕がお昼に出てくると思って来てくれたんでしょ?」

「あ、あぁ、まぁ。ゲオーグそうだよな?」

「あぁ。そう、だな。」


朝からずっと男2人でベンチに座って話していたなど言えない。



「じゃあお昼食べに行こうよ。」

「そうだな。」

「シュペアはケーキ好きか?」


「ケーキ?分かんない。」

「じゃあ俺が知ってるケーキのお店に行くか?」

「それいい!俺も食べたい。」


「じゃあそこにしようよ。

この街に来てから、食べたことないものがたくさんあるって知ったんだ。

しかも、どれも美味しいの。」


シュペアが嬉しそうだ。

認識阻害か。それを使って街を歩けば1人でも安全かもしれないな。



「これがケーキ?」

「これは違う。これはグラタンだ。熱いから気をつけて食べろよ。」

「うん。」


シュペアがグラタンをフゥフゥしているのを微笑ましく眺めていたが、ふと隣のゲオーグを見ると、シュペアと同じように一生懸命スプーンですくったグラタンをフゥフゥしていた。



ブハッ


それはダメだ。

こんな筋骨隆々の男がそんな可愛い食べ方は面白すぎる。

笑いが止まらない。

ククククク


「なんだ?どうした?何がおかしい?」

「いや、何でもない。」

「ルシカ、変なこと考えてたんじゃないの?」


「そんなことない。2人とも火傷しないように気をつけて食えよ。」



スゥー、ハー、スゥー、ハー

とりあえず落ち着け俺。ゲオーグのことを見てはいけない。


こいつ、見た目で損してるよな。

可愛くていい奴なのにな。

髭か?髪型か?


俺は2人を眺めながらサンドイッチを口に運んだ。




「これがケーキ?可愛い。綺麗。凄い!」


シュペアが嬉しそうだ。

そして、ゲオーグも、嬉しそうだ。目が輝いている。

確かにこうして見てみると18だな。


領主様が姉妹提携をしたというトルーキエの都市から入ってくるココアというのをスポンジに入れていて、チェリーのジャムみたいなのが挟まってクリームで覆われている。

キルシュトルテという名前のケーキらしい。



「ゲオーグ、食べるの勿体無いね。」

「そうだな。でも食べるともっと好きになるぞ。」


「甘い。美味しい。何これ凄い。」

「そうだろう?ケーキは美味しくて凄いんだ。」

「うんうん。」


「2口目も美味しくて凄い。」

「そうだろう?ここのケーキは2口目も美味しくて凄いんだ。

そして3口目も美味しくて凄い。」



「わぁ~本当だ。3口目も美味しくて凄い。」

「幸せな味だな。」

「うんうん。」




面白いなこいつら。

こいつら眺めてるだけで飽きないな。

女の子眺めてるより、若い男2人眺めてる方が良いなんて、俺はどこへ向かってるのかねぇ・・・

ますます婚期が遠退いていく気がする。



そんな2人を眺めながら、ケーキを口に運んだ。

んん?これ、確かに上手いな。


結局、ケーキは3人ともおかわりした。

こんな休日も悪くないな。


その後、シュペアは図書館に戻り、帰りに外にゲオーグか俺がいなければ、認識阻害をかけて街を歩くように言った。

ゲオーグと共にそれはそれはよく聞かせた。

シュペアなら大丈夫だろう。

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